【世界遺産】白川郷(荻町集落)の観光情報と、実際に観光した感想
この記事では、世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」に登録されている「白川郷の合掌造り集落」の観光情報と、実際に観光した感想をまとめます。
「世界遺産に興味がある方」「白川郷を観光予定の方」などの参考になれば嬉しいです。
「白川郷」の観光情報
※詳細は変更の可能性もあるため、訪問前には公式HPなどの情報をご確認ください
「白川郷」とは?
白川郷とは、簡単に言えば「岐阜県の庄川流域の呼称で、荻町地区にある伝統的な合掌造り集落で知られる場所」です。秋の火災に備えた放水訓練の光景や、冬の夜のライトアップなどは、テレビで毎年のように放送されるほど有名です。
独特の景観が残されていることが評価され、1976年には重要伝統的建造物群保存地区に選ばれ、1995年には五箇山の「相倉」と「菅沼」の集落とともに「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として萩町の59棟の建物が世界遺産に登録されました。
雪下ろしや水はけに配慮した急勾配(45~60度)の屋根を持つ合掌造りの建物が有名で、ドイツの建築家「ブルーノ・タウト」は、合掌造りの家屋を「その構造が合理的、論理的である点においては、日本全国で全く独特の存在」と評しました(彼の建築物も世界遺産になっています)。
かつては、合掌造りの家では10~30人の一族が住む「大家族制」がとられており、稲作や畑作にも向かない山岳地帯であったことから、その労働力を養蚕や塩硝の生産に使い、主要な収入源としていました。
歴史的には、白川郷や五箇山の位置する山岳地帯は白山を中心としており、8世紀には修験道の修行場として発達。集落は12世紀半ば~17世紀前後に形成されていきました。江戸時代には当初高山藩に入っていましたが、17世紀末には江戸幕府の直轄地となります。合掌造りの建築様式が完成した時期は不明ですが、17世紀後半には原型が完成し、18~19世紀には養蚕が盛んになり、大規模家屋に発達したと推定されています。ちなみに、世界遺産に登録された保存状態の良い59棟の内、31棟が江戸時代に建設されたものです。
また、同じ合掌造り集落でも建築様式の違いがあり、白川郷の荻町集落は「平入り(屋根の「棟」と並行する側に出入口がある)」が多く、五箇山の菅沼集落は「妻入り(棟の垂直側に出入口がある)」が多いといった傾向がみられます。
ちなみに、白川郷の地域は高山市にも含まれるのですが、高山は昔から外国人観光客の受け入れに力を入れており、英語の案内看板も比較的多い地域です。私が観光した際も、白川郷には多くの外国人が観光に訪れていました。
「白川郷」の主な見どころ
白川郷は見どころが多いため、以下に簡単に見どころをまとめます。休館日の関係上できれば水曜以外(12~3月は水・木曜以外)に訪れるといいでしょう。
- 和田家:最大級クラスの合掌造りで、唯一国の重要文化財に指定されている。不定休。
- 神田家:床下の塩硝を作っていた場所も見学できる合掌造り建築。水曜休館。
- 長瀬家:5階建ての合掌造り家屋。500年前の仏壇や、美術品、古い生活用具などが展示されている。不定休。
- 旧遠山家住宅:江戸後期の1827年に能登の大工によって作られ、2~4階は養蚕スペース、床下は塩硝作りが行われていた。水曜休館。
- 奥左ヱ門:大正三年に建築された。合掌造りではないものの、伝統的な和風建築。不定休だが主に水曜休館。
- 美然ゆめろむ館:樹齢800年以上の大とちの神木や、郷土作家の板谷峰止氏による作品が展示されている合掌造り家屋。不定休。
- 明善寺郷土館:集落内にある真宗大谷派の寺院。重要文化財でもある。不定休。
