応用情報技術者試験13のステップ ー事前調査から資格の活用までー
この記事では、主に以下の内容を中心に解説します。
- 応用情報技術者試験の勉強計画の立て方
- 応用情報技術者試験にかかわる各種日程
- 応用情報技術者試験受験後の流れ
・試験対策のスケジュールを立てたい人
におすすめの記事です。
- 試験日:
4月第3日曜(春期)
10月第3日曜(秋期) - 申込日:
1月中旬~2月中旬頃(春期)
7月中旬~8月中旬頃(秋期) - 合格発表:
6月中旬頃(春期)
12月中旬頃(秋期) - 試験時間:
9:30~12:00(150分)
13:00~15:30(150分) - 受験料: 5,700円(税込)
- 合格基準:午前・午後共に60点以上(難易度により前後する可能性あり)
- 受験資格:なし
- 想定勉強時間:350~450時間(未経験から安全に合格を狙う場合)
- 公式サイトはこちら
ステップ1:応用情報技術者試験について事前調査を行う(5~10時間)
どの試験でも同様ですが、最初に事前調査を実施します。
応用情報技術者試験の場合、やや試験の内容が特殊(午前・午後にわかれる、選択式問題があるなど)ですので、事前調査には若干時間を多めにとった方がいいでしょう。10時間でも足りないと思う人は、更に多めにとってもOKです。
一番の注意点は「中途半端な事前調査で勉強計画を立てない」ことです。中途半端な調査で学習スケジュールを立ててしまうと、試験までに必要な学習が完了しない可能性があるため、注意しましょう。
試験概要や難易度を把握する
事前調査として、まずは試験の概要を確認しましょう。ここで「自分の受験するべき資格ではない」と判断したら、受験を断念するべきです。
試験概要については、以下の記事にまとめてありますので、参考にして頂ければと思います。
また、試験の難易度・必要な勉強時間を把握することも、事前調査としては重要です。
必要な勉強時間は人によって異なります。
「基本情報技術者に半年前に合格し、実務経験もある。合格出来たらラッキー」という人と、「全くの未経験だけど、次の試験で確実に合格したい」という人とでは、勉強時間は10倍以上差がつくこともあります。
具体的な勉強時間については、実際に問題に取り組んでみないと把握することは困難だと思いますが「世間でいわれている平均が○○時間。短い人だと○○時間」といった具合に確認をすすめるといいかと思います。
試験の難易度については、こちらの記事で紹介していますので、気になる方は参考にしてください。
試験日程
試験日程は春季・秋季の2回があり、以下のようになっています。
- 申込日(インターネット申込みの場合):
1月中旬~2月中旬頃(春期)
7月中旬~8月中旬頃(秋期) - 受験票発送時期:
4月上旬頃(春期)
10月上旬頃(秋期) - 受験票再発行時期:
4月中旬頃(春期)
10月中旬頃(秋期) - 試験日:
4月第3日曜(春期)
10月第3日曜(秋期) - 合格発表:
6月中旬頃(春期)
12月中旬頃(秋期) - 合格証書発送時期:
7月上旬頃(春期)
1月中旬頃(秋期)
試験日以外の日程については、若干前後する可能性がありますので、シラバスなどで確認して頂ければと思います。
受験のタイミングについては、自分のおかれた状況にあわせて考えてみるといいでしょう。「年度末は仕事が忙しくて時間が取れない」というのであれば「秋季試験」を目指すといいでしょうし、「春休み期間で、大学の授業の復習に勉強したい」というのであれば「春季試験」といった具合です。
必要な時間を確保できるよう、スケジュールをたてる
必要な勉強時間が把握できている人は、具体的な試験までのプランを立ててみましょう。
プランの立て方としては、おおむね以下の二択になると思います。
- 1日の確保できそうな勉強時間から、必要な勉強が完了する試験日を定める
- 試験日までの残された日数から、1日平均の勉強時間を決める
多くの場合、いつ受験しても問題ない人は①番。受験日が決まっている人は②番となると思います。
個人的には「いつ受験しても問題ない人」についても②にした方が「試験の先延ばしを考えにくく、集中して勉強に取り組みやすい」というメリットがあり、おすすめです。ただし「試験まで1ヶ月切っている」という状況で完全な未経験の人が合格しようとしても、時間に余裕がない限り難しいかと思います。
ステップ2:学習方法を選択する(0~5時間程度)
学習方法は、大きく分けて2通りです。
