【検証】スマホが熱い! 冷却パッドはどのくらい温度を下げるのか?
先日無償保証によって、修理して戻ってきた「ZTE Blade V8」。
ss://shikaku-benkyou.com/sumaho-syuuri-zte-blade-v8/
サブ基盤が壊れていたのですが、考えられる最大の原因は「本体が発熱していた」こと。
この機種は、商品レビューでも度々書かれていますが、かなり発熱しやすいです。結果、その熱がサブ基盤へ悪影響を与えたと考えられます。
購入から8カ月で故障したことを考えると「普通に利用していても、来年にはまた壊れるのでは?」と思いました。
そこで「スマホの温度を下げて、寿命を延ばす方法はないか?」と考え、試しに冷却パッドを購入してみましたので、その力を検証してみたいと思います。
結論。「冷却パッド」と「スマホの温度」について
- 冷却パッドを付けても、高負荷をかけたスマホの温度は同じ程度に上がる
- 恐らく冷却パッドの効果は気休め程度。壊れやすいレベルの温度まで上がってしまうと、効果がない
- スマホを急速に冷却してはいけない
- 現実的な温度の下げ方は「スマホを使わない」
- 多少値段が上がっても、発熱しやすいスマホは避けた方がコスパが良い?
それでは、詳細を解説していきたい思います。
検証に使ったもの
スマートフォン
まず、検証対象のスマートフォン。もちろん、修理して帰ってきた「ZTE Blade V8」です。
基本的なスペックはこんな感じ。
- CPU:Snapdragon 435 MSM8940
- メモリ:ROM 32GB RAM 3GB
- バッテリー容量:2730 mAh
- 最大待受時間:約560時間
- 画面サイズ:5.2 インチ
「最大待受時間」が約560時間となっていますが、修理1カ月前には節電できる状態で放置していても、仕事の帰りにはバッテリー切れしているありさまでした。
「価格.com」や「Amazon」のレビューを見る限り、「発熱」に関するレビューが散見される、ミドルスペック程度のスマホとなります。
アプリ
CPU負荷試験ツール(CpuRun)
CPUに一定の負荷をかけるためのアプリです。
このアプリを利用して、一定の高負荷をかけた上で、冷却パッドによる温度の変化を検証したいと思います。
CPU Cooler Master
こちらは「スマホ本体の温度が何度になっているか?」を測定するためのアプリです(2020年7月31日時点で、公開されなくなっていました)。
テスト開始前の温度と、テスト開始後の温度を測定するために利用します。
冷却パッド
ノートパソコン用の冷却パッドです。とはいえ、小さいのでゲーム機などにも貼り付けできます(商品の使用例でもゲーム機やACアダプタが登場します)。
レビューにもスマートフォン用での使用が多く、評価はAmazonで星3.5。お試しに使うには良心的なお値段です。
検証の条件
条件1:室温を一定に保つ
まずは室温について。エアコンを利用して一定に保ちます(一般家庭でエアコンを利用しているだけなので、若干の誤差はありますが…)。
室温は約29度。あまり低いと発熱しないかも? と思ったので、高めの設定温度です。
実験中全てモニタリングしていたわけではありませんが、幅を広く見積もっても28~30度の間でコントロールできていたと思います。
また、空気の流れによって温度が変化する可能性も考慮して、扇風機などの風はあたらないようにしておきました。
条件2:発熱前には十分に放熱させておく
直前の温度の影響を受けると検証の意味がなくなってしまうので、検証直前には十分放熱させておくことにしました。
とはいえ、条件3で「温度が上がらなくなるまで放置する」ので、直前の温度の影響は検証結果に影響を与えないものだとは思います。
条件3:温度が上がらなくなるまで放置する
今回の検証では「冷却パッドによってどの程度温度が上がらなくなるか?」を検証したい思ったので、実験ではスマホを十分に高温にして、温度が安定するまで放置します。
温度の確認方法としては「CPU Cooler Master」を利用して、ある程度時間が経過するごとに温度の上昇具合をチェックし、変化がほぼなくなったところで終了とします。
条件4:スマホの背面を机に接触させ、画面に時計(兼温度計)を乗せる
スマホ周囲の環境も温度に影響します。
現実的には、スマホは手で持っているか、ポケットなどに入っている状態が多いと思ったので「スマホ周囲に物が触れている状態」を再現し、温度の変化具合を確認しました。
実際の温度測定中の状態は下の画像のような感じです。
例外として、「CPU Cooler Master」を利用して温度をチェックしている時間だけは、この環境ではなくなります(要するに、手で持ってスマホをチェックしている環境となります)。