- 白川郷田島家養蚕展示館:村内で唯一の養蚕をテーマとした展示館。2023年4月26日開館。蚕がいなくなり次第、長期休館なので、開館しているかは電話確認が必要。
- 合掌造り民家園:合掌造りをはじめ、村内各地から移築した25棟の古民家が保存されている。9棟は県指定重要文化財。12~3月は木曜休館。
- 荻町城跡展望台:戦国時代に作られた山城跡。荻町集落が一望できる。1時間にシャトルバス3本が運行。撮影スポット。
- であい橋:「せせらぎ公園駐車場」と「合掌造り集落」の間にある全長107メートルの吊り橋。撮影スポットだが、混雑時は邪魔にならないよう注意。
- かん町の合掌屋根:荻町集落から少し離れた場所にある(集落の南西の方)合掌屋根が三棟並ぶ撮影スポット。
また、2023年12月時点で確認できたアクティビティなどを確認すると、以下の様になりました。
- 天然温泉 白川郷の湯:日帰りの入浴施設。宿泊も可能。
- トヨタ白川郷自然學校自然体験プログラム:季節に応じた自然体験プログラム。
- 白川郷アクティビティーセンターo8:川下り、白水湖ツアー、野外テントサウナなどの自然体験。
- 遠山家ごはんプロジェクト:国指定重要文化財の「旧遠山家住宅」で、お昼ご飯を食べ、前後で施設の見学ができるツアー。
- 宿泊:荻町だけで22件(合掌造りは19件)の宿泊施設があり、1泊2食付きで1万円ほどの場所もある。
- 飲食:飛騨牛・川魚・山菜・そばなどが多い。白川郷の「結旨豚(ゆいうまぶた)」「飛騨牛にぎり」「どぶろくきんつば」などもある(白川郷は「どぶろく祭」でも有名)。
観光名所などの詳細については白川郷の公式HPにまとまっていますので、実際に訪れる前には一度確認しておくことをおすすめします。
白川郷とコンテンツツーリズム(「ひぐらしのなく頃に」の聖地としての白川郷)
今回、観光中にお土産屋に入った際に「ひぐらしのなく頃に」という作品のポスターが貼ってあるお店がありました。
実は、白川郷のいくつかの場所は「ひぐらしのなく頃に」に登場する場所のモデルとして利用されており、いわゆる聖地巡礼の場所にもなっています(ネットで調べると、実際の場所とアニメの比較画像などが見つかります)。
調べてみると、最初に聖地巡礼の観光客が増えたのは2004年頃から。作中で登場する「古手神社」のモデルとなった「白川八幡神社(「どぶろく祭」でも有名)」の絵馬の売り上げは、2006年の141枚から2009年までには915枚まで上昇したとのこと。
ただ、作品で暴力描写が多かったことや、ブームが一過性のものと判断されたため、2009年頃にはアニメ関連グッズのお土産販売が自粛を要請されるようになりました(中部縦貫自動車道の全通による観光客増加や、急増する外国人観光客への対処も影響が指摘される)。
しかし、現場レベルでは当時から聖地巡礼者との良好な関係も確認されており、方針転換があったためか2016年6月には公式に聖地巡礼ツアーが催行。そこからは、スタンプラリーなどのコラボイベントやコラボ民芸品が販売され、ふるさと納税でも「ひぐらしのなく頃に」Tシャツが貰えるようになりました。こういうコンテンツと観光の関係性の変化は、コンテンツツーリズムの一例として、とても興味深かったです。
ちなみに、白川郷のコンテンツツーリズムに関する研究についてはサークル「STRIKE HOLE」の花羅さんが『コンテンツツーリズム取組事例集6.5 雛見沢聖地論』という聖地研究本を出されています(旅行後、偶然拝読させて頂く機会がありました)。従来の「白川郷は『ひぐらしのなく頃に』を忌避している」という定説を覆す解説や、現地の方へのインタビューも掲載されていますので、興味がある方は参考にしてみてください。
「白川郷」へのアクセス
住所は「岐阜県大野郡白川村荻町」です。
