文系大学でも合格できる? 応用情報技術者試験の難易度と勉強時間
この記事では、応用情報技術者試験の合格に必要な勉強時間や難易度を中心に解説します。
・勉強計画を立てたい人
におすすめの記事です。
応用情報技術者試験そのものについて、詳しい内容を確認したい人は以下の記事をご参照ください。
結論。応用情報技術者試験の勉強時間と難易度は?
- 勉強時間は、短い人なら業務未経験・文系大学でも100時間未満
- ただし、多くの人は基本情報技術者試験合格から200時間程度は必要
- 経験者でも100時間程度は確保したい
- 一般的には、難易度は難関に区分される
- 午前試験だけなら難しくない。難しいのは午後試験
- 条件がマッチすれば、未経験でも基本情報技術者試験と難易度に大差はない
応用情報技術者試験の勉強時間は?
ここでの「勉強時間」は、「試験の直近1年程度で行った、応用情報技術者試験用の勉強時間」とします。「数年前にチャレンジした」「学校で勉強した」などの勉強時間は含めません。
- 50時間未満:学習経験があり現在も学習中。または基本情報技術者試験に合格したばかりの人は、合格できる可能性がある。ただし、合格率は高くない。
- 50~100時間:学習経験があり現在も学習中。または基本情報技術者試験に合格したばかりの人は、勉強効率次第で合格率は十分あるが安定しない。完全に学習経験が無い場合、合格率は低い。
- 100~200時間:学習経験があり現在も学習中。または基本情報技術者試験に合格したばかりの人が、十分に合格を狙えるライン。完全に学習経験が無くても、効率次第では合格できる可能性はある。
- 200~300時間:完全な未経験でも、効率が良ければ合格を狙える可能性は高い
- 300~400時間:完全な未経験でも、大きく勉強方法を間違えなければ安定して合格が狙える
- 400時間以上:完全な未経験で勉強方法を間違えても合格率は高い
未経験者の勉強時間について
未経験の定義として「趣味でプログラミング経験がある」とか「PC自作が趣味」とか「サイト運営をやってる」という人は除きます。本当の意味で「IT関係は未経験・学習経験なし」の人の場合の勉強時間について、ここでは私の考えを紹介します。
未経験の場合、確実な合格を目指すなら300時間以上は確保したいところです。
基本情報技術者試験が150~200時間程度。基本情報技術者試験合格から安定して応用情報技術者試験を合格できるのが150時間前後だと私は考えています(世間的にもだいたいこの程度の数値がよくいわれます)。
一気に応用情報技術者試験を目指す場合「プログラミング」や「アルゴリズム」に対する理解は基本情報技術者試験レベルより劣っていても合格できるため、勉強時間が短縮できる可能性は高いです。
しかし、最初からやや高度な内容を学ぶ必要があるため、場合によっては勉強の手戻り(何時間も勉強した後に、結局基本情報技術者試験レベルから勉強をしなおすとか)が発生する可能性もあるため、総合的に考えて、私は300時間と見積もっています。
短期合格を狙う場合、極端な話なら100時間未満でも可能性はあると思いますが、本当に「未経験」の人が合格するなら、学習効率を高くしてもギリギリのラインです。短期合格を狙う場合でも、未経験であれば200時間は確保するようにした方が無難です。
基本情報技術者の合格者・情報系大学生の勉強時間
勉強時間は150~200時間程度で安定して合格が狙えると考えています。ただし、この時間で安定して合格させたいのであれば、勉強方法を間違えてはいけません(とくに午前と午後の勉強の比率)。
応用情報技術者試験はかなり幅広い範囲の知識が問われます。基本情報技術者試験合格者や情報系の大学生は、この広範囲の学習が既にできているため、勉強時間を大きく下げられる可能性は高いです。
「合格できればラッキー」というレベルでいいのなら、勉強時間は50時間程度で午後試験中心の勉強を行い、挑戦してみてもいいでしょう。実際「高度情報処理技術者試験」合格から3年半が経過し、知識がほとんど抜け落ちた自分でも、応用情報技術者試験の午前は60点が取れました(あまり安定はしませんが…)。
