【世界遺産】「聖オーガスティン修道院」の観光情報と、実際に観光した感想
この記事では世界遺産の構成資産の一つである「聖オーガスティン修道院」の観光情報と、中学生以下の英語力で観光した際の内容をまとめます。
「カンタベリー方面へ観光予定の方」「聖オーガスティン修道院への観光を考えている方」などの参考になれば嬉しいです。
聖オーガスティン修道院の観光情報
- 営業時間:10:00~17:00(10月30日~3月28日頃までは16:00まで)詳細はこちら。
- 定休日:12月24~12月26日は休日
- 見学料金:大人10ポンド、5~17歳は5.9ポンド、ファミリー(大人2名、子供3名まで)25.9ポンド。詳細はこちら。
- ガイド:英語オーディオガイドが無料。小さい博物館から修道院に出る扉左側に置かれており、返却は扉右側の箱に入れる形式でした。
- 所要時間:主要な看板だけ見て見学するなら60分ほど。私はたまに細かい看板も見て80分。博物館の展示も含め、全て詳細に読んでも120~150分ほどかと思います。
- 写真撮影:可
- 注意点:日本語のガイドが無い為、英語が苦手ならスマホの翻訳が必要。
※詳細は変更の可能性もあるため、訪問前には公式HPなどの情報をご確認ください
聖オーガスティン修道院までのアクセス
住所は「Longport, Canterbury CT1 1PF イギリス」。
最寄り駅は「カンタベリー・ウエスト」です。時間帯等によりますが、ロンドンの中心地(私が調査した際は「St Pancras」)から鉄道で70分程で到着します。
また、乗車の際はチケットが必要です。車両内でもチケットの確認が行われますので(稀に確認が来ないこともある)、必ずチケットを購入して乗車するようにしましょう(改札は、クレジットカードなどでも通過できてしまうので注意)。
また、長距離バスを利用すれば、時間は130~140分ほどかかりますが、費用をかなり安くできます(片道6.8~7.4ポンドほど)。本数も1~2時間に1本は出ているため、安さ優先なら長距離バスがおすすめです。
ちなみに、電車の駅からは徒歩20分程の距離です。また、聖オーガスティン修道院と共に世界遺産に登録されている「カンタベリー大聖堂」や「聖マーティン教会」も近くにあり、徒歩で簡単に観光できます(私も徒歩で移動しました)。
イギリスの長距離移動なら「Omio」がオススメ
イギリスで長距離の移動をするなら「Omio」での予約がおすすめです。簡単にメリットをまとめると、以下の通りです。
- 複数の移動手段(電車・バス・航空機など)について「費用」と「時間」を比較できる
- Omioに登録するだけで、複数の会社のサービスが利用できる
- 日本語で利用できる
とくに、イギリスの場合は鉄道の料金が高いため、私の出会った海外旅行者のほとんどは、Omioを使って複数のルートを比較していました。長距離移動を伴う旅行を計画している場合、利用することをおすすめします。
聖オーガスティン修道院とは?
簡単に言ってしまえば「現在活動するカトリック教会で最古の修道会「ベネディクト会」の修道院で、オーガスティンが布教の拠点とした場所」です。現在は廃墟になっています。
聖オーガスティン修道院が建つ前、イギリスはローマ人支配でキリスト教が伝わっていましたが、5世紀初頭にローマの支配が崩壊。結果、異教徒の勢力が拡大していました(この辺、同じく世界遺産の「バース市街」「ロンドン塔」「ハドリアヌスの長城」などでも学べます)。
そんな中、教会は異教の地にキリスト教を広める運動を行っており、その改宗計画の一環で、教皇グレゴリウス1世は、イギリスへの宣教を試みます。
597年、教皇グレゴリウス1世の命により、布教の為にイングランドへやってきた聖オーガスティンは、当時のケント王に許可を得て、カンタベリーの地に修道院を建てました。そして、この修道院は、当初から歴代のケント王と、カンタベリー大司教の埋葬地として使われます。
その後、新たな建物が建てられたり、改築・再建されたりを繰り返し、1500年までには広大な敷地面積を持ち(最盛期は、カンタベリー大聖堂と競うほど)、施設も非常に充実するようになりました。
しかし、ヘンリー8世が宗教改革の一環で1538年に出した「修道院解散令」によって、15年かけて解体され、へンリー8世の4番目の妃であるアン・オブ・クレーヴズのための宮殿に造りかえられました。
