「高山陣屋」の観光情報と、実際に観光した感想
この記事では、高山にある史跡「高山陣屋」の観光情報と、実際に観光した感想をまとめます。
「史跡巡りに興味がある方」「飛騨高山方面を観光予定の方」などの参考になれば嬉しいです。
「高山陣屋」の観光情報
- 営業時間:8:45~17:00(11~3月は16:45まで)
- 休館日:年末年始の他、臨時休館あり
- 見学料金:大人440円(30名以上の団体は390円)、高校生以下は無料。
- 所要時間:公式で目安は30分。私は気になった展示だけじっくり見つつ一周して45分でした。
- 備考:無料ガイドツアーあり(通常コースで50~60分。概要説明で10~20分)。高山陣屋に関するアニメ鑑賞や、榑へぎ実演見学は電話などで問い合わせが必要です。
※詳細は変更の可能性もあるため、訪問前には公式HPなどの情報をご確認ください
「高山陣屋」とは?
高山陣屋とは、簡単に言えば「江戸幕府が飛騨国を直轄領した際に、飛騨支配のための執務を行った建物」です。
江戸前期の頃は、飛騨国は高山藩が統治していましたが、1692年に藩主の金森氏が国替となり、飛騨国は幕府の直轄地となりました。飛騨が幕府の直轄領となった理由については、明確なことはわかっていませんが、飛騨国の森林資源が豊富であったことから、幕府の財政基盤の一つとして直轄領に選ばれたのではないかという説があります。
当初は幕府の代官所(支配拠点)は金森家家老の屋敷でしたが、後に現在の高山陣屋である金森家の下屋敷が代官所となりました。また、1695年には高山城三之丸にあった米蔵二棟が高山陣屋へ移築され、「高山御蔵」となりました。米蔵の内一棟は江戸時代から現存する米蔵の中でも最大規模で、現在は内部で歴史や文化に関する貴重な品々が展示されています。
1692~1868年までの間で、高山陣屋では25代の代官・郡代が執務を行いました。高山に在住して直接執務を行ったのは、7代長谷川代官からになります。また、12代大原代官の時に、検地の実施による石高増加の功績により、1777年以降は代官所から郡代役所へと昇格しました。
明治維新後は筑摩県の高山出張所庁舎となり、1929年には国の史跡となっていましたが、1969年に県事務所が移転するまで、その後も公共機関の事務所として利用されていました。
現存する唯一の陣屋であることから貴重な文化財として保存され、1996年に1830年の絵図を基にして蔵番長屋、郡代役宅、奥座敷などが、ほぼ江戸時代の状態にまで復元され、現在に至ります。2016年には日本遺産の「飛騨匠の技・こころ」の構成遺産にも登録されました(飛騨の里で実演を見られる「一位一刀彫」や、高山祭屋台、高山城跡なども一緒に登録されています)。
ちなみに、YouTubeに2分30秒ほどの公式解説動画がありますので、観光で訪れる前に一度見ておいてもいいでしょう。
「高山陣屋」へのアクセス
住所は「岐阜県高山市八軒町1-5」です。
公共交通機関を利用する場合、「高山駅」や「高山濃飛バスセンター」徒歩で僅か10分ほどです。
また、自動車で向かう場合、専用の駐車場がないため、近隣の有料駐車場などを利用することになります(詳細はこちら)。
「高山陣屋」を実際に観光してみた(所要時間45分ほど)
この日は朝から高山にある「飛騨の里」を見学した後、11:20頃に「高山陣屋」に到着しました。
高山陣屋の公式の見学時間の目安はおおむね30分となっています。無理なく観光できるよう、30分以上は時間を確保して訪れることをおすすめします。
高山陣屋の外
こちらは、高山陣屋の門の前です。門を抜けると直ぐに受付があります。
陣屋の門の外では、「陣屋前朝市」が開かれています。野菜や果物を始め、飛騨高山の特産品が売られていますので、早目に到着した方はゆっくりと買い物をしてもいいでしょう(上の写真は退館後に撮影したため、既に朝市が撤収したあとです)。
門を抜けると、すぐに高山陣屋の建物が見えてきます。靴は袋に入れて、建物にあがり見学していくことになります。
こちらは、高山陣屋内にあった見学順路図。建物自体はかなり広いですが、廊下は往復で人が通るため、あまり広くはありません。混雑時は通路をふさがないよう注意しましょう。
御用場
こちらは「御用場」と呼ばれる役人の仕事場です。
高山藩を治めていた金森氏が国替になった後も、旧金森氏家臣が「地役人」として代官に登用され、ここで仕事をしていました。多くは、山林管理や口留番所の仕事をしていたそうです。
ちなみに、幕府から派遣されてきた代官直属の役人が働いていた部屋は「御役所」と呼ばれ、行政の中心はそちらでした(畳の縁の色が違います)。
真向兎の釘隠し
こちらは建物内にある「真向兎の釘隠し」。釘の頭を隠すための飾りとして利用されました。兎が真正面を剥いていることから「真向兎」と呼ばれています。
兎は子どもをたくさん産むことから、縁起のよいデザインであり、また火災から建物を守ってくれる魔除けの意味合いもあるそうです。ただし、高山陣屋のデザインとして採用された理由についてははっきりとしていません。
