老後資産2000万円以上の時代に考える、仕事と勉強の自己投資

11月 25, 2019コラム

国の方針。2000万円は貯蓄が必要

つい先日、金融庁の金融評議会「市場ワーキング・グループ」が以下のような報告書(案)をまとめました。

報告書の要約

  • 年金だけでは老後は足りない。長生きするなら、夫婦で2000万円が必要
  • 少子高齢化で更に不足額は拡大する
  • 資産運用しないとカバーできない
  • 退職金も減るからあてにしないで

野党は反発していますが、これが正直な現実であり、むしろ正式な発表が遅れた形だと私は思います

年金は100年安心という意見もありましたが、本気で信じていた人がどれだけいるでしょうか。少なくとも10年以上前から「年金は信頼できない」という意見が、囁かれていたのは確かです。

狒々山
狒々山
大学で「投資なんてしなくても年金があるから大丈夫」といっている先生もいましたが、今の世代には通じない意見でしょう。確かに、それを言っていた先生の世代であれば安心だったかもしれませんが、若者を教育する意見としては大いに問題ありだと思いました。

若い世代は2000万円では足りない?

報告書を読んでみると、実のところ2,000万円でも足りないといっています。

  • 少子高齢化で更に不足額が減少する
  • 退職金も減るからあてにしないで

というところがそれです。

少子高齢化が今後改善する余地があるでしょうか? 私は限りなくその可能性はゼロに近く、むしろ人口バランスは悪化すると考えています。

理由は単純で「若い世代の収入が減るから」。今後日本の国全体での衰退が進む中、会社が賃金を大幅に上げる可能性は低いです。また「人手不足に伴い定年の延長」が提唱されている中で、若い世代の昇給額は減っていきます。更には老後のために資産も作らなければいけない状態。

こんな状態で、若い世代が子供を生めるわけがありません

結局、現状では「子供を生んで欲しい」という国の願望と、現実が全く逆行してしまっているため「少子高齢化による不足額の増加」は進行していくと考えられます

少子高齢化が進めば、当然「受給できる年金の減少」と「支払わなければならない税金の増額」の両面から、老後に必要な資産が上昇していきます

人口のバランスが悪化すれば、健康保険税・介護保険税の増税が行われるのはほぼ確実です。今ほど人口バランスの悪化が叫ばれてこなかったここ20~30年程度でも、これらの税率は2%弱上昇しています。今後、人口バランスの悪化を口実に税率の上昇は加速する可能性のほうが高いでしょう。

また、消費税の増税も今後も継続的に行われていくとことはほぼ確実。国の全体的な制度や考え方、社会状況にも影響されるため一概にはいえませんが、ヨーロッパ並みになれば20%まで上昇。年金から税金に回る金額は今より確実に上昇します

ちなみに「不足額の基準」は「毎月不足額が約5万円」発生する場合の資産内容で「20年で約1,300万円、30年で約2,000万円」となっています。今後、更に不足額が拡大していくことを考えると「2,000万円では足りない」といっていることがわかります。

狒々山
狒々山
定年の廃止や、70歳まで働ける社会の構築も進んでいます。将来的には年金を受給できる年齢は70歳以上、75歳からとなっても不思議ではありません。

資産運用の必要性

2,000万円以上は老後の資産が足りない。そこで政府が掲げた内容が「貯蓄から資産形成へ」というスローガン。これは間違ってはいないと思います。

日経平均はバブル崩壊から上下を繰り返している状態ですが、世界に目を向ければ、ダウ平均は正式な算出がスタートした1896年から、100年間で年平均5.7%程度の成長を続け、その後も成長は続いています。年単位では暴落することもありますが、一定の資産を積み立てて運用していれば、数十年で資産が増える確率はかなり高いといえます。

しかし、そこで重要になってくるのが「投資をするための資金」です。

果たして若者は投資をできる環境にあるか?