公共交通機関で向かう場合、周辺に鉄道の駅がないため、少し離れた場所から高速バスで移動する必要があります。主要な場所からの移動時間は以下の通りです。
- 東京駅:約4時間(富山駅まで北陸新幹線で約2時間15分、富山駅から高速バスで1時間20分)
- 大阪駅:約4時間15分(金沢駅までJR特急サンダーバードで約2時間40分、金沢駅から高速バスで約1時間20分)
- 名古屋駅:約2時間50分(名鉄バスセンターまで歩き、そこから高速バスで2時間30分)
- 金沢駅:高速バスで約1時間20分
また、自動車で向かう場合は以下の通りです。
- 東京方面:約5時間15分
- 大阪方面:約4時間00分
- 名古屋方面:約2時間15分
- 金沢方面:約1時間10分
自動車で向かう場合「せせらぎ公園駐車場」を利用することが基本になりますが、混雑時は「みだしま公園駐車場」や「寺尾臨時駐車場」を利用する事になります(係員が誘導してくれます)。「せせらぎ公園駐車場」から「であい橋」を渡ると、すぐに世界遺産の荻町集落です。
「せせらぎ公園駐車場」の営業時間は原則8:00~17:00なので、宿泊される方以外は時間帯に注意しましょう(イベントなどで営業時間が変更されることはあります)。
駐車料金は、普通自動車1,000円、二輪車200円です(料金の一部は世界遺産保存の事業に活用されます)。
「白川郷(荻町集落)」を実際に観光してみた(「民家園」を除き所要時間90分ほど)
この日は先に五箇山の「相倉」と「菅沼」の集落を訪れていたため、到着は14:10頃。駐車場の営業時間が17:00までなので、観光時間はけっこうギリギリです。そのためかなり早足での観光となりました(なので外観もあまり見れなかった場所が多い)。
ちなみに集落の直ぐ近くにある「合掌造り民家園」は、見どころが多かったので、別の記事でまとめます(この記事の観光の後に、民家園も見てきました)。民家園も含めると所要時間は150分ほど。ゆっくり観光する場合、短くみても3時間確保した方がいい観光地だと思います。
荻町城跡展望台
白川郷の集落を見学するのであれば「せせらぎ公園駐車場」に駐車するべきなのですが、最初に集落全体が見える「荻町城跡展望台」に向かいました。
ここは展望台というだけあり、集落全景が見渡せるビュースポットです。私は自動車で駐車場まで向かいましたが、1時間に3本のシャトルバスもここまで来ています(片道200円。徒歩だと集落から約15分ですが、坂道なので大変です)。
スマホのカメラで撮影すると小さくなってしまい分かりにくいですが、集落全体の合掌造りの家屋が見渡せます。
望遠レンズをスマホに付けて撮影したら、上の写真のようになりました。安物なので画質が残念です。
ちなみに「荻町城」は16世紀に建造され、白川郷を納めた内島氏の重臣「山下大和守氏頼」が初代城主。三代に渡って城主を務めました。
しかし、内島の一族が白川村にある帰雲城に集まった1585年11月29日、天正地震が発生して帰雲山が山体崩壊。土石流により帰雲城と城下町が全て埋没し、内島一族は一夜にして死に絶えました(大名としては滅んだが、出家していた一部は生き残った)。その後、理由や時期は不明ですが、城も廃れたそうです。
であい橋
「せせらぎ公園駐車場」まで移動すると、駐車場の目の前に、庄川にかかる「であい橋」があり、ここを渡ると集落に辿り着きます。
現地の標識からは全長107メートル、幅員は1.5~4.0メートル。竣工は1993年7月です。
庄川のせせらぎと、山々の景観、そして合掌造り家屋も合わさった美しい風景のため、ここも撮影スポットとしても賑わっています。ただし、橋中央の方は幅1.5メートルなので、周囲には注意しましょう(上の写真の通り、平日でもけっこう人が多いです)。