「真向兎」のデザインの使用例としては、茶人や作庭家として有名な小堀遠州が、1625年に建てた京都の「伏見奉行屋敷」の襖の引手に、既にこのデザインを採用していたことが確認されています。類似の例は、全国各地にみられ、遠州好みのデザインとして江戸時代に流行したそうです。
ちなみに、「真向兎の釘隠し」が見られる場所については、建物内で実際に探した方が楽しいと思うので、ここには記載しません(案内看板の近くにあるので、簡単に見つけられると思います)。
勝手
こちらは勝手。お茶を入れるために利用された台所です。
こちらの他にも、大きな台所や湯殿もあり、ただの仕事場ではなく、生活スペースとしても活用できるようになっていたこともうかがえます(陣屋内には、代官が住んでいた3階建ての役宅もあります)。
女中部屋
こちらは、代官・郡代の身の回りの世話をする女中が生活していた「女中部屋」です。ここに住む女中の地位は、比較的高かったそうです(言われてみると、以前見た女中用の部屋はもっと狭く、プライベートも無かった気がする)。
嵐山の間
「嵐山の間」は江戸から派遣された代官・郡代とその家族が住んでいた役宅にある部屋です。「嵐山の間」は別称で、本来は「御居間」と呼ばれています。
平成27年4月22~23日には、羽生名人と行方八段による名人戦大局場として利用されました。
部屋の奥には茶室も設けられていました。
大広間
「大広間」は重要な年中行事や儀式・会議・講釈などが行われた書院造りの部屋です。広さは49畳。高山陣屋内でも最も広い部屋になります。縁側から見える庭の景色も美しいです。
ちなみに、高山陣屋内の庭の景色はこんな感じ。紅葉のシーズンはお庭目当てで訪れても良さそうです(。
使者之間
ここは幕府から派遣された巡見使などが控室として利用したとされる「使者之間」です。内命を伝えるときなどにも利用されました。
広さは15畳ほどと狭くはありませんが、大きな駕籠(寺荘駕籠。宗猷寺から借りて展示されている)が圧倒的な存在感をだしていました。
ちなみに、この駕籠を所有している「宗猷寺」は、幕臣として有名な山岡鉄舟が禅学を修めた寺でもあります(高山陣屋の御蔵には、山岡鉄舟に関する展示もありました)。
御白洲
こちらは有名な「御白洲」。取調べを行ったり、判決を言い渡したりする場所です。ちなみに「白洲」とは、上の写真の通り、砂利が敷かれて白く見えることから名づけられました。
ちなみに、吟味を受ける場所は、一般庶民は白洲、由緒ある浪人・御用達町人は板縁、武士・僧侶・神官は縁側だったそうです。
壁には有名な取調べ……というか拷問の絵図がありました。歴史のテストで問われた覚えはありませんが、この左側の図は超有名な気がします(何かの漫画の影響か?)。
御蔵
「御蔵」は、元は高山城三之丸にあった米蔵を移築したものです。現存する一棟については、江戸時代から現存する米蔵としては国内最大級です。
現在は、内部は博物館のような状態で開放されており、高山陣屋と一緒に見学できるようになっています。
ちなみに、建物や展示物については写真撮影可能ですが、一部は撮影禁止マークがついています。
こちらは、建物内にあった古い落書きのようなもの。解説はありませんでしたので、内容はわかりませんでした(大工が建築用に書いたのかも?)。保護されているので、歴史的な価値あるものだと思います。
年貢米俵の展示もありました。その量に圧倒されます。
こちらは刀「濃州 兼広」です。御蔵内には、代官の事務的な道具以外にも、様々なものが展示されています。
もちろん、役場としての歴史的な価値ある資料もあります。写真の手前の文書は、飛騨国代官人名録です。
御蔵の外にも展示があります。こちらはネズコの木。腐りにくく、板に割りやすいことから、高山陣屋の屋根の素材でもある「榑板」に利用されました。
榑板を作る「榑へぎ」職人は今となっては人数が少なくなりましたが、高山陣屋内では今でも多くの榑板を見ることができ、体験イベントとして「榑へぎの実演見学」も行われています。
こちらは杮葺の屋根の模型です。飛騨は雪が多く、江戸時代の瓦は雪で損耗しやすいという弱点がありました。一方、飛騨では木材が豊富だったため、高山陣屋の屋根は、杮葺や石置長榑葺板葺きなどの板葺き屋根になっています。
「高山陣屋」周辺の観光スポット
高山陣屋周辺には多くの観光スポットがあります。
無料の博物館であれば「高山市政記念館」や「飛騨高山まちの博物館」なども近く、とくに「飛騨高山まちの博物館」は無料とは思えないほどのボリュームでした。
また、これらのある地域自体も古い町並みが残る観光スポットで、飛騨牛などを使ったご当地グルメも充実しており、景色を見ながら食べ歩きするだけでも十分楽しめるでしょう。
その他、「飛騨高山レトロミュージアム」や「高山昭和館」などのレトロ系の博物館や、「飛騨国分寺」や「高山別院 照蓮寺」などの歴史ある神社仏閣もあります。じっくり時間を取れるのであれば、高山駅周辺だけで数日観光してもいいでしょう。
また、少し足を延ばせば、高山駅からバスで10分ほどの距離に「飛騨の里」という古民家の集落のような野外博物館もあります。こちらはじっくり見学すれば3時間以上は楽しむことができ、古民家の建築や農山村の文化に興味を持った方であればおすすめの施設です。