【体験談】お寺で短期バイトした際の仕事内容/面接など、リアルを語ります
神社仏閣巡りや、文化や歴史の勉強が好きな人なら、「お寺って、どんな仕事をやってるんだろう?」と興味を持ったことが一度はあるのではないでしょうか。
とはいえ「出家して、僧侶になって、お寺で仕事を経験する」というのはハードルが高いもの。
そこで今回は「誰でもできるお寺の短期のアルバイト」を実際に体験してきましたので、仕事に関する情報や、面接から仕事を終えるまでの内容について語ってみたいと思います。
【結論】お寺の短期バイトまとめ
- 仕事内容はお寺や案件(時期)によって異なる
- 繁忙期には一般人を募集する短期バイトがある
- 申込は「求人サイト」や「お寺に直接」の主に2パターン
- 具体的な業務内容は多岐にわたり、案件によっても異なる
- 時給はあまり高くはない可能性が高い(稼げる案件もある)
- お寺によっては、正社員登用もある(給料は安いそう)
- 月単位で働けるなら、リゾート地の宿坊でも働ける
【前提】働く条件は? お坊さんじゃなくても大丈夫?
まず、前提として「そもそもお坊さんじゃなくても、お寺で働かせてくれるの?」という話について解答します。
これは、厳密にいえば職場・案件によります。なので、申し込み前に必要とされる資格がないかは確認しましょう。
ただし、短期のアルバイトの場合、お坊さんどころか、仏教知識なしでも大丈夫なことが普通です。
実際、私が働いたお寺では仏教知識は一切問われませんでした。集団面接を行った際も、仏教知識をアピールしている人は5人中1人です。
また、私が確認した限りでは、僧侶であることが条件という短期アルバイトは、むしろ見たことがありません。求人サイトを見た限りでは、寺務を手伝う長期の職員であっても、僧侶でなくても働ける職場が普通です。
ただし、儀式(葬式含む)に関わる仕事の場合は、僧侶であることが必要とされる可能性は高いと思います。逆に言えば「お寺の仕事だけど、裏方や接客などの仏教知識が問われない仕事」を探せば、お坊さんじゃなくても働ける案件が見つかると思います。
ある程度の仏教的な精神は求められることもある
僧侶でなくても参加できるとはいえ、お寺で働かせてもらう以上、ある程度は仏教的な精神が求められることもあります。
例えば、私の場合だとこんな感じでした。
- 通勤で本堂の前を通る際は、御本尊に向かって会釈する
- お守りは、御本尊の分身だと思って大切に扱う
- 信者さんやお坊さんにしっかり挨拶をする
とはいえ「商品を大切に扱う」ことや、「お客様や同僚に挨拶する」のは当たり前なので、冷静に考えて仏教関係ありません。ついでに言えば、正月の仕事中は忙しいので「お守りは御本尊の分身」とか意識してる暇ないです。
また「御本尊への会釈は、形式上でもやってくれればいい」との話を先輩職員からされました。また、うっかり会釈を忘れたとしても、それによってクビになるようなことは当然ありませんでした。
お寺の短期バイトの探し方は?
インターネットを利用してお寺の短期バイトを探す方法は、「求人サイト」か「お寺のサイト」の2択です。
ただし、正月の短期アルバイトの場合は、どちらかと言えばお寺のサイトからの募集が多かった印象です。
2023年時点で私が確認できた範囲では、以下のお寺が正月のアルバイトを公式サイトで募集していました。
- 深大寺(東京都調布市)
- 高尾山薬王院(東京都八王子市)
- 狭山山不動寺(埼玉県所沢市)
求人サイトからであれば、文殊寺(埼玉県さいたま市)も、正月のアルバイトの募集を見かけました(ちなみに、2023年は見かけませんでしたが、以前は薬王院の短期バイトも求人サイトで見かけたことがあります)。
また、成田山新勝寺(千葉県成田市成田)は、2019年の求人は公式サイトにありましたが、2023年はインターネットでの募集は見かけませんでした(私が確認した時点で、既に消されてしまった可能性はあります)。
この他、お彼岸の時期には複数のお寺を巡回して清掃するアルバイトの募集もありました。こちらは、アルバイトのPRポイントに「普段は見られない部分にも入れる」とのことが書いてあったので、お寺巡りが好きな方にはおすすめです。
業務内容はどんな内容がある?
