事務職の入門資格 MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)とは
この記事では、主に以下の内容を中心に解説します。
- MOSの試験制度
- MOSのメリット・デメリット
- MOSの難易度・勉強時間

・MOSの受験予定の人
におすすめの記事です。
MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)とは
MOS(マクロソフトオフィススペシャリスト)とは、マイクロソフトが認定するMicrosoft Officeに関する国際資格です。名前が長いので、略称でMOS(モス)と呼ばれることが多い資格です(2003年までは、Microsoft Office User Specialistと更に長い名称でした)。
特徴としては「Microsoft Office」の基本~簡単な応用までの操作が実践的に学習できること。抽象的な概念などではなく、実践的な操作が学習内容となるため、資格取得のための学習を通して、現場で役立つオフィスソフトの知識を一通り身につけることができます。
日本国内での累計の受験者は420万人以上(2019年1月16日時点)。同一バージョンで所定の4科目に合格した「マイクロソフトオフィスマスター」は85,000人(2019年1月16日時点)を超えています。このことからも、比較的よく知られた資格ということができるでしょう。
日本における運営はオデッセイコミュニケーションです。
MOSの試験制度
試験区分
試験区分は「試験科目(ソフトウェア)」「バージョン」「難易度(一般と上級)」の3種類の要素によって分けられます。
2019年6月5日時点での区分のわけかたは以下のとおりです。
- 試験科目(ソフトウェア)
Word、Excel、PowerPoint、Access、Outlook - バージョン
Microsoft Office 2016
Microsoft Office 2013
Microsoft Office 2010 - 難易度
一般(スペシャリスト)レベル
上級(エキスパート)レベル
※上級レベルがあるのはWordとExcelのみ。
※Microsoft Office 2013の上級は、Part1と2の2科目に合格が必要
例えば、Microsoft Office 2013のExcelについて、上級レベルを取得したいのであれば「Excel 2013 エキスパート Part1」と「Excel 2013 エキスパート Part2」に合格する必要があります。
ちなみに、2010のバージョンは2020年3月に終了予定です。
受験料
最新の受験料については、公式サイトの「試験科目の一覧表」から対象の科目を選択すると確認できます。
試験制度次第で変更の可能性はありますが、2019年6月5日時点で開催されている内容は以下のとおりです。
- 難易度が上級(エキスパート):1科目11,800(税別)
- 難易度が上級(エキスパート)でバージョンが2013:1科目9,800円(税別)
- 難易度が一般(スペシャリスト):1科目9,800円(税別)
- 学割:MOS 2010以外に適用可能。2,000円引き
試験日程
試験はCBT方式で随時行っています。
また、毎月1~2回、全国一斉での試験も行っています。

試験の方式
出題形式は、MOS 2013より変更が繰り返されており、バージョンによって大きく異なります。大雑把に分類すると、以下のとおりです。
- MOS 2016の場合:複数の課題に対して、複数の設問が設けられる形式
- MOS 2013の場合:1つの課題を指示通りに進めていく形式
- MOS 2010の場合:1問1答の小問形式
MOS2010の場合は独立した小問形式であるため、全くわからない問題があっても次の課題に影響がでません。
一方、MOS 2013の場合は1つの課題を完成に向けて進めていく形式であるため、序盤でつまづくと、後の問題にも影響が出てきます。
MOS 2016はMOS 2010とMOS 2013の間のような形式です。
こういった事情から「合格のしやすさであれば、2010が一番高い」といわれます。知識が部分的に欠けていたとしても、全体でカバーしやすいため、短期の学習でも合格できる可能性が高いです。
一方、2013は難易度が高めと言われますが、その分実践的な能力はつくかと思います。

受験資格
受験資格はありません(小学生以下の場合は、保護者の同意が必要)。
ただし、CBT方式で何度も受験できるため、再受験にはルールがあります。同じ科目の2回目の受験は前回の受験から1日待つ必要があり、3回目以降の受験は2日待つ必要があります。