- 独学での合格を目指す(参考書・アプリなどを利用する)
- 通信講座・予備校などのスクールで合格を目指す
私のおすすめは①番の独学です。費用は圧倒的に安上がりですし、自分の好きな学習スケジュールを柔軟に立てやすい面で、独学の方が優れているからです。また、応用情報技術者試験については、模擬面接や論文の添削なども不要ですので、予備校に通う価値があまり高くないと判断しました。
②番のスクールは費用が高額になってしまう(比較的安い通信講座で4万円弱)ため、あまりおすすめできません。ただし、合格までの勉強時間を短縮できるのであれば、コストパフォーマンスが高いことも確かです。「合格まで40時間以上削れる」と思ったら、通信講座・スクールを利用して学習した方がお得な可能性もあります。
もちろん、会社や大学で専用の講座・授業があれば、それを利用するのもアリです。重要なのは「しっかり知識を身につけて、合格すること」です。
ステップ3:勉強を実施する(20~450時間程度)
勉強時間については、試験日から半年程度の期間における勉強時間を想定しています。「1年以上前に学習した」という場合は、想定より勉強時間が長くなる可能性が高いです。
先にもふれましたが、勉強時間については事前知識と合格する確率から、かなり幅広く見積もることができます。
「基本情報技術者試験に合格したばかり。実務経験あり。大学でも学習してる。合格出来ればラッキー」と好条件+合格率が低くてもいいのであれば、直前に20時間程度の勉強で挑戦しても構いません(0でも合格できないとはいいません)。
一方、「勉強が得意ではない。IT関連の知識も日頃から使ってない。でも、確実に合格しないとまずい」などという人であれば、直前の期間とあわせて400時間以上は欲しいところです。人によっては、いくら効率よく勉強しても400時間以上かかると思ったほうがいいでしょう。
試験対策の詳細については、以下の記事にまとめていますので、気になる方はご確認いただければと思います。
この記事では、簡単に学習の流れをまとめ、解説します。
勉強開始直後は、午前対策から始める
まず、勉強開始直後は午前対策から始めてください。
午前試験の過去問で6割り程度が安定するくらいの基礎知識が固まってこないと、午後試験の問題は学習しても意味がわからず、無意味に時間を使ってしまう可能性が高いです。
勉強方法としては、過去問だけでもOKです。私は多くの人に過去問から勉強するようアドバイスしています。
ただ、自信がない人については、テキストを一読してから過去問に挑むのも悪い選択肢ではありません(人によっては、過去問の解説文だけでは理解できないため)。テキストから始める方の場合、テキストを一読して出題内容を何となく把握できたら、あとは辞書代わりにして、過去問演習に集中しましょう。
午後試験の選択する科目を絞り込む
午前試験の問題に慣れ、基礎知識がついてきたら、午後試験の科目選択を行います。
なぜこのタイミングで行うかというと「基礎知識がないと、午後試験は歯が立たず、自分にとって得な科目(点を取りやすい科目)がわからないから」です。
午前試験の過去問で、最低でも6割以上の点が取れるようになったら、一度午後試験の問題を解いてみて、得意な科目を確認しましょう。
この際「公表されている正解率から、同程度の正解率の問題を選択すること」をおすすめします。とはいえ、あくまで「正解率は難易度ではない」ので、参考程度にしてください。
また、可能であれば学習する過去問が「頻出のテーマであるか」も確認した方がいいです(出題頻度のわかる参考書はこちら)。稀にしか出ないテーマで高得点を出せても意味がありませんので「自分が得意だと思った問題は、どの程度出題されるのか?」を確認してから科目を選択すると効果的です。
ちなみに、得意科目を測定せずにおすすめ科目を上げるなら、以下のようになります。
- プログラマ・システムエンジニア:「プログラミング」「組込みシステム開発」「データベース」「ネットワーク」
- 未経験・国語が得意の人:「経営戦略」「プロジェクトマネジメント」「サービスマネジメント」「システム監査」の文章読解科目。未経験向け技術分野なら「データベース」「ネットワーク」
勉強時間を午後試験に偏らせる
応用情報技術者試験の難関は午後試験です。ですので、午前試験である程度知識がついてきたら「勉強時間は午後試験用」にできるだけ偏らせていきます。
忙しい人は、午前試験対策は通勤・通学電車などのスキマ時間に絞り込み、まとまった時間は午後試験対策用にしましょう。
