神社検定(神道文化検定)とは? 想定される難易度や統計情報、勉強時間
この記事では、私の受験に向けた調査も兼ねて、神社検定(神道文化検定)について「難易度・統計情報」「想定される勉強時間」「そもそも神社検定とは?」についてまとめます。
今後、神社検定を受験予定の方、神社検定に興味がある方、歴史・文化の勉強に興味がある方の参考にしていただければ幸いです。
※記事の内容は2022年4月4日時点のものです。
神社検定の難易度・統計情報
受験者の年齢分布
神社検定の受験者の年齢分布については、公式の「受験者統計」から確認できます。
令和3年の受験者の年齢では、初級と参級については「40代>50代>30代」、弐級が「50代>40代>30代」、壱級が「50代>60代>40代」と、級が上がるにつれて受験者の年齢分布が大幅に高くなっています。
一方、10代未満~20代の受験者については少なめで、壱級に至っては287名中13名となっています。
神社検定の合格率
神社検定の合格率について、直近3回については以下のようになっていました
難易度 | 第7回(平成30年) | 第8回(令和元年) | 第9回(令和3年) |
壱級 | 39.9% | 43.0% | 52.3% |
弐級 | 41.0% | 40.4% | 67.7% |
参級 | 71.8% | 72.5% | 89.1% |
初級 | ー | ー | 98.0% |
初級については、第9回(令和3年)の98%という合格率から「初級はほぼ全員合格できる難易度」と言えます。
また、最高の難易度である壱級についても合格率が40~50%程度と、合格率だけで見ればあまり難しくはなさそうですが「受験者が弐級合格前提である事」「受験者数が少ない(ある程度の知識水準の人しか受けない)」ことを考えると、そこそこの難易度はありそうです(合格体験記を見ると、かなり難しかったという意見がけっこうあります)。
ちなみに、最新の公式の「検定実施要項」に「参級に限り70点以上の方が全体の70%未満の場合は、参級受検者の上位70%を合格認定します」となっていることから、70点未満でも合格の可能性はあります。
各級のテキストのボリューム
神社検定の特殊なところですが、出題範囲はだいたい毎年変更されます。
公式で番号が振られたテキストが11冊あり、その中から級に応じて毎年異なった範囲が試験範囲として指定されます。ただし、ある程度は級に応じて出題範囲が固定されており、例えば参級であれば、だいたい半数以上は『神社のいろは』からの出題、残りが毎回異なったテキストからの出題となっていました。
今回、「毎年概ね同じボリュームになる」という想定で、大雑把に各級のテキストの量を確認したところ、以下のようになっていました(対象は2022年の出題範囲)。
難易度 | ページ数(冊数) |
壱級 | 1495ページ(7冊) ※季刊誌『皇室』は129ページの想定で計算 ※90%は979ページ(3冊)から出題されます |
弐級 | 1016ページ(6冊) ※季刊誌『皇室』は129ページの想定で計算 ※90%は500ページ(2冊)から出題されます |
参級 | 約240ページ(2冊) ※『神話のおへそ『古語拾遺』編』の紙版の詳細なデータが無い為、ページ数は凡そで計算しています |
初級 | 200ページ(1冊) |
参級のテキスト『神話のおへそ『古語拾遺』編』については、第一章のみが出題範囲となりますので、正確には1.3冊程度です。
また、季刊誌『皇室』については、ページ数の割に出題が10%と少なめです。高得点を目指さないのであれば「他のテキストに集中する」「中古で安いものだけ買って、残りは過去問の出題パターンを参考にネットで調べる」などで対策しても良いでしょう。
公式テキストの解説DVDもありますが、テキストで学習すれば必要ではありません。予算に十分な余裕があって、尚且つ流し見での学習をどうしてもしたいという人以外は、書籍のテキストだけで十分でしょう。
神社検定の勉強時間
ここからは、ネット上の情報から想定される神社検定合格までの勉強時間をまとめます。
神社検定参級の勉強時間
日頃から神社巡りをしており、「古事記・日本書紀」の概要を把握していれば、テキスト一読で合格点レベル
こちらのブログの方は、「4年間地元の神社巡りをしており、古事記・日本書紀の全体像を知っている」というレベルで、「3級の過去問はテキストを一読して合格点を出せた」とのことです。
そういった意味では、難易度は「古事記・日本書紀」の概要を把握していて、神社の参拝の作法や建物についての知識がある程度のレベルがあれば、十分合格可能かと思います。
もちろん、試験のクセもありますので、最低限テキストを一読するなどの対策はしておいた方が良いでしょう。できれば過去問を一度解いて、自分のレベルを把握しておきましょう。
知識ゼロなら、15~45時間程度?
