【基本情報技術者試験】就職への活用と難易度/文系大学でも取得できる?
IT業界を志す人であれば、「基本情報技術者試験」を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。とくにIT関連の大学に入学したばかりだったり、文系からIT業界に入った新入社員の方なら、
- 自分が受けても合格できる難易度なの?
- 自分に向いてる試験なの?
- どんな特徴がある試験?
と疑問に思っている人も多いのではないかと思います。
今回は、IT業界の登竜門ともいえる、基本情報技術者試験について
- 試験の難易度は?
- どんな人向けの試験?
- 就職に有利? 意味ない?
- 基本情報技術者試験の特徴
- そもそも基本情報技術者試験ってどんな試験?
といった内容について解説したいと思います。
基本情報技術者試験は、2023年4月5日より大幅改定されました。
試験が通年で受験可能な上、難易度も下がっていますので、文系大学の学生でも就職活動でのPRに活かしやすくなっています。
逆に、情報系の大学生で就職活動で高い評価を得たい人は、応用情報技術者試験以上のレベルの取得をおすすめします。
基本情報技術者試験の難易度は? 大学生でも簡単?
基本情報技術者試験の難易度は、受験前に把握しておいた方が良いポイントです。
また、就職に向けて取得を考える場合、文系大学などで学習経験が無い人か、情報系大学などで学習経験がある人かで前提の知識が大きく変わります。つまり、簡単に合格できるかは、人によって大きく変わります。
ここでは、複数の視点から難易度や勉強時間についてまとめますので、受験を検討している際は参考にしてみてください。
試験の合格率(2020年秋試験から急上昇)
2019年までの試験では、長く合格率25%前後で推移していました。
しかし、コロナ影響で、試験がCBT方式になり2020年秋の試験から合格率が50%前後へ急増していました。
その後、2022年4月の秋試験までは減少し、35.64%まで戻ったのですが、2023年の試験の大幅改訂からは合格率が再上昇し、以下のようになっています。
試験日 | 合格率 |
2023年11月 | 44.8% |
2023年10月 | 42.35% |
2023年9月 | 47.70% |
2023年8月 | 48.37% |
2023年7月 | 49.57% |
試験が別日に受けられなくなったにも関わらず、合格率が大幅に上昇している事から、2023年の改訂により、難易度は大幅に下がったと言えるでしょう。
大学生にとってはどのくらいの難易度?
私が受験したのは、合格率が20%台だった今よりも難しい時期の試験ですが、偏差値50未満の情報系大学で1年の前期課程が終わった頃には合格ライン近くまで迫り、1年生が終わる頃には余裕で合格となりました。
前期が終わった時点の受験では、アルバイトが忙しく、勉強時間が確保できなかったため旧:午前試験(現:科目A)が若干合格点に達しなかったという状況です。
当時の私は、大学以外の勉強はしていない状態から試験対策を開始したので「難易度が高かった旧制度でも、偏差値50未満の情報系大学で半年真面目に勉強すれば、合格ライン近辺までいける」といっていいと思います。もちろん、試験用の勉強はしましたが、30時間も勉強できなかったと思います。
ですので、難易度が下がった現在の試験であれば、情報系の大学で真面目に1年勉強した人なら、試験用の勉強を少し足すだけでも十分に合格を狙える難易度といえます。
試験の勉強時間
試験の勉強時間は人によって大きく変わります。
現役のSEや、大学で1年程度学習した人であれば、50時間未満で合格ラインに達する人も珍しくありません。実際、私が受験した際は、大学1年終了後、50時間ほどの勉強で余裕をもって合格できました。
一方、全くの初心者の場合、馴染みのない内容を学習していくので、勉強時間は当然増えます。ただ、難易度が高かった頃は「初心者なら150~200時間ほど」といわれていましたが、現在は難易度が下がっているので、上手く勉強すれば100時間未満でも合格できる可能性はあります。
ちなみに、2023年の試験改定移行後のTACでは「平均的な勉強時間は125時間前後」という記述がありました。
勉強時間の考察については以下の記事にまとめました。興味がある方は参考にしてみてください。
基本情報技術者試験はどんな人向けの試験か?
社会的な評価から、基本情報技術者試験は以下の人におすすめの試験といえます。
- IT関連での就職を考えている学生
- IT業界未経験で転職を考えている人
- IT業界に入ったばかりの新入社員
- IT関連の学部への進学を考えている高校生
基本情報技術者試験は、学生の就職活動や、IT業界の新入社員の学習目標などに向いている試験です。実際に、情報系の大学でも取得を推奨していることはありますし、IT業界では新人向けに報奨金を出している企業も少なくありません。
また、大学入学共通テストの情報関係基礎の難易度は「基本情報技術者試験の午後科目(旧制度)よりやや低く、ITパスポート試験よりは高い」とされています。2025年からは「情報」を出題教科に追加指定とのことですので、今後は高校生であっても需要が増してくるのではなかと思います(もちろん、情報関係基礎を選択できる場合ですが)。
基本情報技術者試験に合格するメリットについては、以下の記事に詳細にまとめてありますので、興味がある方はご参照ください。
基本情報技術者試験は就職で有利? 意味ない?