とくに「午前試験の過去問で9割とれるようになってきた」人は、午前試験は点数を落とさない程度の学習だけに切り替えてOKです。残った時間は午後試験につぎ込みましょう。
コラム:公表されている正解率について
じつは、午後試験の科目の公表されている正解率については、ものすごい偏りがあります。
平成21年春~平成30年秋の試験で確認すると、「正解率が高い」回数がトップの「プログラミング」は17/19回の確率で「正解率が高い」となっています。一方「経営戦略」については2/19回しか「正解率が高い」となっておらず9/19回は「正解率が低い」となっています。
では「プログラミング」は「経営戦略」と比べて圧倒的に簡単なのか? 私はそうは思いません。
正解率トップの「プログラミング」を選ぶ人はどんな人でしょうか? ほとんどの人が「趣味でプログラミングをやっている」「実務でプログラミングをやっている」人だと思います。
一方低いものは「経営戦略」「プロジェクトマネジメント」「データベース」など。これらの正解率が低い科目は、どれも「未経験者・初心者が優先的に選択する科目」です。つまり、失礼ないいかたをするなら「そもそも選択している人たちのレベルが低い」といえます。
もちろん、この考えだけでは「プログラミング」が簡単ではない証拠とはいえませんが、あまり「正解率の高い・低い」に惑わされないようにしましょう。
ステップ4:試験の申込(0~2時間程度)
試験の申し込みは忘れず実施しましょう。「受けてみようかな」といいだした時には既に締め切りという友人・知人がたまにいます。
多くの人の場合、勉強を開始した後に申し込みをするかと思いますが、短期合格を目指す人の場合、先に申し込んでから勉強という流れになるかと思います。ここを忘れると、そもそも受験できませんので注意しましょう。
申込期限については、インターネット申し込みの方は若干遅いです。手間も考えると、特別な事情がなければインターネットで申込しましょう。
また、学校などで団体での申込を行えば、受験料が割引かれる場合もあります。この場合、申込期限が通常と異なるかと思いますので、事前に確認しておきましょう。
ステップ5:受験票を受け取る
受験票が届くのは、受験のある月の上旬頃です。注意点は以下の通りです。
- 受験票がないと受験できない
- 受験票には写真の添付が必要
- 受験票に切り取って保管する部分がある(受験番号とパスワードの控え)
- 受験票が届かない・紛失した場合の再発行期間がある
受験票が届かない場合、再発行してもうらことが可能です。再発行の期間については、おおむね受験票の発送から5日後から10日間となっています。カレンダーなどに書き込み、忘れないようにしておきましょう。
受験票の再発行方法や、問い合わせ先については、IPAの案内書の「応募者への注意事項」に記載されていますので、そちらをご確認いただければと思います。
ステップ6:試験前日の勉強(0~10時間程度)
午前・午後試験両方にすでに慣れていると思いますので「間違えやすい用語・午後試験の選択科目の用語」を中心に、用語の確認・暗記に集中するといいでしょう。
落ち着いて試験に挑みたいのであれば、実際の試験と同じスケジュールで予行演習をしてもいいですが、何度も予行演習をするよりは、間違えそうな用語を優先して潰した方が、点数が上昇する可能性が高いです。
ただし、超短期で挑む場合は、午後試験対策に集中することをおすすめします(たぶん午後試験に慣れてないと思うので)。
ステップ7:試験前日の準備(0~2時間程度)
試験前日には、持ち物もしっかり確認しておきましょう。平成31年春季試験の案内書では、机上に置けるものは以下のとおりです。
机上に置けるものは次のものに限ります。会場での貸出しもできません。
(a)受験票①及び受験票②(受験票②は試験開始後監督員が回収します)
(b)黒鉛筆及びシャープペンシル(B又はHB)
(c)鉛筆削り
(d)消しゴム
(e)定規
(f)時計(時計型ウェアラブル端末は除く。アラームなど時計以外の機能は使用不可)
(g)ハンカチ
(h)ポケットティッシュ
(i)目薬引用:平成31年度春期試験案内書
おそらく内容が大きく変わることはないかと思います。ただ、平成14年度秋期試験から、電卓の機能について、見た目で判断が難しいことから、電卓が却下になりました。いずれ時計もありえるかもしれません。少なくとも、時計のアラーム機能は前日のうちに止めておいた方が安心です。