これは、完全に案件によります。ただし、案件によって「最初から業務が決まっている」パターンと、「詳細は面接後に確定」というパターンがあります。
例えば、先述したようにお彼岸の時期であれば清掃メインの求人が出ていたこともありますし、お寺を訪れた方への案内をメインとした求人もありました。
一方、「詳細は面接後に確定」というパターンの場合は、「事前に業務概要が掲載されているパターン」や「面接時に詳細な業務内容を教えられるパターン」があります。
あくまで一例ですが、私が確認した限りでは、以下のような業務がありました。
- お寺の掃除
- 参拝客への接待・誘導
- 御札御守などの授与(物品の販売のこと)
- 御祈祷・お護摩などの受付
- 飲食店の業務(接客・配膳・片付けなど)
- 車両の誘導
- 筆耕(お札を書く仕事)
- 寺務(行事の冊子準備や、給与計算などの事務など)
この業務内容からもわかると思いますが、短期で僧侶以外を雇ってくれるアルバイトでは、難しい仏教知識が問われる可能性は低いです。むしろ「仏教的な体験をしたい!」と思ったら、あまり仏教と関係ない仕事になったというパターンもあり得ることを注意した方がいいでしょう。
時給はどのくらい稼げる?
ぶっちゃけると、あまり時給は高くないお寺が多いです。
例えば、私の体験した正月の短期アルバイト募集は最低賃金でした。また、清掃のアルバイトも、私が確認した限りでは最低賃金と大差ありませんでした。
そんなわけで、交通の便がいいわけでもないお寺は、「薄給&通勤キツイ」のコンボで人手不足になりがちです。
ただし、ネット情報では「学生でもできる筆耕のアルバイト(お札を書く仕事)で、時給2000円近かった」という口コミも確認できました。
また、2023年の深大寺の正月アルバイトでは時給が勤務日によって変動し、1120~2060円(23歳以上は60円更にアップ)となっていましたので、正月のアルバイトでも時給が高いこともあります。
実際にお寺でバイトした体験
ここからは、私が実際にお寺で短期のアルバイトをした体験について記載します。
あくまで私が体験した例ですので、業務内容は、お寺・案件・時期などにより、大きく変動する可能性がありますのでご注意ください。
アルバイトの申込
まずは、アルバイトの申し込みを行います。
公式サイトに求人が掲載されている場合は、多くの場合「お寺に電話(たまにメールもある)し、後日必要な書類などを持って面接」という形になります。
私は電話で申込し、その際に「面接日程の詳細」と「持ち物」の指示を受けました。
ちなみに、私の場合の当日の持ち物は証明写真のみ。履歴書は、現地で代わりになるエントリーシートを作成することになりました。
面接の内容
実際に体験した面接の内容について、大雑把な流れをまとめると以下の通りです。
- 本坊に集合する
- 本坊で配られたエントリーシートに記入し、記入が終わったら待機
- 5~10名ほどが順に呼ばれ、集団面接を実施
- 面接修了後、帰宅
まずは、集合場所である本坊に到着。面接時の服装はとくに指定はなく、私が見た限りでは、私も含めて全員私服で面接に来ていました。とはいえ、「派手な服装」や「露出の多い服装」は、お寺という性質を考えるとNGだと思います(一般的なアルバイトもNGだと思いますが)。
エントリーシートの内容は、個人情報の記入を除くと「志望動機」「自己PR」「勤務可能日」「希望業務」くらいです。私の場合、勤務可能日は年末年始の忙しそうな6日間は申請しましたが、その後の勤務については申請しませんでした。
ちなみに、志望動機・自己PRの欄に実際に私が書いた内容は「過去にお寺で色々な体験に参加し、歴史の勉強などをしている内に、お寺での仕事に興味を持ちました」という当り障りのないものでした(自己PRは欄が小さいので書かなかった)。
今回のエントリーシートで、アピール以外に重要なポイントは「希望する職種があるか?」というところ。もしも、やってみたい業務がある場合は、ここでチェックを付けた方が無難です。というのも、私が働いたお寺では、若い人の大半は接客系(主にお守り・縁起物などの販売スタッフ)に回されていました。希望が通るかはわかりませんが、若い人で裏方系をやってみたいなら、希望にチェックを付けた方が良かったかと思います。
エントリーシートに記入した後は、5名ほどが本坊に到着した順番に呼ばれていき、集団面接が行われます(最初だけ、多めに呼ばれたので、面接会場は複数あったかなと思います)。人数が多かったため、私は到着から1時間くらいは面接まで待つことになりました。
集団面接で聞かれた内容は「志望動機」と「自己PR」であり、エントリーシートと同じ内容でした。私は、「志望動機」についてはエントリーシートに記載した内容を具体例で掘り下げ、「自己PR」については過去の仕事で行った業務効率の改善(自動化)について話しました。
採用試験はどのくらい厳しいか?