知識ゼロに近い人の場合、どのくらいの勉強時間が必要か色々と調べてみたのですが、残念ながら具体的な勉強時間は情報が見つかりませんでした。
ただ「1カ月くらいは期間を取った方がいいと思います」という記事は多く見つかりました。
1カ月で1日平均何時間くらい勉強するかはわかりませんが、「受験者の年齢層が結構高めであること」「そもそも、趣味の資格であり、合格のために必死になるものではない」と考えると、1日平均で30分~1時間30分程度の勉強時間ではないかと思います。そこから推定すると、15~45時間の勉強で合格できる可能性が高いことは確かです。
ただ、人によって前提となる知識も大きく違いますし、何より短めに見積もると、不測の事態に対応できなくなりますので、「まずは45時間程度で考えて、過去問の手ごたえに合わせて勉強時間を変化させる」といった具合に勉強を進めると、安定した合格を目指せると思います。
神社検定弐級の勉強時間
17時間30分程度の勉強で、70点を少し上回る程度
先ほども一度紹介したこちらのブログの方は「3級の過去問で合格点を取ったレベルから、勉強期間は約2ヶ月、毎日15~20分休まず継続」で、70点を少し上回る程度とのことです。ざっくり60日×17.5分とすると、17時間30分勉強した計算になります。
また、17時間30分の勉強時間では、試験範囲のテキストを把握するだけでも時間がやや足りないとの事。大雑把に考えて「3級合格から20時間程度の勉強では、少し合格が危ないライン」と考えて良いでしょう。
「神社ファン」+「約122.5~167.5時間以上勉強」で、90点以上の例も
神社ファンの方のこちらのブログでは、3月頃から6月18日の試験日まで、平日毎日2時間、試験1週間前は平日3~4時間、休日5時間程度の勉強で93点の高得点が取れています。
仮に3月1日からで計算すると、約15.5週。14.5週までを週10時間として145時間、最後の1週を3.5×5+5時間とすると、22.5時間、合計167.5時間の勉強となります。また、3月31日からで計算すると、約11週。10週までで100時間、最後の1週で22.5時間、合計122.5時間となります。
この計算結果だと、高得点を目指す場合は、かなりの勉強量が必要という可能性があります。
ただ、通勤時間中心に学習していたとのことなので、「机について勉強できれば、もっと集中できた」「そもそも時間の計算が多めの可能性がある(乗り換えなどで)」と考えると、「自宅での学習が中心の人」の場合、もっと短時間で高得点を目指せるのではないかと思います。
私が受験した時は、43時間34分程度の勉強で、92点
2023年6月25日、神社検定2級を受験し、無事合格しました。
点数は、予想外の高得点で92点。勉強時間は43時間34分となりました
ただし、これは運がかなり良く、実力的にはせいぜい85点ほどだと思います。
運が良いと言える要因は、以下の通りです。
- 「季刊誌皇室」からの出題が約10%という設定だが、実際には6問(6%)しか出題されなかった
- 「季刊誌皇室」の範囲で、自信を持って正解できたのは1問のみだが、実際には6問中5問正解となった
- 過去の出題傾向と全く同じ内容で出題された(しかも、過去問流用が想定より多かった気がする)
当初の予定では、季刊誌皇室からの出題だけで、10問中7問は点を落とす計算で勉強していたので、この部分だけで6点の失点を防ぐことができました。
また、過去問で問われていないテキストの範囲からの出題も想定していたのですが、最大の出題数(約60%)を誇るテキスト「神社のいろは続」からの出題で、私が利用した過去問(第1~8回)で見た記憶の無い問題は、大神神社に関する数問のみで、後は過去問演習の知識だけで解けてしまいました。
