プロジェクトマネージャ試験 午後II対策・テクニックまとめ
プロジェクトマネージャ試験の午後IIについて、傾向と対策を確認し、自分の受験用に学習方針をまとめてみました。
本記事は未合格者かつプロジェクトマネジメント未経験者が執筆しております。多くの教材や学習のハウツー本にも書かれておりますが、合格していない人の「これをやると効果的!」という内容はあまり信憑性がありませんので、ご注意ください。
事前準備:「論述の対象となるプロジェクトの概要」を書けるようにしよう
午後IIの論述では、設問以外に「論述の対象となるプロジェクトの概要」という質問票のようなものにも解答する必要があります。
直接的な論述は行いませんが、この部分も実は採点に影響を及ぼす重要な内容です。
「論述の対象となるプロジェクトの概要」の対策については、別記事でまとめましたので、書き方がわからない人は参考にしていただければと思います。
午後IIの傾向と対策:プロジェクトマネージャ試験の最難関
知っている方が多いと思いますが、プロジェクトマネージャ試験の最難関は午後IIです(だからといって午後Iの気を抜いていいわけではないですが…)。
そして、午後IIの対策は、ザックリ分けると「文章対策」と「ネタ対策」になり、以下の図の通りまとめられます。
午後IIの文章対策
文章対策の目標は「合格論文を2時間で書き上げるスキルを身に着ける」ことです。
この目標のために、大まかに以下の対策を実施します。
- 章立てが必要であることを知る
- 15~30分で章立てするスキルを身につける
- 問題文の要求を、論文に反映させるスキルを身につける(重要!)
- 2時間で論文を書き上げる文章能力を身につける
- 論文用の文章テクニックを身につける
- 実際に論文を書く
- (漢字能力)
ちなみに、2時間で必要な文章を構成できるスキルについては、一度身についてしまえば、そう簡単になくなることはありません(一度目の成功が偶然でなければ)。ですので、スキルが身についたら、ネタ対策を中心にすることをおすすめします。
章立てが必要であることを知る
章立ては必須です。
といっても、知るだけなら難しい内容ではありません「1. プロジェクトの特徴とリスクの予兆」「1.1 プロジェクトの特徴」というように、文章の先頭にタイトルを付けるだけです。「第1章 プロジェクトの特徴とリスクの予兆」とか「1-1 プロジェクトの特徴」のようになっていてもかまいません(全体で統一は必要ですが)。
参考書にサンプルの論文があると思いますので「あ、こんな感じで書けばいいのか」と理解できればOKです。
15~30分で章立てするスキルを身につける
「章立てが必要」ということはすぐに理解できるかと思いますが、問題に対して適切な章立てできるかは話が別です。
一度やってみるとわかりますが、設問イの章立てがとくに難しい。設問アとウはパターンが固定されやすいので、比較的容易ですが、設問イだけは、問題に合わせて章立てを細かく修正する必要があります。
また、いくら設問アとウのパターンが決まっているからといって、設問イとのつながりや、問題文の内容に応じて、ある程度の修正は必要です。
ちなみに、設問イについては、設問で問われている内容そのままの順で章立てすると、ストーリーが前後したり、同じ時系列の繰り返しになり、論文の体裁が崩れやすいです。あくまで、文章は時系列にしつつ、問われたことに解答するように配慮する必要があります。
これだけのことを多く見ても30分、できれば20分以下で終わらせる必要があります。実力をつけるためには、何度も実際の過去問にとりくみ、正解例と見比べて「自分のどこが悪かったか?」を検証する必要があるでしょう。
問題文の要求を、論文に反映させるスキルを身につける
実は、これが最も重要なスキルといっても過言ではありません。もちろん、「必要な文字数を書き上げて、具体的なネタを入れて…」という作業も重要ですが、問題文の要求に論文が答えていなければ、高確率で不合格になります。
そして、「問題文の要求に、具体的かつ適切に答えられていれば、内容がショボくても合格できる」のが午後IIの論文です。プロジェクトマネージャとして、プロジェクトを成功させた経験である必要はありますが、その内容はショボくても否定できなければいいのです。