条件5:CPU負荷試験ツールの設定について
負荷のレベルは以下の通りです。後で試してわかりましたが、あまり負荷を高くするとスマホがフリーズするのでご注意ください。
- ダミータスク:20
- ダミータスク起床間隔:50ms
- CPU消費時間/スレッド回:20ms
- 4タスク毎の開始delay:0ms
条件6:冷却パッドを張る位置
「最も効率的に冷やすことができそう!」ということで、できれば構造上最も発熱する部分を把握したうえで重点的に張ってみたかったのですが、位置がイマイチ特定できませんでした。
実際の利用時に触れた感じでは、本体上部が最も高温になりやすかったので、とりあえず、8枚分を上部に集中的に張り付けて検証しました。
検証の結果
実際に検証してみた結果をまとめます。
まず、初期状態。午前8時3分時点では、おおむね33度台で推移していました。
この時点で何もやっていないはずなのにCPU使用率が75%なのが気になりますが(唐突に上下したりするので、あまりあてにならない数値かも)、ここを温度の底辺として検証を開始。
「条件5」でCPU負荷試験ツールを稼働させ、30分程度が経過するごとに温度をチェックしてみました。
そして、安定したのを確認できた頃の温度がこちら。
10時52分時点。CPUの負荷が99%。温度は48度台で推移している状態です。
念のため3時間近く稼働させてしまいましたが、実際には30分経過時点から、ほとんど温度の変化がみられなかった状態です。
そして「CPU負荷試験ツール」をOFFにして放置。いったん冷却します。
11時11分時点。なんと、温度は31度台。最初の検証前より温度が下がりました。しかもCPU使用率も下がっている。何が停止したのかまで検証できなかったのが残念ですが、「条件3」から、事前の温度は恐らく検証結果に影響を与えないため、調査を続行しました。
この時点で「条件6」の図の通り、冷却パッドをスマホ本体に張り付けて、検証開始。
再度「条件5」でCPU負荷試験ツールを稼働させてみたところ…。
なんと、冷却パッドを張って検証したにもかかわらず、わずか20分程度で温度が装着前を超えてしまいました!
完全に想定外に結果の上、少なくとも今回の条件でスマホを使い続ける限り、冷却パッドではまったくスマホの寿命を延ばせないという結論に。
冷却パッドでは、温度を効率的に下げることはできるかもしれません。しかし、それを上回る速度で温度が上がれば、効果はほぼないと考えた方が良さそうです。
大手キャリアによるスマホの温度に関する見解
調査してみると、大手キャリアによるスマホの温度に関する見解をまとめた、わかりやすい記事がみつかりました。
どうやら、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの見解では「冷却シートは自社で扱っているものではないため、推奨しない」という意見のようです。
あくまで「サードパーティ製品であるから非推奨」という意見ではありますが、もしも冷却シートに大きな効果が期待できるなら、大手キャリアも独自に販売しているのでは? と思います。
そう考えると「冷却シートの効果は、ないよりましかもしれないが、気休め程度」と思った方がいいのではないかと思います。
スマホが熱い場合の、適切な温度の下げ方について
ちなみに、スマホの温度が高い場合の適切な温度の下げ方については、以下の通りです。
- 涼しい場所で保管する
- 使用していない機能をきっておく(できれば電源ごと切っておく)
- そもそも熱い環境(直射日光があたる場所など)で利用しない
- 熱がこもるような使い方をしない(布で覆うなど)
- 冷凍タイプの保冷材は利用しない(結露や急激な温度の低下がパフォーマンス低下や故障の原因となる)
つまり、「通常(室内)の使用でスマホが熱くなる」といった場合は、実質「冷めるまで使わない」以外の対処方法がないことがわかります。
結局「高温になる環境」を避けるのは当たり前のこととすると、現実的な対策は、以下のようになるかと思います。
- 冷却パッドは、気休め程度と考える
→高温になりやすい環境・高負荷では、冷却効果は期待できない - 通常の使用で高温になるなら、アプリの使用をやめるか電源を切るしかない
- そもそも発熱しやすい機種は避ける
私の利用している「ZTE Blade V8」については、そもそも発熱しやすいスマホですので、どんなに気を付けても「高温になったら使わない」以外の対処方法がないという結論です。
しかし、スマホを使わず持ち歩いても意味がありません。そう考えると、多少料金が高くなっても、発熱しにくい機種を購入した方がいいでしょう。