同様に、出題数約30%の「神社のおへそ 古語拾遺」についても、過去の傾向通り第1章からの出題が中心で、その他の問題も過去問で見た範囲ばかりという状況。第一章以外の範囲で、過去問でも見覚えが無かったのは数問のみだったので、結果的にほぼ点数を落とすことはありませんでした。
こういった状況を考えると、「20時間ほど過去問演習し、10時間で出題数30%ほどのテキストの重要範囲と、季刊誌皇室で出そうな内容のネットリサーチ」を行えば、運次第で80~90点前後を狙える可能性は高いかと思います。
ただし、これはあくまで「過去問の出題傾向と傾向と同様であった場合の想定勉強時間」になります。過去問で良く問われる内容は、テキスト全体から見ると極一部であるため、もしも出題傾向が変わってしまうと、不合格の確率もあるため、最低でもテキストは一読しておくようにした方が無難です。
神社検定壱級の勉強時間
壱級合格までの勉強時間を推定できる情報は、見つかりませんでした。
ただ、公式の「受験者の声」を見てみると、元から知識があった人でも難易度が高めであることがうかがえます。
公式だけなら、まあ忖度してるのかなあとも思いましたが、数少ない公式以外の合格体験記でも「壱級は超難しかった」とのこと。しかし、明確な勉強時間を計算できる情報は見つかりませんでした。
強いて言えば「合格率が高めであること」を考慮しつつ、「難関試験に区分できる程度の難易度」と考えると「弐級と合わせて200時間くらい必要なのでは?」と推測することはできます。
そもそも「神社検定」とは
神社検定とは「神社が好きな方」「日本文化の理解を深めたい方」向けの検定試験です。
ちなみに、公式ページの記載から試験の名称は「神社検定」または「神道文化検定」で通じると思いますが、ネットの情報では通常「神社検定」の名称が使用されています。
主催は「公益財団法人日本文化興隆財団」。後援は文部科学省の他、旅行や観光の協会・学会が多数あります。
神社検定の試験日
詳細は変更の可能性がありますので、受験の際は公式サイトの確認をお願いします。
試験日は年に1回、2022年度については6月26日(日) に試験実施予定です。
神社検定の受験費用
受験料は以下の通りです。
実施級 | 受検料 |
---|---|
壱級(1級) | 7,200円 |
弐級(2級) | 6,100円 |
参級(3級) | 5,000円 |
初級 | 3,000円 |
また、以下の割引制度があります(割引制度の併用はできません)。
- 初級・参級併願割引:1,000円引き
- 参級・弐級併願割引:1,100円引き
- 早期割引:300円引き
- リピーター割引(合格者対象):300円引き
- 再挑戦割引(不合格者対象):700円引き
神社検定の受験資格
壱級は弐級の合格が必要です。弐級以下については、受験資格なしです。
神社検定の試験の方式・出題方式
全ての級で、試験はオンラインでの開催となっています。
また、出題方式は初級のみ3択問題、そのほかは4択問題となります。
神社検定の問題数・試験時間・合格基準
問題数、試験時間、合格基準は以下の通りです(合格基準は調整されることがあります)。
受験級 | 問題数 | 試験時間 | 合格基準 |
壱級(1級) | 100問 | 90分 | 70問以上の正解 |
弐級(2級) | 100問 | 90分 | 70問以上の正解 |
参級(3級) | 100問 | 70分 | 70問以上の正解 ※参級に限り70点以上の方が全体の70%未満の場合は、参級受検者の上位70%を合格認定 |
初級 | 50問 | 45分 | 35問以上の正解 |
神社検定の出題範囲と比率(毎年指定されるテキストが変わります)
神社検定の問題は、全て指定されたテキストから出題されます。