午後試験は「文章読解力で解ける」問題を中心に選択することもできるため、出題形式に慣れつつ、頻出の用語だけしっかり理解しておけば、50時間でも合格できる可能性はありますの。どうしても短い勉強時間で合格を狙いたいのであれば、大半を午後対策に回したほうが効果的だと思います。
実務経験ありの勉強時間について
実務経験の内容にもよりますが、学習経験(趣味含む)が無いのであれば、短時間で合格を目指す場合でも100時間以上。できれば200時間以上確保した方が安全です。
「実務経験」の方が社会では役立ちますが、応用情報技術者試験は問われる範囲が広いため、専門以外の知識はゼロに近い状態から学習する必要があります。
こうなると、まず午前試験突破のための広範囲の基礎知識をつける必要性がでてきます。そのため「基本情報技術者試験合格直後の人」や「情報系の学生」の人よりも、勉強時間が多くなりやすいと考えた方が無難です。
またIT関連の実務経験でも、色々な内容があり、試験へ影響は大きく変わります。例えば、ネットワークの監視業務の場合、職場によっては「ただマニュアルに処理するだけ」というあまり試験勉強には役立たない仕事もありますので「あまり勉強になってないのでは?」と思う人は、勉強時間は200時間以上確保した方が無難です。
私が合格したときの勉強時間
- 基本情報技術者試験に合格してから、6年経過
- 情報系を専門で学習するのをやめてから、4年程度経過
- 偏差値50未満の情報系の大卒(ただし、成績はトップ)
- PC自作経験以外は、私生活でITはほぼ活かしてない(スマホも持ってなかった)
- 受験は平成27年春期試験(午後試験の選択科目は現在1科目多い。合格率は19.0%で過去2番目に低い)
- 多少ではあるが、資格試験慣れしている
この条件で、勉強時間はおおよそ250時間となりました。
点数で言えば、午前はかなり余裕。午後はやや余裕といったところ(数値が残っていませんが、午前9割弱、午後8割弱程度でした)。
勉強方法は、基本情報技術者試験の失敗(午前を手抜きした)を意識しすぎた影響で、午前試験をやりこみ過ぎてしまったところが反省点。この時間を午後試験に回しておけば、200時間程度まで下げることはできたと思います。
今の試験制度であれば、午後試験の科目数も1つ減らせるので、効率化とあわせて150時間程度での合格も可能かと思いますが、安全に合格を狙うならやはり200時間は欲しいところだと思います。
勉強時間を見積もるための方法
雑な方法ですが「自分の勉強時間がどの程度か?」を見極める方法があります。
それは「午前の過去問を解いてみる」こと。これで「60点以上とるなら簡単そうだ」と思う人は「基本情報技術者試験合格直後の人」と同等以上と見積もることが出来ます。また、点数は取れなくても、解説を読んだときに「これなら直ぐ覚えられそうだ」と感じる人も、同程度の勉強時間で合格できるかと思います。
更に「実務経験があり、午後試験を解いたら得意分野は余裕だった」という人であれば、更に勉強時間を削減できる可能性が高いです。
過去問は応用情報技術者試験の学習で必須となる為、早い段階で一度取り組み、自分の実力から勉強時間を測定してみることをおすすめします。
コラム:勉強時間は基礎知識で大きく変わる
あらゆる試験でいえますが、勉強時間は基礎知識で全然違います。
未経験者という人でも「趣味でアプリ開発経験があります」とか「サイト運営してます」って人と、「スマホなら使うけど、パソコンなんて使わない」とか「スマホも携帯も持ってない(受験直前までの私です)」なんて人とでは、当たり前ですが全然知識量が違います。
ですので「実務経験があるか」「情報系の学校に通っていたか」よりも「過去問を解いたときの手ごたえがどうだったか」で勉強時間は見積もった方がより正確です。未経験・文系の人も、一度過去問に挑戦してから、受験を考えていただければと思います。
応用情報技術者試験の難易度
偏差値・大学で考える、応用情報技術者試験の難易度は?