そのためにも、適切な章立てを行い、それを実際の論文に反映させる能力が重要です。
とくに、学習初期の段階では、章立てと論文の内容にずれが生じることは少なくありません。原因は「章立ての甘さ」「せっかく立てた章を、書いている間に無視してしまった」など、いくつかあるかと思いますが、マネジメントの具体的な内容を論述する設問イで、この問題はとくに発生しやすいです。この点は繰り返し演習と自分の失敗原因の分析を行い、修正していきましょう。
2時間で論文を書き上げる文章能力を身につける
章立てができて、内容がブレずに書ければほとんど問題ないと思いますが、実際に2時間で書き上げられる能力を身に着けることも大切です。
文章能力に自信がない人は、とくに気を付けた方がいいでしょう。章立てができても、文章を書くことに慣れていなければ、書きながら悩む時間が増えてしまい、時間が足りなくなる可能性があります。
実際に2時間で書けるようにするために、面倒くさがらず手で書くことは必須です。
また、字数制限に若干足りなくても合格になっている例はあります。もしも時間ギリギリになりそうであれば、最後まで書き上げることを優先しましょう。
ちなみに、ネタと自分の中の「こういうプロジェクトを書く!」という方針さえ決まっていれば、2時間で論文を書き上げることはそれほど難しくありません(合格レベルかは別として)。私はシステム開発すら経験がありませんでしたが、6回目の挑戦で1時間21分で書き上げられるまでに成長しました。
論文の文章テクニック
例えば「○○について具体的に述べよ」という内容に対して「具体的には…」というように、採点者にわかりやすく論述するといった具合のテクニックも身につけた方が、より確実な合格を目指せます。
その他にも
- できるだけ定量的な表現を使う(これはほぼ必須)
- できるだけ具体的な表現(役職、部門名、システムの内容など)を使う
- 時系列はわかりやすく明記。論文の流れも時系列で書く
- 問われている内容に対して答える(問われていない内容は必要最低限にする)
- 設問ごとのつながりを意識する
- マネジメントについて論述する(システム開発を中心にしてはいけない)
- 「プロジェクトは失敗した」などの内容は不合格になる
- 「私はプロジェクトマネージャではない」などの内容は不合格になる
といった具合に、記述する際に気を付ける必要がある点はたくさんありますが、このあたりは比較的簡単に理解できるかと思います。
また、具体性を上げつつ書き直しの際の調整もしやすいので箇条書きを入れるのもおすすめです。「具体的には、以下のとおりである…」という前振りから具体例を箇条書きにしていく方法です。
また、箇条書きには「○○までに××を行う」などといった形で、時期や目標値の定量的表現をいれると、具体性がかなり強くなります。その上、万が一前後で書き直しが必要になった場合、箇条書きの項目を増減させて、文章量を調整しやすいところもポイント。
実際に論文を書く
ここまで、ほとんど気を付けるべきポイントをあげてきましたが、それらを身に着けるためには「実際に論文を書く」ことが必要です。
論文を書く内容としては
- 解答例の書き写し
- 解答例をパクって、自作(実際の問題に解答例の記憶を使いつつ挑戦)
- 完全にオリジナルの論文を書く
やりやすさとしては1番から順に難易度が上がりますが、できるだけ早く2か3に取り組むといいです。
論文は実際に考えて解いてみないと「自分に何が足りないか」を理解できません。
逆に、実際に考えながら論文を書いてみれば、論文を書き上げるために足りない知識を身に付けたり、理解を深めることができます。
ちなみに「情報処理教科書プロジェクトマネージャ」に記載されている合格した「読者の勉強方法」では、「2時間で手書きした本数」は半数以上が3本以下ですが、最高で10本の人が2名います(パソコンの作成も含めると最高で18本)。
経験に応じて、手書きする量については調整すると良さそうです。
また、先にも書きましたが「2時間で書くスキル」は一度身についたら、そう簡単には無くなりません。ですので、安定して2時間で書けるようになったら、過去問演習は「章立てができるか? ネタはあるか?」というチェックをメインにするといいでしょう(最後まで解いてしまうと、演習だけで2時間かかってしまうので)。
漢字練習は必要か?