正直、必ずしも就職に有利とはいえません。企業の求める人材によっては、大卒で取得してもほぼ意味がないこともあります。
ただ、IT業界に入った新人が取得をすすめられるレベルということもあり、就職活動で有利に働く可能性は高い資格です。ですので
- IT業界での就職を希望している
- 真面目に勉強できる人材であることをアピールしたい
といった場合は、取得のメリットがある可能性は高いです。
ただし、2023年4月5日の制度から大幅に難易度が下がった事から「IT業界の就職活動で、高い評価を得る」という事は難しくなってきていると思います。より上を目指すのであれば、応用情報技術者試験をおすすめします。
基本情報技術者試験は、文系の就職で有利?
先にも述べた通り、「企業や求める人材による」とはいえますが、私の周で文系からIT業界に入った人では、取得を進められた人が何人もいます。
そういった意味でも、文系大卒や、全くの他業界からの転職であれば、取得しておいた方が有利である可能性は高いです。
ただし、基本情報技術者試験に合格しただけでは、基本的に現場では歯が立ちません。「即戦力にはなれない」ことは承知の上で合格を目指しましょう。
基本情報技術者試験は、情報系の就職で有利?
情報系の大学生であっても、取得した方が有利ではあると思います。理由は以下の通りです
- 自己研鑽する人間であることアピールできる
- 一定の知識水準は証明できる
- そもそも、情報系なら比較的短時間で取得できる
ただし評価としては「大学に通っていたが、勉強についてアピールできない」といった人が、最低限の努力を見せられるレベルです。
偏差値50未満の情報系の大学でも、真面目に勉強していれば1年生の前期課程が終わる頃には合格が見えてくるレベルです(もちろん、試験用の勉強は追加で必要ですが)。ですので、試験に合格しても「情報系の人材として知識が豊富である」「即戦力として扱われる」ということはありません。
ただし、情報系の大学生なら取得は容易ですので、全く資格を持っていないのであれば取得しておいて損はないでしょう。
基本情報技術者試験は会社で評価される?
IT業界に入った新社会人が求められるレベルということもあり、就職後も一定の評価を得ることが可能です。若い人なら、社内で多少は評価を上げられると思います。
IT関連の企業では、取得に対して数万円程度の報奨金が支払われることもあります。この点からも「新人向けとしては価値ある資格」として認めている会社が多いと言えます。
一方、キャリアアップを狙った転職では物足りない資格です。とくに、20代後半以降で、IT業界で数年の経験がある場合は、一つ上の「応用情報技術者試験」以上の取得を狙いたいところです。
基本情報技術者試験の特徴は?
基本情報技術者試験の主な特徴は、以下の通りです。
- CBT方式で実施される
- 試験は「科目A」と「科目B」にわかれる
- 科目Aは免除ができる
それは、各特徴について解説します。
CBT方式で実施される
令和2年秋試験以降、基本情報技術者試験はCBT方式(コンピュータで受験する方式)になりました。
自宅での受験ではなく、全国の試験会場にあるコンピュータを利用して試験を行います。
ちなみに、ITパスポート試験用ですが、CBT疑似体験ソフトウェアがあります。CBT試験をやったことがない人は、参考にしてみてもいいでしょう。
試験は「科目A」と「科目B」にわかれる
基本情報技術者試験の大きな特徴の一つが、試験が「科目A」と「科目B」に分かれるところ。以下の様な試験形式です。
- 科目A:全60問の四肢択一式
- 科目B:全20問の文章読解の多肢択一式
このうち「科目A」は、過去問の反復練習を行えば比較的容易に攻略できます。出題形式も、試験でよくある短文に対して四択で回答する形式ですので、とく別な練習は不要です。
一方、科目Bは「文章読解」と記載しましたが、2023年の試験改定以降は、以前よりも短文の問題に変更されているため、回答も容易になっています。念のため、問題形式に慣れるための演習はした方がいいですが、特別なトレーニングは必要ないでしょう。
ちなみに、難易度は科目Bの方が高いと言われていますが、昔の午後試験(現在の科目Bに相当)と比較すると、科目Bも難易度が下がっています(科目Bになる前の午後試験にくらべ、プログラミング系の知識水準が下がったため)。
科目Aと科目Bの個別の特徴については、以下の記事にまとめました。興味がある方は参考にしてみてください。
「科目A」と「科目B」は別日に受験できない
CBT方式に変更されたことに伴い、午前試験と午後試験を別の日に受験できるようになっていましたが、2023年の試験改定から「科目A(旧午前試験)」と「科目B(旧午後試験)」を別日に受験できなくなりました。
旧試験では、この「別日に受験できる」がかなり有利に働いていたと思われ、実際にCBT方式に移行し別日に受験できるようになってから、合格率が大幅に跳ね上がっていました。