積立NISAなど、お金のない若者でも少額から投資しやすい環境は整えられてきました。2018年に作られた積立NISAの口座数は、1年間100万口座程度です。

しかし、若年層を取り巻く環境を考えると、果たして若者のどの程度が資産運用できるだけのゆとりがあるかには疑問があります。例えば

  • 多額の奨学金を返済する必要がある
  • 一人暮らしで生活費がかさむ
  • 年収が300万未満の人も…

という状況を考えると、若年層の資産形成はかなり厳しいのではないでしょうか。

重くのしかかる奨学金

奨学金の利用者は大学生の2人に1人程度という状況ですが、奨学金が原因の破産者も出ている現実があります。2011~2016年の5年間では、延べ1万5338人にのぼります。

また、奨学金の平均返済額は324万円。仮に、平均返済額の324万円が無利子の奨学金だとして、毎月3万円ペースで返済できたとしても、完済までにかかる年数は9年。資産運用ができる余裕は30代になるまでできない人も多いのではないかと思います。

狒々山
狒々山
本気で少子高齢化や若年層の貧困を改善したいのであれば「大卒じゃないと採用しない」という社会の構造を改善する方が急務ではないかと思います。研究や高額な研究設備以外の多くの面は、いまやオンライン学習で安く可能な時代です。「卒論不要。座学のみで卒業できる大学」に価値があるとは思えません。

一人暮らしでお金はほぼ残らない

多くの若者が地方から東京に流れるという現実を考えると「一人暮らし」という人はかなり多いかと思います。東京にある私の職場も、若手の過半数は地方の出身者です。

当然ですが「一人暮らし」の人の多くは、実家暮らしに比べると、家賃・食費・光熱費など、どうしても出費がかさみます

節約の程度にもよりますが、一人暮らしの費用は平均的には14~17万円程度です。

一方、新卒・親友社員の手取りは平均で16~17万円ほぼ全額が生活費で消えることがわかります。

もちろん、節約の程度によっては余剰資金の確保は可能ですが、先に上げたように奨学金の支払いが加われば、ほぼ手取りの全額が消滅することになります

更に今後定年年齢が引き上げられる(あるいは廃止される)ことに伴い、新卒の収入や昇給が低くなる可能性は非常に高く「貯金どころか生活費を賄うので精一杯!」という人も増加してくことが見込まれます。

年収が300万円未満の人もいる現実

20代の収入は、平均で346万円程度です。状況によりますが、簡易的に計算すれば、手取りは270万円程度となります。

とはいえ、20代全体の約3割は300万円未満の収入しかありません。小売・外食・事務などの比較的年収の低い職種・業種では平均的な年収が300万円前後。税金も差し引かれることを考えると、簡易的に考えれば手取りは250万弱。一人暮らしの場合、ほとんどお金があまらない人たちが一定数存在することもわかります。

狒々山
狒々山
私の働いているIT業界でも、年収300万円未満の人は一定数います。経験年数1年未満でも、そういう人は早く転職するよう勧めています。

仕事も勉強も投資的に考える

資産運用は、正直必須だと私は考えています。私自身、将来に備えて余剰資金のかなりの量を、積極的に運用しています。

しかし先にも上げたように「若い世代は投資をするための資金を確保することが難しい」という現実も存在し「誰でも資産運用できるから、将来は安心」とはいいにくい状況です。

ではどうするべきか。簡単に考えれば「自分の価値を高めて、評価される」状態をつくるべきです。

自己研鑽や、就職・転職活動とは一種の投資です。例えば、300時間の勉強と、10万円の費用を費やして自己研鑽をしたとして、年収が300万円から400万円に向上するのであれば、十分に効率の投資といえるでしょう。

「資格試験は勉強時間が○○時間かかるから、時給で考えればコストパフォーマンスが悪い」という意見もあります。確かに、会社から支払われる報奨金だけを考えればそのとおりです。しかし「年収が高い会社に入る確率を上げられるなら、資格への投資などは十分に価値がある」と私は考えています

もちろん、資格試験だけが就職に対する投資ではありませんすでに社会人であるならば「スキルアップできる職場」へ転職し、給料を上げながら、社会的な評価も向上させることも重要です。とくに「単純作業の低賃金」の職場は将来性もないため、早急に脱出できるようにした方が安全です。

昔は「若者はすぐに会社を辞めるからけしからん!」という風潮もありましたが、そんなことをいっていられるほど、今の若い世代に余裕はありません。暇で単純な仕事でも「会社や国が養ってくれる」時代は終わりました。30代にもなって、単純作業ばかりの職場で働いていれば「業務経験のレベルが低いから転職できない」という事態を招き、一生低賃金から抜け出せなくなる可能性すらあります。資産形成をしたいのであれば、まずは自分の置かれた環境を変えるため、行動してみるといいでしょう。