その後も、貴族に貸し出されるなどして、宮殿は残っていましたが、1692年の大地震で修道院北西の塔と、旧宮殿の大部分が損壊。更に1708年の嵐で再度の大損壊を受けました。
18世紀以降は、残された建物・敷地はパブや蒸留所などにも使われ、1793年には病院、1808年には刑務所が敷地の南側に建設されました。19世紀半ばの考古学調査が行われるまで、イギリスのキリスト教史で重要な存在であることが、ほとんど忘れ去られていたそうです。そして現在は、イングリッシュ・ヘリテッジが管理しています(イギリスの史跡観光でよく出てくる団体です)。
ちなみに、ヘンリー8世は、聖オーガスティン修道院と共に世界遺産に登録されている「カンタベリー大聖堂」についても、宗教改革の一環で破壊行為を行っています(あと、ロンドン塔に股間の目立つ甲冑が残ってます)。
実際に「聖オーガスティン修道院」を観光してみた(所要時間80分ほど)
聖オーガスティン修道院の外
最寄り駅から徒歩で到着。
こちらが入り口。それほど大きくありません。もっと全体を撮影したかったのですが、周囲が工事中だったため、この距離での撮影となりました。入り口に、入場料や営業時間の看板もありました。入場料はオンラインで予約した方が、やや安かったです。ビジターセンター前から撮影。入場しなくても、世界遺産となっている廃墟が見渡せます。ただ、ここまで来て時間があるなら、是非とも中に入って見学しましょう。
聖オーガスティン修道院のビジターセンター(博物館)
ビジターセンターは小さな博物館になっています。写真の外ですが、右側にはお土産コーナーもあります。
写真右側にあるカウンターで入場。オンラインで予約している場合は、スマホでチケットを表示して「ハロー! ディス・イズ・マイ・チケット!」と言えば通じました。
スマホのチケットを確認後、スタッフさんが色々と簡単に解説してくれます。ただ、私の英語力では何を言ってるのかサッパリわかりません。聞き取れた単語から、オーディオガイドの受け取り方、返却の仕方もこのタイミングで解説されていることがわかりましたが、詳細はやはり不明。そんなわけで「いざとなったら聞き直せばいいや」な精神で、自信満々の表情で「OK!」と返答しておきました。
写真は、廃墟から見つかった建築物の残骸などの展示。建築様式などについても、英語で解説がありますので、気になる人は翻訳アプリなどを使って読みましょう。
また、解説文では、聖オーガスティン修道院について、建築以前からの歴史解説が充実していました。これらも英語ですが、翻訳アプリを使えばだいたいわかります。
細かな釘や当時の修道院で使われていた裁縫道具など、調査で見つかったものも色々と展示されています。
こちらは発掘調査で見つかった埋葬されていた遺体。腐敗を遅らせるため、鉛の棺に入れたものを、更にオーク材の棺に入れる方法がとられており、この埋葬方法は15世紀後半頃に流行したそうです。
少しですがアイスや飲み物も売っていました。相場があまりわかりませんが、日本人感覚ではかなりお高いです。
オーディオガイドについて
オーディオガイドは、ビジターセンターから遺跡のエリアに入る出入口前に置かれていました。上の写真の左側のカゴから受け取り、右側のプラスチックケースに返却する流れです。
オーディオガイドはこんな感じで、画面はなく「音量調節」と「停止・開始」のボタンのみです。
遺跡のあるエリア内に、上の写真のようなヘッドホンのマークの看板があります。
この看板の黒い機器に端末を接近させると、ガイド音声の再生が可能です。私はリスニングの能力がほとんど無い為、ほとんど意味がありませんでしたが、何か面白いことが聞き取れるかもしれないと思い、念のため利用していました。
聖オーガスティン修道院
ビジターセンターを抜けると、聖オーガスティン修道院の廃墟のあるエリアに出られます。ちなみに、周囲に関連の建物と思われる廃墟ではない建物もありますが、史跡とは関係ないからか、一般の人は入れません。
全景はこんな感じです(一部は写真1枚には入りませんでした)。ほとんどが建物の基礎部分しか残っていない遺跡なので、接近しないと正直なんなのかよくわかりません。
ノルマン教会(The great Norman church)
上の写真は、オーガスティンの時代の後に、ノルマン人が建てた教会の一部です。
接近して撮影。手前の方はかなりきれいに残っていて、奥に行くにつれて廃墟らしくなっているのが良い感じの味を出してます。