論文ということは、「漢字の練習がどの程度必要か?」という疑問があるかと思います。
結論から言えば「あまり必要ない」です。
というのも、漢字の書き取り問題ではありませんので、ある程度は言い換えが可能です。よく使う「遅延」も「遅れ」などにして減点される可能性はかなり低いですし、平仮名になった分、書く時間が短縮できます。
また専門用語を使うにしても、多くのものはカタカナで表現できるので、あえて漢字を覚える必要性は少ないです。
とはいえ、よく使う「管理」「進捗」などは書けるようにしておきましょう。こだわり過ぎない程度に、漢字については覚えておけば十分です。
短時間で文字数を稼げる表現を意識する
もし文字について考慮するならば「画数が少ない表現を覚えておく」ことがおすすめです。
例えば、以下のような感じです。
- 緊急時対応計画→コンティンジェンシープラン
- 記録・記載→メモ・書く・書きとる
- 利害関係者→ステークホルダー
- 会議→ミーティング
- 重要人物→キーパーソン
また「リーダ」は「リーダー」にするなども、地味ですが、瞬間で1文字稼げます。この程度の差は採点でほぼ重要にならないと思いますが、少しでも安心感を得るために、私は意識的に行うようにしています。
あえてこのような表現を暗記することに集中するべきではありませんが、ある程度自分の中で利用する用語を決めておきましょう。
注意点としては「問題文・設問で使われているキーワードはそのまま利用すること」です。言い換えたら減点とは限りませんが、相手にわかりやすく伝えることの方が優先度は高いので、問題文・設問で使われている言葉は、できるだけ言い換えないようにしましょう。
また、午後I試験では、文字数を短くすることの方が優先されますので、午後Iと午後IIで利用する言葉を使い分けられるようにしておくと、なお有利です。
午後IIのネタ対策
ネタ対策は、文章対策と並行して実施してOKです。というか、文章対策をやっていれば、勝手にネタ対策もできてくると思います。また、文章を書く能力が一度身についたら、学習のメインはネタ対策にすると効率的です(とくにネタの補充)。
ネタ対策は、大きく分けると以下のようになります。
- 質問票の準備
- よくある設問用の準備(内容は3種類)
- 論文本体の準備(手法はおおむね3種類)
- ネタの補充
質問票の準備
午後IIの最初に、プロジェクトの概要を記載する質問票のようなものが登場します。
毎年絶対に同じ内容とはいえませんが、この内容はほぼ変化がありませんので、事前に書くことを決めて、素早く記入できるようにしておくといいでしょう。
記入するべき項目は、「プロジェクトの名称」「業種」「企業の規模」「プロジェクトの規模」「プロジェクトにおける自分の立場」など。詳細な項目については、「情報処理教科書プロジェクトマネージャ」や「ポケットスタディ プロジェクトマネージャ」に記載されています(記入例もあるので、前者の参考書がおすすめです)。
絶対に注意しなければいけないところは
- 自分の立場はプロジェクトマネージャであること(それ以外だとまず不合格)
- 「分からない」は選択してはいけない(プロジェクトマネージャならわかって当然)
- あり得ない規模は書かない(工数と費用が明らかにあってない等)
とくに、私のようにプロジェクト参加経験がないと「あり得ない規模」を判断するのは難しいかと思います。どの程度の規模が妥当であるかについては、記入例や論文の解答例から抽出するといいでしょう。
ちなみに、論文本文の話になりますが、「規模が大きい・小さい」という点は「普段は総工数100人月のプロジェクトが多いが、今回は200人月で大規模だった」というように、具体的な数値を比較することで、読み手が状況を判断できるようにしましょう。
よくある設問用の準備(3種類)
午後II試験の内容は毎回変わりますが、毎回出題されやすい論点が3か所あります。
- 設問アのプロジェクトの特徴(ほぼ確実に出てくる)
- 設問ウの実施内容の評価(かなり高確率で出てくる)
- 設問ウの今後の改善点・残された課題(かなり高確率で出てくる)
こういった「高確率で出てくる内容」については、事前にある程度の文章を作り、暗記しておいた方が効率的です。
もちろん、設問イとのつながりを考えて、本番では多少の修正が必要です。とくに、設問ウについては、問題文に応じて柔軟に変化させる必要があるでしょう。
しかし、事前に書くべき大筋の内容を準備し、本番で若干修正する方法を使えば、文章を記述する時間がかなり短縮できます。また、抜け漏れを防ぐ上でも有利です。
設問アの「プロジェクトの特徴」ついては、ほぼそのまま利用できるものを用意しておくことをおすすめします。
論文本体の準備(手法はおおむね3種類)
先に設問の準備を記載しましたが、論文本体も大筋で用意しておきます。
私が確認した限りでは、おおむね3種類の手法が利用されているようです。
- 1本色々なタイプの問題に対応できる論文を準備し、万が一のため2本程度サブを用意
- 5本程度は論文を準備しておく
- 汎用性が高いパーツを設問に応じて利用できるように複数準備