これは、あくまで私が面接した年の、私が働いたお寺の話ですが、バイトの採用はかなりゆるいです。
年末年始の2日しか働けない人でも雇われていましたし、長期の職員に聞いたところ「面接を受けた人のほぼ全員採用」だったそうです。
というのも、繰り返しになりますが私が働いていたのは「交通の便は悪いが、観光地にあるお寺」です。そのため、観光客は集まりますが、労働者が集まらず、人手不足になりがちなのです。
後述しますが、こういったお寺では、正月だけのバイトのつもりが長期バイト(正社員)に変化するパターンもあります。
業務内容はどうだったか?
私の場合、初日の業務内容はだいたいこんな感じでした。
- 本坊に集合する
- 本坊で業務内容を知らされ、上から羽織る作業着を渡され、各班にわかれる
- 班ごとに移動して、移動先で先輩職員から教えて貰いつつ業務開始
- 残業もなく、むしろちょっと早めに終了
面接を行った本坊に集合後、初めて自分の業務内容を知らされ、業務ごとの班に分かれて行動するようになりました。
集まったアルバイトは少なくとも30人以上はいたと思いますが、自分の班は5名。他の班も多くて5名くらいでした。
私が配属されたのは「お守り・縁起物授与」の業務。簡単に言えば、お守りなどを販売している場所の店員でした。
「お守り・縁起物授与」の業務内容はおおむね以下の通りで、二日目以降は、概ねこれらの対応の繰り返しになりました。
- 売物の補充
- 販売の接客
- 参拝客からの質問に答える
- ゴミ捨て
- その他の雑務
売物は「お守り」「縁起物」「お茶」「お菓子」「お線香」などがあり、陳列されている数が減って来たら、カウンター後ろにある棚や段ボールからどんどん補充していきます。
お守りや縁起物は一度に陳列できる個数が少ないものもあり、減っていないかはこまめにチェックが必要でした。
また、販売所は通行路に面しているため「参拝客からの質問」もかなり多く来ます。その内容も「お守りの使い方」「境内の道案内」「迷子の相談」「ペットを連れての参拝方法」など多岐にわたり、働き始めた直後は不明点が多いです。ただ、常にベテランの職員が一人はいるように配慮されているので「困ったらベテランの方に相談」という思考で動けばOKで、その点は助かりました。
その他にも色々な雑務があり、例えば「柱から外された古い縁結びの紐から、5円玉を外す作業」「職員用の弁当を運ぶ・空箱を返す」「離れた倉庫から売物を持ってくる」などです。
「お守り・縁起物授与」の業務で大変だったこと
実際に「お守り・縁起物授与」の業務で大変だったことは以下の通りです。
- バーコードも値札も無いので、商品の値段の暗記が必要(お守り・縁起物の種類が膨大!)
