工事担任者試験 – 概要・難易度・勉強時間まとめ
この記事では工事担任者試験の総合通信(旧AI・DD総合種)を中心に、概要・難易度・勉強時間をにまとめました。
工事担任者試験を受験される方(とくに総合通信)の、参考になれば幸いです。
令和3年4月1日の試験変更に伴い、工事担任者の「資格名称変更」と「AI第二種、DD第二種の廃止」が実施されます(詳細は公式サイトでご確認ください)。
平成17年に実施されたような大幅な改正ではなく、主に「AI第二種、DD第二種は不要」という以前から指摘されてきた問題への対処かなと思われます。試験の旧名称との対応関係には注意して受験して頂ければと思います。
また、同じタイミングで、施工管理技士が科目免除資格に追加されています。該当の方は忘れず免除の申請をしましょう。
工事担任者試験の概要・特徴
工事担任者試験とは?
工事担任者とは、「電気通信設備の技術者」のことです。
試験・資格としては「工事担任者」となっていますが、それだと何の工事担任者かわからないため「電気通信の工事担任者」「電気通信設備工事担任者」などとも呼ばれます。
国家資格であり、電気通信回線に端末設備や自営電気通信設備の接続工事を行ったり、それらを監督する際に必要とされる資格となります。
工事担任者の試験区分
2021年から受験できる試験区分は、以下のようになっています。
- 第一級アナログ通信(2020年までのAI第一種に相当)
- 第二級アナログ通信(2020年までのAI第三種に相当)
- 第一級デジタル通信(2020年までのDD第一種に相当)
- 第二級デジタル通信(2020年までのDD第三種に相当)
- 総合通信(2020年までのAI・DD総合種に相当)
※令和3年4月1日から3年が経過する日までを限度として、AI第二種とDD第二種の試験も実施されます。その後、AI第二種とDD第二種は廃止。
個人的な感想ですが、最終的に総合通信を目指すのであれば、最初から総合通信を受験した方が合理的だと感じました(総合通信もそれほど難易度が高くなく、落ちても科目ごとに合格しておけば、次回の受験が楽になるため)。
ちなみに、既に合格している場合は、資格者証は有効に機能します。その場合、名称変更後の資格と同じものとして扱われます(例:「AI・DD総合種」に合格している場合、みなし後の資格者証は「総合通信」)。
試験科目
試験科目は、どの試験種類でも以下の3科目になります。
- 電気通信技術の『基礎』
内容は「電気回路」「電子回路」「論理計算」「伝送理論」「伝送技術」の基礎。第二級はどれも初歩しか問われない。 - 端末設備の接続のための『技術及び理論』
内容は「端末設備」「ネットワーク技術」「トラヒック理論」「情報セキュリティ」「総合デジタル通信の技術」など。幅広いが、試験の種類によって問われる内容は異なる。総合通信は、全て問われる。 - 端末設備の接続に関する『法規』
内容は「電気通信事業法」「有線電気通信法」「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」「電子署名及び認証業務に関する法律」など。第二級の試験区分は、大要しか問われず、「電子署名及び認証業務に関する法律」は出題されない。
科目ごとの詳細な出題内容については、公式サイトに掲載されていますので、参考にしていただければと思います。
試験の日程と受験料
試験は年2回で5月と11月に実施されます。概ね第四日曜日になるかと思いますが、正確な日程は受験の手引きで都度確認をお願いします。
受験料は8,700円と、国家試験では若干高めな印象です(2021年2月14日時点)。
ちなみに、全科目免除して資格を貰うという方法もあり、全科目の免除申請料は5,600円になります。
工事担任者 総合通信(旧:AI・DD総合種)の取得方法(免除制度など)
工事担任者試験の特徴として、試験科目の免除制度があります。詳細は以下のページに記載されています。
ざっくり概要をまとめると、以下の通りです。
- 「電気通信主任技術者」「名称変更前の工事担任者」「無線従事者」「電気通信工事施工管理」などの資格を持っている場合、試験科目の免除を申請できる
- 工事担任者試験の個別の科目を合格すれば免除できる(受験した月の翌月初めから起算して、3年以内の最後の試験の申請受付期間最終日まで有効)
- 実務経歴で科目免除できる(実務の期間、科目合格、工事担任者試験の合格の状況により、免除の内容は変化する)
- 認定学校修了者・修了見込み者は、『基礎』科目を免除できる
あえて免除をしないと合格できない試験ではありませんが「既に免除の資格がある」のであれば、忘れず免除の申請をしておきましょう。
また、一発合格できなくても、科目免除が狙えるところ工事担任者試験の特徴。無理な日程で上位の資格に挑んでも、科目ごとの合格ができれば、次回以降の試験が有利になります。
工事担任者試験の試験時間
試験時間は『基礎』と『法規』は1科目40分。『技術及び理論』は80分です。
科目ごとの免除が可能であるため、3科目受験の場合は160分連続となりますが、科目免除の内容によっては120分、80分、40分と、試験時間が短くなります。
詳細な試験の時刻については、受験の手引きにある「試験種別及び試験時間」をご確認いただければと思います。
ちなみに、試験開始時刻は、令和3年度1回目では10:00開始の予定となっていますが、私の受験した令和2年の試験では、9:30開始となっていました。
試験の持ち物(電卓は不可)
平成26年度以降、不正行為防止の目的で、試験で持ち込めるものは以下のようになりました(令和5年度時点)。
鉛筆、シャープペンシル、消しゴム、アナログ式時計(液晶表示のあるものは認めない)、以外の物は机の上に置かないでください。
注意点をまとめると以下のようになります。
- 電卓は使用できない
- デジタル式腕時計は、試験開始までにカバンなどにしまう
- 携帯電話などは、電源を切ってカバンなどにしまう
最新の情報は、受験の手引きの「受験に当たっての注意」をご確認ください。
工事担任者試験 総合通信(旧:AI・DD総合種)の難易度
ここからは、「総合通信」の難易度を中心にまとめます。
合格率はどの程度か?