受験方法
全国一斉試験と、随時試験によって、受験の流れは少し異なります。
- 試験日・実施地域を確認して決める
- 受験者IDを登録する
- 受験料を支払う
- 申込手続きを実施する(インターネットと郵便の2種類)
- 受験票を受け取る(試験10日前までに郵送される)
- 試験を受ける
- 認定書を受け取る(受験から4~6週間後)
- 試験の申込を行う(試験会場に直接申し込む)
- 受験者IDを登録する
- 試験を受ける(当日、試験結果レポートを受け取る)
- 合格認定証を受け取る(受験から4~6週間後)
MOSを取得するメリット
オフィスソフトの作業効率が向上する
MOSは「Microsoft Officeを使いこなせる能力」を証明する資格です。
「実際にオフィスソフトで使える知識」が習得できるため、見やすい表やグラフ、文章の作成方法や、データの分析方法が理解でき、オフィスソフトで作成した成果物の品質が向上します。
また、オフィスソフトで利用する基本的な知識が全体的に吸収できるため「ネットで検索しながらソフトを利用する」という手間を省くことができます。これにより、作業効率も向上するため、短時間で高品質の成果を上げることができるようになります。
更に、Microsoft Officeの使い方を把握してしまえば、他のオフィスソフトについてもある程度は応用が利きます。詳細は別途調べながら操作する必要も出るかと思いますが「オフィスソフトには、どんな機能があるのか?」を全体的に把握しておくことで、他のオフィスソフトの作業効率も向上するといえるでしょう。
オフィスソフトを使えるスキルの証明
オフィスソフトを使いこなす能力だけを習得したいのであれば、個人でも習得は可能です。
しかし「私はExcelの関数を使いこなせます」というだけでは、相手に具体的な能力の水準を伝えることや、証明することは困難です。MOSを取得するより明確に高いスキル水準がないと、会話だけで相手を納得させるのは難しいでしょう。
その点。MOSを取得しておけば「Microsoft Office」のスキルの証明を客観的に行う事ができます。事務職を目指している人であれば、取っておいて損はない資格と言えるでしょう。
知名度が高いので、就職や転職で少しは使える
MOSは知名度が非常に高いオフィスソフトの資格です。
オフィスソフトにかかわる資格は他にもいくつかありますが、会社からの評価を得たいのであれば、最も幅広く評価を得やすい資格であるといえます。
ただし、MOS自体はそれほど難易度が高い資格ではありません。MOSを持っているだけで高い評価を得られることはありませんので、あくまで「持っていないよりは評価が上がる可能性がある」程度に考えた方がいいでしょう。

世界的にも認められる国際的な資格
MOSは国際資格なので、日本国外でも通用します。
評価が高い資格ではありませんが、海外での仕事も視野に入れている場合は、とっておいても損になる資格ではありません。もし、「ゆくゆくは海外で仕事を…」と考えているのであれば、取得を検討してみてもいいでしょう。
私生活でも役に立つ
私生活でオフィスソフトを利用しているのであれば、当然私生活でもMOSの勉強が役に立ちます。
会社での評価や作業効率を上げつつ、その学習を私生活にも役立てることができるため、一石二鳥を狙うことができます。

資格の報奨金対象になっている可能性もある
MOSは知名度が高い資格です。また「Excelはほとんど使ったことがない」という社員の作業効率を向上させる目的でも利用できるため、報奨金対象となっていることがあります。
正直、新人でMOSレベルの操作ができない人はかなり多いです。それにもかかわらず、社内で操作の研修が行われていることは多くありません。IT業界でさえそうですし、非IT業界では、余計にその傾向は強いでしょう。会社からすれば、たった1万円程度の受験費用を補助するだけで、業務の効率を上げてくれるのであれば安いものです。

MOSのデメリット
実践的能力としては、あくまで「応用に入門できる」レベル
MOSの受験を通して、事務職で利用する基礎的な知識は一通り学習することができます。
しかし、あくまで内容は「基礎的な知識~応用の初級」程度です。実際にExcelの関数などを確認すればわかると思いますが、ほとんどの関数は理解できていなくても、MOSに合格するだけなら可能です。また、VBAなどのExcelを使いこなすためには必須ともいえる知識については、MOSではほとんど学習対象外です(資格で言えば、別途VBAエキスパートで学ぶといいでしょう)。
ですので「MOSを学習したから、もうオフィスソフトの勉強は完了」と考えるのではなく「MOSを通して基礎を身につけたから、これから更に効率化を行おう」と考えた方が適切といえます。
学生にはやや高い?
MOSの受験料は1万円程度です。参考書は1冊もあれば十分ですが、それでも1万円というのは学生には高めの出費です。
MOSの学習を通して得られる知識は、オフィスソフト初心者には1万円以上の価値があると思いますが、それでも「資格のための受験」という意味合いでは、学生には安いとは言い難いでしょう。
一応学割が存在するため(MOS 2010は対象外)、学生であれば一般価格より2,000円程度安く受験は可能です。しかし、やはり参考書代を含めれば1万円程度の費用は必要となります。
取得によって大幅に評価を上げられる資格ではありませんので、学生で時間に余裕がある人は、もっと高い評価の資格を優先するようにしましょう。