ただし、出題範囲が毎年ある程度変更されるため、「去年勉強した知識が、全て来年も使える」というわけではありません。
例えば、参級であれば『神社のいろは』から半数以上出題される傾向がありますが、残りの問題は毎年異なったテキストが指定されています。壱級にもなると、去年と被る範囲が10%未満という事もありますので今年ギリギリで不合格だったからといって、来年簡単に合格できるわけではありません。
2022年の出題内容については、以下の通りです。
受験級 | 出題範囲と比率 |
壱級(1級) | 『神社のいろは要語集 祭祀編』から約50%出題 『神話のおへそ『古語拾遺』編』から約30%出題 『神話のおへそ』から約10%出題 季刊誌『皇室』91号~94号から約10%出題 |
弐級(2級) | 『神社のいろは 続』から約60%出題 『神話のおへそ『日本書紀』編』から約30%出題 季刊誌『皇室』91号~94号から約10%出題 |
参級(3級) | 『神社のいろは』から約70%出題 『神話のおへそ『古語拾遺』編』から約30%出題 ※「第一章「初級編」『古語拾遺』を読む」からの出題 |
初級 | 『マンガ版 神社のいろは』(令和3年12月15日発売)から100%出題 |
ちなみに、参考書はkindle unlimitedで読み放題のものや、kindleで割引されているものがあります。過去問などの問題集は紙の方がオススメですが、電子書籍に抵抗が無い人は、kindleで学習すると、費用を安くおさえることができます。
また、多くの受験者の体験記にも記載されていますが、季刊誌『皇室』は出題数が少ない為、無理して読まなくても合格を目指せます。とくに弐級受験の場合は「お金にも時間にも余裕がある場合は読んでみる」くらいの認識でも十分だと思います。
神社検定のメリット
「神社巡りが楽しくなる」「日本文化に関する蘊蓄が言える」「外国に行って、日本文化を喋れる」……などのメリットもありますが、もっと具体的な「合格者特典」が用意されています。
まず、壱級合格者には、季刊誌『皇室』が2冊分無料で届きます。壱級合格レベルまでいっているなら、あえて貰う必要もない(あるいは既に普段から買ってる?)かもしれませんが「趣味で毎年腕試しをしたい」という人であれば、2冊分は無料でゲットできます(2回目の合格からも貰えるのかはわかりませんが)。
また神宮神嘗祭に先立ち、伊勢で毎年10月15日に齋行される「初穂曳」に合格者限定で100名参加できます。また、壱級合格者(先着20名)は「神嘗祭由貴夕大御饌」(外宮)の奉拝も出来ます。ちなみに、初穂曳の様子については、公式で参加体験レポートがまとめられています。
また、この他にも神社めぐりツアーなど、各種合格者優待企画の案内を受けることができます。
神社検定(関連)の講座
ちなみに「神社検定教養講座」という名称で、色々なイベントが用意されています。
直接的な神社検定のテキストに関する講座から、過去には稲作体験、鶴岡八幡宮を学ぶツアー、お伊勢参りなどが実施されています。
神社検定の合格体験記
2022年6月26日、実際に神社検定3級を受験し、合格しました。
その際の勉強内容については、上の記事にまとめてあります。興味がある方の参考にしていただければ幸いです。
その他の日本文化の検定試験は?
今回は、神社検定について、想定の難易度・勉強時間・試験の概要をまとめました。
私は昨年の退職から、趣味で文化や歴史を勉強するようになり、神社検定についても、今後地道に勉強を進めていきたいと思っています。
私は神社検定の他に「世界遺産検定」「歴史能力検定」なども学習していますが、日本の文化と言えば「仏教」関係の検定試験も複数あります。仏教関係の試験については、以下の記事にまとめてありますので、興味がある方は参考にしていただければ幸いです。