結局のところほとんどの問題のパターンに対応できるように準備することが目的です。
理想でいえば、それこそ何十本も論文を準備し、あらゆるパターンに対応できることですが、それは学習の量からいって現実的ではありません。ですので、少ない労力でカバーできる範囲を広げることを意識して、準備するといいでしょう。
注意点としては、パターンを用意しすぎて、本番で何を使うか悩まないこと。例えば、登場する部門名を10種類も用意しても無意味です。ステークホルダーマネジメントの問題であっても、10種類も出す必要はありません。必要最低限に絞って迷わず書き出せる状態にすることを優先しましょう。
本番では「どちらかといえば書けそう」という問題を選択し、60点以上を狙えるようにすることが大切です。
ネタの補充
論文試験の中で、やればやるほど合格率が上がりやすいのがネタの補充です。
文章対策で、2時間で合格するためのポイントをおさえた文章を書けるようになっているなら、合格できない理由はネタ不足です。ですので、文章力が十分で、暗記すべき部分が準備ができたら、あとはネタの補充をメインにするといいでしょう。
ネタの補充はおおまかに以下の通り。
- 午後I試験の内容からネタを補充
- 午後IIの解答例のパターンからネタを補充
- 午後IIで章立てのみ行い、書けそうにない問題について調査
- プロジェクトの事例を調べる
まずは1~2番で対応するといいでしょう。
午後Iは午後IIよりは合格しやすいとはいえ、勉強が必要なことは確かです。午後Iの問題は「出題者側が考えるプロジェクトの妥当な成功・失敗例」ですので、これをネタとして午後IIに活かすのは効率的です。
また、午後IIに取り組み始めたばかりの場合「実際にどんな論文を書けば合格できるのか?」というものがわかりにくいので、解答例の読み込みや書き写しを行うと思います。この解答例も、そのままネタとして利用できますので、ネタの補充として利用しましょう。
3番は、主に「文章力が付いたあと」の話です。文章力があるのに章立てに失敗するのは、多くの場合は書くべきネタがないからです。なので、章立ての時点で正解までの道が見えない問題について「なぜ書けないのか?」という点を、疑問点が無くなるまで調査する必要があります。そして、調査結果から自分に足りていないネタを収集すれば、弱点の補強ができるでしょう。
最後に4番の「プロジェクトの事例の調査」。これは程ほどにするといいです。
リアリティを出すために知っておいた方がいいことは確かですし、試験にとどまらない勉強にはなりますが、ストレートに試験勉強に活用するにはやや効率が落ちます。あくまで参考程度に利用し、ネタ集めの中心からは外しておいた方がいいでしょう。
論文で使える「定量的」な表現
文章校正が上手くでき、ネタもあるなら、「具体性」を持たせるため定量的な表現を使いこなせるようにしておきましょう。
もしも、実際のプロジェクトマネージャ・システム開発経験がない場合、なかなか定量的な表現を使うのは難しいかと思いますが、午後Iの過去問や、参考書に乗っている論文例から抜粋していけば、十分対応できます。
以下の記事でも定量的表現の例を掲載していますので、参考にしていただければ幸いです。
論文で「やってはいけない」ポイント
ここまで、論文対策のためにやるべきこと、論文を書く上での考え方をまとめてきました。
一方、論文で「これはやってはいけない」という注意点もあります。
内容については、別の記事でまとめましたので、興味がある方は参考にしていただければと思います。
論文試験用の道具も準備しておく
普段から使い心地の良いシャーペンを持っている人には不要ですが、納得がいくシャーペンを持っていないのであれば、この際、論文試験用のシャーペンを買っておくことをおすすめします。
2種類ですが、論文用でおすすめのシャーペンは別の記事で掲載しています。ちなみに、価格はどちらもAmazonで400円程度です。
まずはPMBOKの全体像の暗記がおすすめ
午後IIに限った話ではありませんが、まずはPMBOK第6版の全体像の暗記をしておくことをおすすめします。
というのも
- プロジェクトの流れがわかると、文章の流れも構成しやすい
- 問題文がどの領域についての内容か見抜きやすい(明言されていない領域が組み合わされていることがある)
- そもそも、自分が何を勉強しているか・何を勉強すべきかを把握するため
といった理由です。
試験全体の内容を大雑把に把握することは、プロジェクトマネージャ試験に限らず重要なことですが、とくにプロジェクトマネージャ試験の場合はPMBOKを全体の把握に利用すると効果的です。まとめるとこんな感じ。
そこそこ項目数はありますが、早い段階でこの内容は丸暗記するようにしましょう。
暗記用として、簡易版をまとめてみましたが、それぞれの関係性も含めて確認するのであれば「情報処理教科書プロジェクトマネージャ」に内容が記載されています。気になる方は参考にしていただければと思います。
また、午後II以外の対策については、以下の記事にまとめましたので、興味があるかたは参考にしていただければ幸いです。