仕事の内容にあうとは限らない
MOSで学習する内容は、幅広くMicrosoft Officeの基礎知識ですが、それが仕事の内容にあうとは限りません。内容が簡単すぎる場合もありますし、逆に仕事で使う内容が単純なものばかりの人は「MOSの学習をするより、各オフィスソフトのショートカットキーを覚えた方が良い」という場合もあります。
ただし、基礎知識を幅広く付けることで「より高度な内容を学習する基礎」が身に付きますし、単純作業を効率的に行うためのより高度な操作への足がかりになる場合もあります。
せっかくMOSを通して基礎を学習するのであれば、学んだことを仕事で活かせるように、継続的に研鑽を積んでいくといいでしょう。
MOSの難易度
合格率は?
MOSの合格率は、基本的に公表されていません。ですので、合格率から難易度を測定することは困難です。
また「事務仕事で使える」という汎用性から、専門的な知識のない人の方が多く受験する資格であると考えられます。初心者の受験が多い影響を受けて、難易度に比べて合格率が低めになっている可能性はあります。
標準的な勉強時間
取得までにかかる時間はだいたい30~50時間程度の人が多いです。
ただし、基礎知識やバージョン、対象のオフィスソフトによっても変化します。確実に合格したいのであれば、念のため50時間を確保。短期で合格率が低くても挑戦したいのであれば、20時間未満で挑戦してみていいでしょう。

受験者の年齢層
スペシャリスト(一般)レベルの受験者の年齢層は、20歳以下が最多で38.6%程度、ついで21~30歳が29.9%程度となっています(2018年受験者データ)。
エキスパート(上級)レベルの場合、最も多い受験者の年齢層は21~30歳で35.6%、ついで20歳未満が20.7%。ほぼ同じ数字で31~40歳が20.2%となっています(2018年受験者データ)。
受験者の年齢層を考えると、社会人になる前に取得している人が多いように見受けられるため、それほど難易度が高くない試験であることがうかがえます。

MOSは独学でも合格可能か?
断言しますが、合格だけなら独学でも十分です。
そもそもMOSの受験でスクールを利用する人は圧倒的に少ないでしょう。MOSは独学でも1日1時間程度、1ヶ月も勉強すれば、初心者でも合格圏に達します。
もし、スクールを利用して学習するのであれば「MOSに合格すること」は目的としないようにしましょう。もっと幅広い始点で「事務仕事で使えるパソコンスキルを身につける。その一環として、実力を客観的に証明できる資格も取得する」というのであれば、スクールの利用価値もあります。
とはいえ、事務職で使うオフィスソフトの知識はそれほど高度な内容ではありません。「パソコンの扱いは苦手だけど、どうしても効率を上げたい」という人以外は、やはりまずは独学から始めた方がいいでしょう。
MOSはどのバージョンを取得するのがおすすめか?
取得したバージョンと違うMicrosoft Officeでも、MOSで学習した内容は利用できます。
もちろん、細部はバージョン毎に違いますが、基本的な操作や考え方さえ習得してしまえば、「どうしてもわからないことはネットで調べる」というスタイルで、どのバージョンでも十分通用します。
ですので「どのバージョンでMOSを取得しても、現場で十分使える」と考えて問題ありません。

しかし、その上であえてバージョンを選択するのであれば、以下の考え方で選択することをオススメします。
基本的には、一番新しいバージョン
いくらバージョン毎の差が大きくないとはいえ、何度もバージョンが変わっていけば、使い勝手も徐々に変わっていきます。
古いバージョンになるほど、互換性も低下していきますし、会社でも利用されなくなっていきますので、実践的な価値は低下します。
長く役立てるためにも、とくに受験したいバージョンが決まっていないのであれば、最新のバージョンを受験するようにするといいでしょう。
仕事で利用しているバージョンを選択するのも手
最新でなくても、仕事で利用しているバージョンを選択するのも手です。
仕事で利用しているバージョンであれば、普段から使い慣れていますし、学習した内容がダイレクトに仕事で役立ちます。
転職する予定や、職場でバージョンアップの予定がないのであれば、仕事で使っているバージョンを優先するようにしましょう。
勉強効率を上げるなら、自宅で使っているバージョン
合格するための勉強の効率を上げるのであれば、自宅で使っているバージョンをおすすめします。
MOSでは実践的な操作の能力が問われます。ですので、学習するのであれば自宅で勉強する際に、実際に動かせるバージョンの方が、安心して学習に取り組むことができます。