この辺りは、教会の身廊だった場所だそうで、恐らく当時の柱の跡であろうものが点々と続いています。
聖アンナ礼拝堂(Chapel of St Anne)
ここは、聖歌隊礼拝堂で、1362年に追加された場所だそうです。
地下礼拝堂(Crypto)
ここはノルマン人の教会の地下礼拝堂で、修道士が埋葬や祈りの際に利用していました。元が地下だったからか、ここは柱がそれなりの高さで現存しています。看板には復元図もありました。
別の位置から撮影したもの。柱の上に割いている花が、廃墟らしさを強調していました。近くに階段もあり、礼拝堂の内部まで降りていく事もできます。
礼拝堂奥の部分。差し込む光が神聖な雰囲気を醸し出していました(晴れてて良かったです)。
ウルフリックのロタンダ(Wulfric’s Rotunda)
ここは、修道院長ウルフリック2世が、アングロサクソンの教会2つを繋げるために建てた塔の基礎部分。
このロタンダ(ドーム付きの円形の建物)は、2~3階建てとして設計されていたと推定されていますが、実際に完成したかは不明です。また、使用目的も明確な記録が残っていません。
後にノルマン人の修道士が「修道院として相応しくない」と考え、1072年に他のアングロサクソンの教会と共に取り壊されたそうで、遺跡は1914~15年の考古調査で発見されたそうです。
こちらは、反対側(ノルマン教会の壁があった場所)から撮影したもの。円形と言うだけあって、あまり構造は変わりません。
王と大司教の墓(Tombs of kings and archbishops)
ここは、オーガスティンやアングロサクソン王、初期の大司教が埋葬された墓です。
この部分が597年に建てられた建築物としては唯一目に見える形で残されています。
上の屋根は保護のためのもので、露出したままの状態で、保存状態の良い部分を残すために取り付けられました(世界遺産では、勝手な建物を建てることは許されないが、こういった保護のための物は許容されることがある)。こちらが、屋根の内部。現地の地図では、どの位置に誰が葬られていたかも記載されていました。
回廊(A centre of learning)
ここは修道院の回廊です。現地看板では「A centre of learning」として紹介されていましたが、翻訳がイマイチわからなかったので、場所の名前も「回廊」としました。
修道士の生活は、ベネディクト会の規則に従って、食事・睡眠・礼拝の回数などが決まっていたそうですが、後にノルマン人が来てからは比較的緩いものに改められたそうです。
回廊の南側歩道には、修道院の経典があり、写し取るための机が置かれていました。修道院では写本が15世紀まで作り続けられ、中世イングランドにおける書籍作成拠点の一つにもなっていたそうです(ただし、冬は寒さで手が動かず、作業ができなかったそうです)。
チャプターハウスの入り口(Chapter house)
ここは、12世紀初頭に建てられたチャプターハウス(修道院に付随した会議用の建物)の入り口だった場所です。毎朝修道士が集まり、ここで教会の任について話し合うと共に、聖ベネディクトの規則の一章が読み上げられたそうです。
ほぼ、入り口の跡という以外には何もなく、看板も小さいものがあるだけなのですが、オーディオガイドの対象にもなっていました。
食堂(Refectory)
ここは回廊の隣のエリアで、修道士の食堂が建っていた場所になります。修道院長が私の写真を撮っている場所の付近に座り、後は奥に向かって長いテーブルが何本も並んでいる感じで利用されていました(ホグワーツの食堂のイメージです)。
当時の食事は1日2回。主なメニューは「パン、野菜のシチュー、スープ」で、肉は特別な日にだけ提供されたそうです。
セント・パンクラス教会(St Pancras church)
アングロサクソンの修道院としては、現存する唯一の遺跡がこのセント・パンクラス教会の部分です。ここは、7世紀にローマ時代の材料である赤レンガを使って建築されました(そのため、ここの壁だけ明らかに色が異質な部分があります)。
現存する部分は、アーチ部分と僅かな壁のみですが、ノルマン時代に破壊されなかった部分としては貴重な存在です。ここだけ、他の遺構からやや離れた場所にある為、ノルマン人が教会を再建した時に、破壊されなかったそうです。
左奥が別の壁で、中央の壁がセント・パンクラス教会の壁。明らかに材料が違います。
「聖オーガスティン修道院」が、ネット情報で廃墟に見えない事がある理由(裏門?)