- 商品によってお金の管理が異なる(税金の処理や、販売してる部署が異なるため)
- 12月31~1月1日は連続勤務になる(休憩時間含めて20時間ほど)
- 慣れたら5日でワンオペだった
まず大変だったのが商品の値段の暗記。バーコードや値札が商品についていないため、大量に商品を持ってこられても瞬時に価格の判断ができないといけません。
一応、価格は数段階になっていて(一部例外アリ)、値段の書かれたリストもあるため、それを見ての確認は可能です。しかし、大まかな価格帯を瞬時に判別できないと、リストの確認時間でお客様の列ができてしまいます。とくに、大量購入されるお客様を対応するときは、素早い値段計算ができないと業務がストップしてしまいます。
ちなみに、お守り・縁起物は数十種類なんて生易しい種類ではなく、むしろ100種類に近いレベルでした。なので、リストのどの位置に購入されたお守りがあるかも多少は覚えておかないと、正確な価格を素早く確定することができません。
また会計の際に問題になるのが「商品によってお金の管理が異なる」こと。よく「坊主丸儲け」と言われお寺は非課税だと思われていますが、正確には宗教活動に該当しない行為は、お寺でも課税対象です。例えば「お守り」「縁起物」の販売は非課税ですが、「お菓子」「お茶」「お線香」の販売は課税対象です(より正確には、状況によりこれらの区分も変化します)。
一応、カウンターは課税対象と非課税対象で分けられているのですが、お客様からしたら「課税対象」「非課税対象」は関係ないため、たまに両方まとめて持ってくるお客様もいらっしゃいます。それをうっかり混ぜないようにお金の管理をするのにはけっこう気を遣いました。
そして、それらを余計に大変にするのが12月31日~1月1日の業務。参拝客が多いだけでなく、大晦日の夜から元旦の夕方まで連続勤務になるため、後半は集中力が大幅に下がります。幸い、私は5年以上夜勤のある業務を経験していたので、体調のコントロールには自信がありましたが、やはりアルバイトさんの中にはこのタイミングの勤務は外していた方もいらっしゃいました。
そして、慣れてきて5日目からはワンオペもありました(バイトが急遽休んだためですが)。二つの会計をわけてワンオペ中に、片方の会計で100円玉が切れ、そんなタイミングで100円のお釣りが必要になる。仕方なく、二つの会計を一旦混ぜてやりくりしたら、帳尻合わせる前にお客様の列ができてしまい……と、頭が混乱してヤバかったです。
働いている人の年齢・性別はどうだったか?
最後に、働いている人の年齢・性別について。
正確な数値は把握していませんが、私が働いたお寺では、短期バイトの4割ほどが学生アルバイトだったと思います。
一方、学生より上の年齢では30~50代までが同数程度といった印象です。20代の社会人や、60代以上の方も若干はいたかと思いますが、それぞれ1割未満ではないかと思います(あくまで目視での確認ですが)。
また、性別は8割くらいが女性で、その点は意外でした。30~50代は女性が多いのも予想できますが、学生バイトも圧倒的に女性が多く、販売スタッフとしては、一緒に働いていた9割近くが女性だったのではないかと思います。
正社員にはなれる?
まさか、正月の短期バイトから正社員になるなんて……と、全くそんな話が来るとは思っていませんでしたが、
「どう? お坊さんの補助やってみない?」
と、唐突に正社員の話を振られました。
しかも、「OK」と言ったら即採用とのことでした(「OK」の人が大量に出たら、その中から選ばれる)。
先にも述べましたが、私が働いていたお寺は「観光地で客は多いけど、交通が不便なので職員は少ない」環境です。結果的に、短期のバイトを雇った時に、正社員にならないか声をかけることがあるのだとか。
ちなみに「お坊さんの補助」を仮にやる場合、全く仏教の知識がなくても、やりながら覚えていけば問題ないとのことでした(あくまで、お寺の職員であって、お坊さんになるわけではありません)。
その他、自分がバイトしていた販売スタッフでも正規の職員になれそうな感じでしたが、長期で働く気はないので遠慮しました。
お寺で短期バイトはいつならできる?
今回、お寺での短期バイトについて、その仕事内容などを自分の経験も含めて解説しました。
お寺の短期バイトの募集は、基本的には繁忙期に行われています。そうなると必然的にお寺で短期バイトができそうな時期は「正月」「お盆」「お彼岸」などの時期となり、その時期少し前くらいから求人サイトや個別のお寺のサイトを確認するのが一番かなと思います。
また、やや長めのアルバイトにはなりますが、観光地の宿坊であれば1~数カ月くらいの範囲で、観光シーズン以外もアルバイトを募集していることもあります(高野山が多い印象です)。
じっくりお寺の仕事を経験しつつ、観光もして、ついでにお金も稼ぎたい場合は、リゾートバイトで宿坊の仕事を探すのもおすすめです。