【体験学習】シナリオ・センターの「シナリオ8週間講座」をド素人が受講した結果と感想をまとめます
先日、シナリオ・センターで実施されている「シナリオ8週間講座」を、ド素人の私が受講してきました。
この記事では、「シナリオ8週間講座を受講した感想」「シナリオ8週間講座で、ド素人の私がどう変わったか?」を中心にまとめたいと思います。
以下の内容は、2021年に私が受講した際の感想になります。
講座の内容などは変更の可能性がありますので、実際に受講される方は必ず公式ページなどを利用して詳細をご確認ください。
「シナリオ8週間講座」の概要・体験まとめ
- ド素人でも、最後まで課題を提出して受講できた
- 基礎から幅広く学べるので、初心者~経験者でも勉強になる
- 他人の前での発表は無いので気楽
- 一番勉強になるのは「課題を書くこと」と「添削してもらうこと」だった
- 朗読で他人が(ギリギリ)理解できる脚本を書けるようになった!(これ、初心者には難しいです)
- ステップアップの上位講座がある
参加前の私のスペック
まず、私の参加時のスペックについて。
- シナリオについては、大学時代に小説をよく読んで「なんか自分でも書けたらなあ」と思った程度(高校まで小説をろくに読まず、ドラマ・映画などはほぼ観てない)
- 退職前3年間は「映画・ドラマ・アニメ・漫画・ゲーム・小説」など封印状態(『巨人の星』と『あしたのジョー』は別)
- ドラマについては子供の頃からほぼ見てない(3~9年前頃、大河ドラマを観ていたくらい)
- 「脚本の書き方? 何それ小説と違うの?」の知識水準
要するに「ド素人の中でも、極端に知識水準が低いレベル」だと思います。
とはいえ「脚本と小説ってどう違うの?」という一般人はかなり多いのではないかと思います。具体的な注意点は知識レベルでも知らないし、技術は当然身に付いていないはず。
そういう意味では「素人同士で差があっても、その差を気にする必要は少なかった」とは思います(実際、そのような助言をいただきました)。
「シナリオ8週間講座」の概要と受講した結果・感想
「シナリオ8週間講座」の概要
「シナリオ8週間講座」とは、その名の通り8週間でシナリオを学ぶ講座です。段階でいえば「基礎」にあたり、初心者の私でも、頑張ればついていけるレベルでした。
ちなみに、シナリオ・センターの講座の中では「シナリオ作家養成講座」と「シナリオ通信講座」も初心者向けのコース。どのコースが一番初心者向けということはありませんが、受講期間や受講方法などの詳細が変わります(詳細は公式のページで確認をお願いします)。
講座は基本的に「講義を受ける」→「最後に質問」→「課題を提出」の流れ
講座は大雑把に以下の流れで進みました(私が受講した際の内容)。
- 講義を受講する(2時間程度)
- 講義後、質疑応答(10~20分程度。質問の量や内容による)
- 自宅で課題を作成し、期限までに提出(期限は概ね、次の講義開始の少し前の時間)
講義の時間では、受講生同士の意見交換や作成した課題に対する細かな質問・添削などは基本的にありません。
講義では、映像作品向けの脚本の書き方(「柱・台詞・ト書き」の書き方など)や、小説などの文章との違いなどの「最低限理解すべきこと」から始まり、映像の特徴・技法やネタの集め方、小道具の使い方、構成……などと、映像作品向けの脚本の書き方・技術が、全体的に学習できます。
また、基礎的な内容の学習だけでなく「技術を駆使し、どう面白く見せていくか?」といったことも、実際の作品の例なども交えて教えてもらえるようになっていました。
課題について
課題は毎週1つ出題され、徐々にページ数が増えていく形式でした(初回は200字詰め2ページ)。ですので、シナリオを書いた経験の無い私でも、ついていけました。