実は、今回観光で入った門の他に、上の写真の門があります。ただし、こちらは一般の観光客は進入不可です。
私もですが、聖オーガスティン修道院が、ネット情報で廃墟に見えなかった理由として、こちらの門が紹介画像として利用されていることがけっこうあります。始末に悪い事に、門の正面にある公園(これは、完全に聖オーガスティン修道院の敷地外)から花が咲くシーズンに撮影すると、まるで整えられた庭から門に至る道があり、更に右手には入れそうな建物が……という形で見えてしまうため、「これは、廃墟ではない!」と完全に誤解します(というか、私がそうでした)。
それでも、写真の解説に「聖オーガスティン修道院の門」と書いても嘘ではないため、ネット情報を誤解して「入ってみたら、廃墟じゃん! きれいなお庭無いじゃん!」となってしまう人が出て来るかなあと思います。
「聖オーガスティン修道院」を観光する際の注意点
日本語のガイドはない
私の体験談でも触れましたが、日本語ガイドが存在しません。
日本語ガイドツアーというものも見受けられませんでしたし、オーディオガイドもありませんし、ガイドブックも見受けられませんでした。
ただし、英語での解説は充実しているため、翻訳アプリを使えばだいたいの意味は理解できますし、廃墟は見ただけでも楽しめますので、英語ができなければ楽しめない観光地ではありません(私も中学以下の英語力なので)。
廃墟と小さい博物館のみなので、人によっては損した気分になるかも
これは人によりますが、聖オーガスティン修道院を訪れて、「廃墟しかないじゃん!」と、ガッカリする人もいるようです。
実際、ネットの画像などを見ると「あれ? 廃墟って書いてるけど、建物も入れそう?」と思うかもしれませんが、ビジターセンター以外は、一般の観光では入れません。
一方で、「廃墟の姿が逆に気に入った!」としておすすめしている人もいるので、この辺りは好みによるかなと思います。
私としては、80分楽しめて10ポンドという価格は、イギリス観光としては妥当(むしろやや安い)かなと感じましたし、廃墟というのが遺跡らしさがあって面白いと感じました。
ただし、壮大さや美しさで言えば近隣にある「カンタベリー大聖堂」には及びませんので、歴史好きや世界遺産好きでなければ、無理してまで訪れなくてもいいかなとは思います。
「聖オーガスティン修道院」周辺の観光地
聖オーガスティン修道院の周辺といえば、「カンタベリー大聖堂」と「聖マーティン教会」。この三件はセットで世界遺産に登録されています。
「聖マーティン教会」は、歴史的には重要な価値があるものの、小さな教会であるため、歴史好き・世界遺産好き以外はあえて行く必要はないかもしれません。ただ、距離は聖オーガスティン修道院から徒歩で6分ほどで、しかも入場料は無料。一応、中では日本語の冊子(といっても、Google翻訳レベルですが)を渡してもらえるので、英語が不慣れでも特に問題ありません。
「カンタベリー大聖堂」は、カンタベリーまで来たら必見です。入場料こそ高いものの、それだけの価値のある壮大なスケールで美しい聖堂です。またカンタベリー大司教であるトマス・ベケットが殉教した地でもあることから、聖地巡礼の中でも重要な地となっていて(ローマに至る巡礼地の始点(終点)にもなっている)、昔から多くの巡礼者が訪れた地でもあります。
ちなみに、「聖オーガスティン修道院」「聖マーティン教会」「カンタベリー大聖堂」の全てを見学したところ、11:00~17:00くらいまで時間がかかり、それでも若干足りないくらいでした。三件ともじっくり見学したい場合は、もう少し早めに到着した方がいいでしょう(ただし、営業時間的に早くても10:00からの入場になるかと思います)。
その他、最寄り駅である「カンタベリー・ウエスト」から川を渡ってくる途中では、ボートに乗って楽しめるリバー・ツアーや、1380年にある関所での脱出ゲームなどのアトラクションもあります。現地の人と仲良くなりたい人であれば、参加してみても面白いでしょう。
「聖オーガスティン修道院」で必要だった英会話
- チケットを見せるときに:Hello. This is my ticket.
- 解説を受けた後で:OK!(本当は何も理解していない)
これだけでした。
比較的混雑していないスポットだったので、誰かとぶつかって「Sorry」と言う場面すらなく、入館時の係員とのやり取り以外は何もありませんでした。
係員さんが何か色々と言って来ても、一方的にチケットを見せ、解説らしいものが始まったら、理解できなくてもとりあえず頷き、最後に「OK!」で終わりです。
他の観光地でもそうですが、だいたいこれで行けます。万が一、本当に困ったことがあったら、改めて訊きなおせばいいですし、基本的には日本の博物館や史跡を訪れた時と同じ感覚で過ごせば問題ないです。