実践力を鍛えたいのであれば…
試験の学習を通して実践的な能力を鍛えたいのであれば、MOS 2013がおすすめです。
理由は出題形式。先にも記載しましたが、MOS 2013は一つのファイルを完成させていく形式で問題に解答していくため、実践的な内容を、一連の作業として学習することができます。
一方、MOS 2010の場合は、小問形式という特性上、合格だけを考えるのであれば短期間で知識を詰め込むだけでも合格できてしまいます。もちろん、初心者であればそれでも勉強になるところは多いですが、やはりMOS 2013の合格を目指す場合と比べると、やや実践的な能力がつきにくいといえるでしょう。
MOSは本当に役立つのか?
「多くの若手社員」にとっては役に立つ
「MOSは役に立たない。内容が簡単すぎる」という意見はよくみられます。実際に、会社で何年もExcelなどを使いこなしている人であれば「MOS程度の知識では不満」という人も多いでしょう。
確かに、普段からオフィスソフトを使いこなせている人にとって、あえて1万円も払って取得するほど、MOSに価値はありません。しかし「簡単すぎる」という意見がある一方、現実には「MOSレベルのこともできない」人が多いです。
実際、IT関連である私の職場の新入社員でさえ「関数を使って、合計や平均値を出せる程度」「ピボットテーブルの使い方がわからない」という状態から仕事を始める人が多いという現実があります。
とくに「ITも事務仕事も専門ではない職場での、付随業務としての事務仕事」では、オフィスソフトによる作業効率はかなり低いです。正直1万円程度の資格勉強で作業効率を上げてくれるのであれば、短期間でその資金分の時間を短縮できるということは少なくありません。
1人に1台パソコンがあって当たり前の時代になってきた今日ですが、一方で、パソコンを使うスキルを備えている人は多くありません。スマートフォンを中心に利用する学生が増えてきた影響もあり、Excelのスキルについては、大学4年生の72.0%が「操作に自信がない」と解答している(※1)くらいです。
そういった事情からも、まだオフィスソフトに慣れていない「若手社員」であれば、MOSの学習をしてみるのは有効だと私は考えています。
※1 株式会社オデッセイコミュニケーションズが2014年卒業予定の大学生1022名に行ったアンケート結果
MOSを面接でアピールするなら…
面接の際は「オフィスソフトが使いこなせます!」というアピールよりも「自己研鑽ができる人材です」という面をアピールした方がいいでしょう。
MOSレベルに達しない新入社員は非常に多いですが、MOSが使えただけで「オフィスソフトが使いこなせる」といってしまうと「この人はMOSレベルが限界なのかな?」と思われてしまう危険性もあります。あくまでMOSは「オフィスソフトの応用レベルまでの入門」と考えた方が適切といえるでしょう。
もしも「オフィスソフトを使いこなせる」といいたい場合、例えばExcelなら、マクロを作成し、実際に業務の効率化ができる程度のスキルは必須です。それがまだできなのであれば「MOSで基礎知識を付けたので、今はVBAの学習中です」のように、向上心を見せる方向の方がいいでしょう。
MOSを超えて「実践で役立つ能力」をつけるには…
MOSに合格したのであれば、基礎的な知識は付いているはずです。
しかし、それだけではそれぞれのソフトを使いこなすことはできません。仮に上級(エキスパート)レベルに合格したとしても「まだスペシャリストとしてはスタートの準備が整った程度」考えた方がいいでしょう。
一番需要の高いExcelであれば、最低でもVBAやピボットテーブルを実践的に使いこなせる必要はありますし、関数も必要に応じて組み合わせて利用できる必要があります。
「状況に応じて、どの機能を利用するのが適切か?」を判断できてこそ、「実践で役立つ能力」といえるでしょう。
ですので、Excelであれば「VBAでマクロの作成を行い、業務を効率化した」というレベルに達して、ようやくスペシャリストとしてスタートラインが切れたといえるでしょう。
より実践的な知識を学習したいのであれば、専門的な書籍での学習を行うといいでしょう。また、スクールを利用するのであれば、最低でもMOSを超えた実践的能力を身につけるようにしましょう。