ただ、先生も仰っていましたが、ページ数が少ない事による難しさもありますので、ページ数が少なければ楽に書けるというわけでもありません(時間はかかりませんが……)。
作成した課題については、先生の添削を貰えますので、その内容を次回に活かし、自分の技術を向上させていきます。
ちなみに、課題を教室で発表する必要はないので、その点のプレッシャーはありません(私は先生への提出でもプレッシャーでしたが……)。
「シナリオ8週間講座」の個人的な結果・感想
「面白い」課題を書くより「条件を満たす」課題を書くことが勉強になる
一番勉強となった内容は「課題を書くこと」と「添削してもらうこと」だと思います。
これは個人的な意見もありますが、やはりどのような技術でも、知っているだけではダメで実践を通して身に着けていく必要があります。
ですので「講義を聞く」ことも大切ですが、やはり自分を一番成長させることは「課題の作成」です。「課題を書こう」と考えることで、日頃から作家としての視点で物事を考えられますし、課題があることで一定のペースで強制的にシナリオを書くことができました。
で、この「課題の作成」なのですが、「自分の考えた面白いシナリオを、条件を満たしているっぽく書く」のではダメです。
もちろん「面白いシナリオ」を考えることは大切なのですが、カリキュラムに沿ってシナリオの技術を身に付けるという意味では、最優先すべきことは「条件をしっかり満たして描けているか?」だと感じました。
例えば、指定された単語について「国語辞典での定義では……」と調べるのはいいのですが、一般人が直ぐに思いつかない意味合いをシナリオの中心に持っていくのはNGだと思います。これは「カリキュラムの意図に沿わない練習になってしまう」ということもありますし、仕事として考えると「○○を使って視聴者に訴求したい」という依頼の意図も満たせない内容にもなります。
なので例えば「上着」という言葉に対して「『衣服を重ねて着る時に、一番外側に着る衣服』だから、鎧も、着ぐるみも、ヒーロースーツも上着だ!」と勝手な判断をするのはやめましょう(使いたい場合は、先生に確認しましょう)。
また、毎回明示されるとは限りませんが「映像作品を想定したシナリオを書く」という意味では、「課題の条件を、映像としてしっかり表現できているか?」は毎回注意した方がいいと感じました。
また「自分が想定通りに条件を満たせているか?」「改善点はどこか?」については添削で指摘してもらえます。
添削があることで、自分の気付けない弱点や、判断に迷う点について改善ができたことは、やはり自分の成長に大きく影響したと感じます。
経験者でも勉強になる
これは個人的な感想だけでなく、事実ですが「実際のシナリオライター経験者」でも8週間講座を通して、基礎から学び直すという例があります。
当たり前ですが、「初心者でも受講できる」ことであっても、完全な習得は簡単ではなく、経験者でも基礎を再確認しスキルアップに利用できます。
8週間講座では、シナリオに関する技術を幅広く学習できるため、自分の足りない部分を再確認するには有効だと感じました。
参加前に学習するのであれば?
ちなみに、「シナリオ8週間講座」の内容を、ある程度独学でも学習できます。
「シナリオの基礎技術」は、シナリオ・センターの創立者でもある新井一さんの書籍で、講義の内容でもこの書籍からの引用が度々登場します。8週間講座の講義内容と比べるとちょっと知識のボリュームが多く、また古くなっている内容も多いのですが、私は受講直前に一読していたため、講座の内容がスムーズに理解しやすかったです。
また、YouTubeにシナリオ・センターの公式チャンネルがあり、その中で「シナリオ8週間講座」がどんな講座か紹介もされています。
同じく、公式チャンネルで「シナリオ作家養成講座」「シナリオ通信講座」の解説も行われていますので、興味がある方は確認してみてください。
で、シナリオ8週間講座を受講した結果は?