まず念のためですが、「偏差値○○の大学に合格するのと同じ難易度」とか「偏差値○○の学生なら合格できるレベル」という考え方はあまり意味をもたないと思います(勉強時間は人によるし、偏差値40程度の大学もトップクラスの学生なら余裕で合格できるので)。
その上で学生・新社会人が取得する場合、偏差値で考えるなら、応用情報技術者試験は55~60と考えています。
理由としては以下の通りです。
- 応用情報技術者試験は、既に働き始めて数年経過した人が取る人が多い
- 会社からも若いうちは評価を得られる
- 難易度はやや高い。だが、未経験でもしっかり勉強すれば取れる
実際の問題の水準は?
試しに解いてみましょう。長文は厳しいので、午前問題から数問紹介します。
SRI(Socially Responsible Investment)を説明したものはどれか。
ア:企業が社会的責任を果たすために,環境保護への投資を行う。
イ:財務評価だけでなく,社会的責任への取組みも評価して,企業への投資を行う。
ウ:先端技術開発への貢献度が高いベンチャ企業に対して,投資を行う。
エ:地域経済の活性化のために,大型の公共事業への投資を積極的に行う。平成28年春期 問74
なんと! 親切にも英語で「Socially Responsible Investment」と書いてあります。英語の意味さえわかれば「たぶん答えは「イ」!」と回答できますね。よくわからない単語ではありますが、確か欧米では近年流行ってきてる投資の考え方だったかと思います。
タイプはストラテジ系。サービス問題だと思います。
システム開発の進捗管理などに用いられるトレンドチャートの説明はどれか。
ア:作業に関与する人と責任をマトリックスで示したもの
イ:作業日程の計画と実績を対比できるように帯状に示したもの
ウ:作業の進捗状況と予算の消費状況を関連付けて折れ線で示したもの
エ:作業の順序や相互関係をネットワーク図で示したもの平成30年秋季 問52
マネジメント系の問題です。さっきの問題よりは難しいですが、「トレンドチャート」という言葉から、なんとなくイメージすると「ウ」っぽいです(そんな当て方はしてはいけませんが)。また「進捗管理」という言葉から「ア」の確率は低いといえるでしょう。
ちなみに、アは責任分担表。イはガントチャート。エはアローダイアグラムなど。この手の進捗などを管理するツールについては比較的よく出てきますので、単純に暗記してしまいましょう。得点源にできます。
クラスCのIPアドレスを分割して,10個のサブネットを使用したい。ホスト数が最も多くなるように分割した場合のサブネットマスクはどれか。
ア:255.255.255.192
イ:255.255.255.224
ウ:255.255.255.240
エ:255.255.255.248平成20年春期 問53
テクノロジ系の問題です。詳細な分野ならネットワーク。
「クラス」と「サブネットマスク」に関する知識がないと、完全に運ゲーです。私はネットワークエンジニアなので、はずしたら恥ずかしいレベル(でもよくネットワークの問題をはずします)。ちなみに、答えは「ウ」です。
フェールセーフの考え方として,適切なものはどれか。
ア:システムに障害が発生したときでも,常に安全側にシステムを制御する。
イ:システムの機能に異常が発生したときに,すぐにシステムを停止しないで機能を縮退させて運用を継続する。
ウ:システムを構成する要素のうち,信頼性に大きく影響するものを複数備えることによって,システムの信頼性を高める。
オ:不特定多数の人が操作しても,誤動作が起こりにくいように設計する。平成28年春期 問16
これも頻出の用語系問題。テクノロジ系です。
「フェールセーフ」という言葉から、なんとなく意味が推測しやすいかと思います。ネットワークエンジニアかつ情報セキュリティスペシャリスト試験の合格者として、はずすわけにはいけません。答えは「ア」です。個人的には「オ」の「フールプルーフ(ようするに、バカ耐性)」がお気に入りの単語です。