明善寺郷土館(休館のため外観のみ)
明善寺は真宗大谷派の寺院で、1827年に建てられました。本堂には東寺や醍醐寺にもある、浜田泰介画伯の障壁画があるそうです。
本堂は白川村有形文化財、小楼門は岐阜県指定有形文化財となっており、本堂を建てた際に福棟梁によって植えられたイチイは岐阜県指定天然記念物となっています。
重要文化財である庫裏は「明善寺郷土館」となっていて、内部見学ができるのですが、私が訪れた際は休館となっていました(不定休です)。
長瀬家
長瀬家は5階建ての合掌造りの家屋です。
営業時間は9:00~17:00。入館料は大人400円、小学生200円になります。
1階は500年前に作られたという仏壇や、美術品が展示されています。また囲炉裏などの生活スペースの雰囲気も味わえました。
3・4階には古い生活用具などの展示がされていて、当時の生活がイメージできます。ちなみに、最上階と思われる養蚕の部屋から先は入室できないようになっています。
神田家(休館のため外観のみ観光)
神田家は約10年かけて建てられた合掌造りの家屋です。
床下の塩硝を作っていたスペースも見られるとの事でしたが、私が訪れた際は休館となっていました(水曜日定休です)。
営業時間は10:00~16:00、入館料は大人400円、小学生200円になります。
和田家
和田家は、最大クラスの合掌造り家屋であり、唯一国の重要文化財に登録されています。実際に訪れてみると、その大きさを実感しました(写真で全体を入れるのも難しかった)。
営業時間は9:00~17:00、入館料は大人400円、小学生200円になります。
和田家は300年以上の歴史があり、江戸時代には名主や番所役人を務めていた家です。また現在も住居として利用されています(そのため、生活スペースは非公開)。
1階は客室や仏間など、古くからの生活がうかがえる広々としたスペースがあり、歴史的なものも学べました。2階は養蚕関連の道具の展示が多く、私の地元も養蚕関連の歴史があるため興味深かったです。ちなみに、7~8月は現在でもお蚕の飼育をしているそうです。
「白川郷(荻町集落)」周辺の観光スポット
「白川郷」に行ったら、世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」に一緒に登録されている五箇山の「菅沼」と「相倉」の集落にも行ってみたくなるところ。
白川郷と比べてマイナーな事から予想できると思いますが、五箇山の合掌造り集落の方は白川郷と比較して規模は小さめで、観光施設もそれほど多くありません。しかしその分、ゆっくり静かに昔ながらの雰囲気を味わいたい人には五箇山の集落が向いているかなと思います(白川郷は、平日でもけっこう混雑していました)。
仮に「白川郷(萩町集落)」「菅沼集落」「相倉集落」の間を公共交通機関で移動する場合は、世界遺産バス(高岡・城端・五箇山・白川郷)を利用すると便利です。
ただし、1日で三か所を観光すると時間的余裕は少ないです。私は自家用車を利用してバスよりも効率的に3カ所を観光しましたが、最後に訪れた白川郷は駐車場の営業時間のために早めに切り上げざるを得ませんでした。
もしも3カ所をバスで観光しつつ、それぞれの集落をじっくりと観光したいのであれば、合掌造り家屋で一泊してみてもいいでしょう。場所によっては、1泊2食付きで1人1~1.5万円ほどの宿泊施設もありますので、それほど予算をかけずに合掌造りの家屋を楽しむことが可能です。
また「菅沼」では合掌造りの家がコテージとして貸し出されており、5名まで33,000円、5名以上は追加1名ごとに3,300円となっています(学校などの団体旅行でも4棟で250名まで宿泊可能。ただし料金形態は要問合せ)。大人数での旅行の場合、利用を検討してみてもいいでしょう(詳細はこちら)。