とはいえ、2023年の改訂で、そもそもの試験の難易度が下がったと考えられる状況です。
また旧試験から大幅に試験内容がコンパクトになった事に伴い、試験時間自体も300分の長丁場から、190分の比較的短時間になっています。こういった点でも、同じ日に受験したところで、集中力の減少などは発生しにくいかと思います。
「科目A」は免除ができる
基本情報技術者試験の「科目A」については免除が出来るようになっています。
方法は単純で、科目Aの免除用に認定された講座を受講し、修了試験に合格し、そのことを受験時に申請すればOKです。
「科目Aの免除」については、以下の記事にまとめました。興味がある方は参考にしてみてください。
そもそも基本情報技術者試験とは
念のため、最後に「基本情報技術者試験ってどんな試験?」ということについて解説します。
試験の情報は常に更新される可能性がありますので、実際に受験する際は、一度は公式サイトで最新の情報をご確認ください。
試験概要
基本情報技術者試験とは、情報処理技術者試験(IPAが運営する情報処理関連の国家試験)の一つです。4段階あるレベルの中では下から2番目のレベル2。一つ下が「ITパスポート試験」、一つ上が「応用情報技術者試験」です。
公式で利用される略称は「FE」。「Fundamental Information Technology Engineer Examination」の略です。
レベル4も含めて受験資格は存在しないため、レベル4からの受験も可能となっていますが、学生やIT業界に入ったばかりの新社会人が受験するならば、基本情報技術者試験が比較的ポピュラーな資格といえます。
ちなみに、個人的には時間に余裕がある学生であれば、基本情報技術者試験よりも応用情報技術者試験の方がおすすめです。学生で応用情報技術者試験に合格している人は比較的少なく、周囲に差をつけることができます(基本情報の合格者の平均年齢は25歳ほど。応用情報は30歳ほど)。
応用情報技術者試験については、以下の記事に基本的な情報をまとめていますので、興味がある方は参照して頂ければと思います。
基本情報技術者試験の位置づけ
独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)が想定する「対象者像」は以下のとおりです。
ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者 (基本情報技術者試験(FE) ~ ITエンジニアの登竜門 ~)
要するに、IT業界で働く人が身に着けるべき、基礎的な知識・技能が問われる試験となります。
ただ、試験改定前は「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」となっていた事から、公式で対象者像を下げた事は明らかです。
基本情報技術者試験の制度
試験の日程
試験は随時CBT方式で実施されています。
集中して学習する時間があれば、未経験からでも1ヶ月で合格可能な試験です(100時間以上は勉強時間が欲しいですが)。そういった意味では、就活直前での取得を考えてもいいでしょう。
ただし、会場が空いているかにはスケジュールが左右される可能性もあります。受験する場合は念のため早めの申込をおすすめします。
受験料
受験料は5,700円でしたが、2020年4月から実施する試験は7,500円となります。
理由は「印刷や運搬費用、会場借料等の値上がり、新型コロナウイルス対策」とのことです。
受験資格・注意点
受験資格はないため、実務経験のない学生でも受験を受けることは可能です。
その他の注意事項としては、受験票に忘れず写真を貼り付けて持っていくことなど、通常の資格試験と概ね同じ内容です。
また、CBT-Solutionsで受験申込時に作成した利用者IDは、FE・SGの受験申込みだけでなく、応用情報技術者試験・高度試験・情報処理安全確保支援士試験の受験申込みでも使用することになります。忘れないように記録を残しておきましょう。
細かな受験する上での注意事項については、申込みページにも記載されています。こちらも必ず確認するようにしましょう。
基本情報技術者試験は10~20代前半(とくに大学生)がおすすめ
基本情報技術者試験は、しっかり準備して挑めば決して難しい試験ではありません。
例えば、大学生なら春休みに毎日2~3時間勉強すれば、初心者でも安定した合格が狙えるレベルです。
IT業界を志すのであれば、就職・キャリアアップにも使えるため、10~20代前半のうちに取得しておくと良いでしょう。
また、既にIT業界就職している場合も、若いうちであればキャリアアップや社内の評価を上げることにつながります。報奨金がもらえることもありますので、是非チャレンジしてみてください。