このように、午前問題は「言葉の意味から推測して解ける問題」も多いですし、それ以外も「よく出てくる用語の問題」や「論理的に考えれば解ける問題」もあります。
ただし、難解な問題・用語、新しい分野からの出題(仮想通貨に関する問題とか)も出てきます。無勉強で合格可能とまではいいませんが、未経験でも「けっこう簡単に点が取れそうだ」と思える人も多いかと思います。
実体験から判断した、ITパスポート、基本情報技術者、高度情報処理技術者との難易度の差
わたしの経験から、それぞれの試験の難易度は以下の通りです。
- ITパスポート試験:応用情報技術者試験の午前問題で6割取れるなら、勉強なしで8割はとれる
- 基本情報技術者試験:情報系大学(偏差値50弱)で1年真面目に勉強していれば、50時間程度の勉強でも合格できる
- 応用情報技術者試験:実務経験ありでも楽ではないが、未経験でも真面目にやれば合格できる
- 高度情報処理技術者試験:応用情報技術者試験の合格者でも、明確に「難関」といえる。しかし未経験でも合格は可能。試験によって難易度や攻略方法は異なる。
ITパスポート試験の難易度
残念ながら、私はITパスポート試験を受験したことがありません。
そこで「応用情報技術者試験の午前問題で6割程度(現状)」の私が、試しにITパスポート試験の過去問を20問解いたところ、ちょうど80%の正解率となりました。楽勝ではありませんが、十分無勉強で合格ラインといえます。
強いていえば、ストラテジ・マネジメント系の用語が思ったより難しかったです。基本情報技術者試験や、応用情報技術者試験の勉強過程で見た覚えはありましたが、もうだいぶ前に勉強したので忘れていました。
基本情報技術者試験
私が基本情報技術者試験に挑んだときと、応用情報技術者試験に挑んだときでは、時間と能力に大きく差がありました。ですので、個人の体験からは比較が若干難しいです。
しいていえば「完全に情報系から離れていた自分(情報系から4年程度離れ、行政書士試験とか環境計量士(濃度)とかやってた頃)でも、基本情報技術者試験より応用情報技術者試験の方が難しい」と感じました。
私が基本情報技術者試験を受験したときは、大学で1年学習し(偏差値50弱レベルの授業。ただし、自分の成績はトップクラス)、プラス50時間程度の勉強で余裕を持って合格できました。
一方、知識をほぼゼロからつけなおして応用情報技術者試験に挑んだときは、250時間程度。午後も余裕があった(7割以上)とはいえ、基本情報技術者試験ほど楽ではありませんでした。
高度情報処理技術者試験
応用情報技術者試験より明らかに難しいです。
応用情報技術者試験の合格から半年後に受験し、勉強時間は250~300時間程度。それでも受験直後は「これは流石に不合格だ…」と思ったほどに厳しかったです(実際には午前は余裕で合格。午後はI、IIともに60点をギリギリ突破して合格)。
ただ、実務経験ゼロでも合格は可能です。私が挑戦したのは「情報セキュリティスペシャリスト試験(今は情報処理安全確保支援士試験に移行)」という、比較的未経験でも合格しやすい試験。当時の私は福祉関係で働いていましたが、合格には達しました。
応用情報技術者試験は難関。でも業務未経験・文系大学卒だって合格できる
勉強時間の項目でもとりあげましたが、ある程度の勉強時間をつめば、業務未経験・文系大学卒でも十分に合格できます。
そもそも「文系=応用情報技術者試験に弱い」という考え方は正しくありません。もちろん、情報系大学卒で学習経験がある人と比べれば不利ではあります。しかし、応用情報技術者試験の難関は午後試験であり、午後の試験は「文系でも理系同様か、むしろ有利な国語の問題」を中心に選択することもできるため、必ずしも圧倒的な差が付くことはありません。
とくに、「プログラミング・アルゴリズムは苦手だけど、文章問題は得意!」という条件にマッチする人であれば、未経験からでも「基本情報技術者試験」と比べて、それほど大きな差はなく合格を目指せます。
応用情報技術者試験の勉強方法については、以下の記事にまとめました。興味がある方は参考にしていただければ幸いです。