ド素人の私がシナリオ8週間講座を受講した結果は以下の通りです。
- 当然だけど、プロとの実力差は圧倒的(「あと何年頑張れば仕事になるのやら」なレベル)
- 基礎的なフォーマットは守れるようになった(細かな改行のタイミング、言葉の使い方などは継続して身に付ける必要あり)
- 知識としては概ね全体を抑えた。が、実際に技術を身に付けるには、継続的に書く必要あり
- 作品を観るときの目線が変わって来た(柱・台詞・ト書きなどを想像しながら見てる。時々、夢の中まで脚本化される……)
- 20~40時間くらいかければ、10分くらいの映像シナリオが書ける(安定しない。しかも面白くはないですよ……)
- 他人が音で聴いて、ギリギリ大筋が理解できる脚本が書けるようになった
要約すると「全く何も書けなかった人間が、朗読でも他人が(ギリギリ)理解できる脚本が書けるようになった。今後の研鑽に期待」というレベルです。
まだ全然面白いシナリオが書けるようなレベルにはなっていませんし、私個人としては、ここから1年頑張ったくらいでは、アルバイトにもありそうにないのが現実です(一応、進級して最速で進めると、1年ちょっとで一人前になるカリキュラムではあります)。
当たり前ですが「技術を知った」ことと、「技術を使える」ことは全くの別物。本当に実力をつけるのであれば、講座の後も何本も脚本を書き続け「シナリオ8週間講座」で学んだことを自分の血肉にする必要があります。
とはいえ、今まで「1ページだって書ける気がしない」という状況から、10~20時間で5分程度の映像シナリオが書けるようになったのは大きな一歩だと思います(内容は面白くないですが……)。
「朗読で他人が(ギリギリ)理解できる」レベルがけっこう難しかった
実はこれ、ド素人だとかなり難しかったです。というのも、基本的には以下の条件で脚本を書いているからです。
- 映像表現なので小説の地の文による解説は不可
- モノローグ・ナレーション・心の声は禁止
- 回想・イメージは禁止
- 説明ゼリフは自然なシナリオの流れのみOK
この条件で書き上げ、しかも「朗読(音のみ、1回限り)」で理解できるレベルまで仕上げるのは、ド素人だった私にはかなり大変でした。
もちろん「他人が(ギリギリ)理解できる」レベルなので、まだ全然上手くありません。もちろん「面白いシナリオ」にはなっていません。
しかし、ド素人が2ヶ月の訓練で、朗読のみで大筋を理解してもらえるシナリオが書けるようになったのは、大きな成長かなと思います。
そもそもシナリオ・センターとは?
私が解説するよりも公式を確認して頂いた方がよほどいいと思いますが、念のため。
大雑把に言うと、シナリオライターである新井一さんが設立されたシナリオライターの養成機関です。1970年設立で、50年以上の歴史があります。
シナリオ・センター出身で活躍されているシナリオライターも多く、社会人からシナリオライターを目指すのであれば、けっこう有名な機関という印象です(というあたりを知り、受講しました)。
ちなみに、進級を続けていくと「作家集団」というクラスに至るのですが、ここに入るかコンクール受賞経験があると「ライターズバンク」に登録する資格を得ることができます。「ライターズバンク」では毎月4・5件程度のオファーがあり、応募者が限定されるため「シナリオライターとして働きたい!」という人であれば、仕事を得るためにも活用できます。
ちなみに、映像作品向けのシナリオの勉強をする講座になってはいますが、学習した内容は小説や漫画原作、音声作品など幅広く使えるので、実際に映像ではないタイプのシナリオライターとして活躍している方も多くいらっしゃいます(アドバンス講座で、アニメ、漫画原作、オーディオドラマなどもあります)。
更なるスキルアップを目指すなら?
先にも記載しましたが「シナリオ8週間講座」は初心者でも参加できる基礎的なクラスです。
その後のステップアップについては、独学でももちろん可能ですが、シナリオ・センターの講座の中では以下の順でステップアップする形になっています。
- シナリオ8週間講座を修了
- 本科(通信本科):課題20本をクリアして進級
- 研修科(通信研修科):課題30本をクリアして進級
- 作家集団(通信作家集団)
上位の講座については、より実践的な内容になります(「自宅で脚本を書き、講義の日はお互いにその感想を言いあう」など)。
課題は最速で月4本ペースということなので、本科が最速5カ月、研修科が最速8カ月で完了となり、作家集団に入ることになります。もちろん「技術を身に付けること」が重要なので、無理なく自分のペースで課題に取り組んだ方がいいです(退会からの再開も可能)。
ちなみに「しっかりとカリキュラムの意図に合わせて学べば、50の課題(200字詰め×20枚×50本)でプロの腕になる」という想定の講座なので、学習の方向さえ間違えなければ、作家集団に入る頃にはプロ並みの腕前になっているはずです(もちろん、仕事にありつくには運や行動力も必要)。
「社会人から本気でシナリオライターを目指したい人」「既に関連の仕事で働いている人のステップアップを狙っている人」であれば、上級講座を受講してみるのもアリかな思います。