受験票の証明写真は必須です。万が一、用意できていない場合は前日に準備した方がいいでしょう。スマホを使えばコンビニで印刷可能なサービスもありますので、比較的簡単だと思います。
証明写真の内容については、マスク・サングラスなどの着用は不可となっていますが。背景と服の色が同化している写真については利用不可の記載がありません。たぶん、証明写真は試験官が本人確認に使うだけだと思いますが、念のため背景と同化の写真も避けた方が無難だとは思います。
また、切り取って保管する対象である「受験票①」については、なくさないような場所に保管しておきましょう。合格発表時に受験番号の確認のため必要となります。
ステップ8:試験当日(5~8時間程度)
試験当時のスケジュールは、午前試験が9:30~12:00の150分、午後試験が13:00~15:30の150分。試験時間だけで5時間の長丁場です。
遅刻は30分まで可能となっていますが(平成31年春季試験時点)、当然早めに到着した方が安心です。慣れていない会場(多くは大学)での受験になると思いますので、事前に食事を用意しておくくらいの余裕は持ちましょう。
午前と午後の間は1時間。午前試験を早めに切り上げて、食事と用語チェックにつかうといいでしょう。
ステップ9:解答速報
解答速報については、午前と午後で発表のタイミングが異なります。
IPAが発表する「過去問題(問題冊子・配点割合・解答例・採点講評)」では、午前試験の解答速報は基本的に当日中に発表されますが、午後試験については2ヶ月近く後、合格発表の直前となります。
TAC、iTEC、資格の大原などのスクールでも解答速報を行っており、こちらは数日~1週間程度での発表が多いようです。午後試験については、スクールで発表している解答速報を利用した方が早く確認ができるでしょう。
ステップ10:合格発表
合格発表は、受験日の概ね2カ月後になります。
受験番号や紹介用のパスワードについては、切り取って保管してある「受験票①」に記載されていますので、そちらを利用することになります。
もし、控えをなくしてしまった場合は、IPAへ調査依頼をすることができます。ただし、調査依頼は実施可能な期間があり(概ね合格発表から4ヶ月)、調査には1週間ほどの時間がかかります。紛失してしまった方は早めに申請を行いましょう。
ステップ11:合格証書の受け取り
合格証書の発送は、合格発表から2週間程度後となります。
合格証書は再発行が不可となっています。万が一、紛失してしまった場合は、代わりに「合格証明書」であれば発行してもらうことができます。合格証明書の発送タイミングとしては、申請書が到着し、入金が確認されてから1週間程度後となります。
「合格証書」と「合格証明書」の詳細や、申請書については、以下のIPAのホームページをご確認ください。
ステップ12:採点講評の発表
合格証書の発送から1週間程度後に、午後試験の採点講評の発表があります。
自分が間違えた問題の正解率など、講評内容などを確認して勉強にいかしましょう。
また、不合格であった場合は、今後の学習のための分析として、採点講評を活かすようにしましょう。出題者の意図や、正解率の高さなどが確認できます。
ステップ13:履歴書の書き方
就職・転職活動の際には、履歴書に記載しましょう。
記載内容は「令和●年●月●日 応用情報技術者試験 合格」のようなります。合格した年月日については、別途記載する欄があれば、そちらに記載しましょう。
ちなみに、下位資格である「基本情報技術者試験」に合格している場合は、両方記載しておいた方が親切かと思います。
私は上位の「応用情報技術者試験」のみ記載したところ「基本情報技術者試験は受験しなかったの?」と面接で質問されました。応用情報技術者試験が上位資格なので、あえて記載しなかった旨を回答しましたが、相手が尋ねてこない可能性もありますので、両方記載した方が確実です。
合格までに使う時間は、30~500時間ほど
今回まとめた内容から、「応用情報技術者試験に合格するための調査から受験完了までに必要な時間」は、超短期での合格を目指す人でも30時間。初心者の人であれば500時間程度との結果となりました。
応用情報技術者試験は、やや難関の資格試験です。完全な「IT関連の学習初心者」の人はあまり挑まないかとは思いますが、やはり事前知識の程度が大きく影響してしまいます。まずは「自分にどの程度の勉強時間が必要そうか?」を確認するようにしましょう。