個人的にはどの試験でもあまりあてにならないと思っている合格率(本質的な難易度と関係なく、受験者のレベル、試験制度に左右されるため)。
とはいえ、やはり気になるので、一応調査しました。
最新の合格率については、以下のページに掲載されています。
私が確認した時点のAI・DD総合種(令和3年度試験以降は総合通信)の合格率をまとめると、以下の通りでした。
全体の合格率 | 1科目受験の 合格率 | 2科目受験の 合格率 | 3科目受験の 合格率 | |
令和2年度第2回目 | 28.4% | 69.3% | 25.2% | 15.0% |
令和元年度第2回目 | 21.8% | 55.8% | 18.3% | 9.5% |
令和元年度第1回目 | 26.5% | 67.3% | 19.4% | 12.3% |
平成30年度第2回目 | 25.4% | 66.3% | 24.1% | 11.9% |
平成30年度第1回目 | 21.5% | 58.9% | 19.6% | 9.8% |
平成29年度第2回目 | 24.5% | 68.2% | 22.0% | 10.2% |
試験制度を考えると、そもそも一発で3科目合格を狙っていない人が一定数いると思います。実際、統計データを見ると、受験者の40~45%程度は1~2科目受験となっています。
また、業務経験での免除も可能であることから「3科目受験をしている人は、素人~新人が多いのでは?」と考えることもできます。
これらの考察から「3科目受験で挑む場合、合格率10%の他の試験よりは、難易度が低そう」「全体の合格率20~30%弱だが、科目免除も考慮すると、難易度は高くなさそう」と判断ができます。
過去問の流用は期待できるか?
出題の7~9割は過去問の流用や類似の問題であることが、参考書やネットの情報で確認できます(ネット上に過去問があるので、実際に検証できます)。
ただし「直近○○年からたくさん出るので、そこだけやればOK」といったことはありません。
私は参考書に掲載されているものを中心に、全科目で合計500問弱の過去問に取り組み、合格に至りました。
具体的にどのくらい難しい問題が出題されるか?
「基礎」の科目ついては、高校の基礎レベルの物理(電気回路)と数学が理解できれば、事前知識としてはOKです。ただし、あくまで勉強の前提として必要とされるレベルが高校の基礎レベルなので、過去問演習を通して新しく公式の暗記、用語の暗記、計算の演習が必要です。理系が得意な人には易しいですが、高校の基礎レベルで苦戦する人は、やや苦戦するといったところです。
「技術及び理論」については、ほとんどが暗記問題。過去問の流用が期待できるため、深い理解は不要です。トラヒック理論などについては、計算も求められますが、やり方を覚えさえすれば簡単なので「数学が苦手だから解けない」といったことは起こりにくいといえます。地道に時間をかければ、誰でも合格を狙える内容です。
「法規」の難易度は、ハッキリ言って低めです。基本的に暗記して過去問の流用に備えればOK。「似た内容を区別して覚える」「長文の中のヒッカケを見破る」といった注意は必要ですが、根本的に覚えることが少ないです。(私は、知識ゼロから過去問91問を10時間程勉強し、84点になりました)。
工事担任者 総合通信(旧:AI・DD総合種)の勉強時間
最後に、想定の勉強時間について。
あまり情報がありませんが、いくつかの合格体験の記事から情報をまとめると、以下のようになりました。
- 3科目同時受験の場合、短く見ても60時間は確保
- 素人が3科目同時受験で安全な合格を狙うなら、100時間以上は確保
私の場合では、部分的に得意な内容があったため、3科目同時受験でも71時間40分(調査・暗記カード作成含む)で余裕をもった合格ができました。調査と暗記カード作成を除くと、48時間31分です。
しかし、素人から安全な合格を狙う場合、やはり100時間以上は確保しておいた方がいいという意見には、私も同意します。
急な予定変更にも備えて、多めに150時間確保すれば、より安心だと思います。
工事担任者試験 AI・DD総合種(現:総合通信)受験時にやった勉強
実際に行った「工事担任者試験 AI・DD総合種(現:総合通信)」の勉強については、以下の記事にまとめました。
具体的な勉強方法にもふれていますので、興味がある方は参考にしていただければ幸いです。