【2019年版】IT業界の登竜門 就職にも有利な基本情報技術者試験とは
IT業界に志す人であれば、「基本情報技術者試験」を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。とくにIT関連の大学に入学したばかりだったり、文系からIT業界に入った新入社員の方には
- 「基本情報技術者試験」ってどんな内容の試験?
- 「基本情報技術者試験」は自分が受けるべき試験なの?
- 「基本情報技術者試験」に合格するには、どんな勉強が必要?
と疑問に思っている人も多いのではないかと思います。
今回は、IT業界の登竜門ともいえる、基本情報技術者試験について
- 基本情報技術者試験の概要
- 基本情報技術者試験の特徴
- 基本情報技術者試験の難易度
- 基本情報技術者試験がおすすめの人物像
を解説したいと思います。
目次
基本情報技術者試験とは
基本情報技術者試験とは、情報処理技術者試験(IPAが運営する情報処理関連の国家試験)の一つです。4段階あるレベルの中では下から2番目のレベル2。一つ下が「ITパスポート試験」、一つ上が「応用情報技術者試験」です。
公式で利用される略称は「FE」。「Fundamental Information Technology Engineer Examination」の略です。
レベル4も含めて受験資格は存在しないため、レベル4からの受験も可能となっていますが、学生やIT業界に入ったばかりの新社会人が受験するならば、基本情報技術者試験が最も一般的な資格といえるでしょう。
ちなみに、個人的には時間に余裕がある学生であれば、基本情報技術者試験よりも応用情報技術者試験の方がおすすめです。難易度は高くなりますが、学生で応用情報技術者試験に合格している人は比較的少なく、周囲に差をつけることができます(基本情報の合格者の平均年齢は25歳程度。応用情報は30歳程度)。
応用情報技術者試験については、以下の記事に基本的な情報をまとめていますので、興味がある方は参照して頂ければと思います。
基本情報技術者試験の位置づけ
独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)が想定する「対象者像」は以下のとおりです。
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者 (基本情報技術者試験(FE) ~ ITエンジニアの登竜門 ~)
要するに、IT業界で働く人が身に着けるべき、基礎的な知識・技能が問われる試験となります。
基本情報技術者試験は就職で有利か
必ずしも有利であるとまではいえませんが、未経験からIT業界に入った場合に取得をすすめられるレベルということもあり、就職活動で有利に働く可能性は高い資格です。
- IT業界での就職を希望している
- 真面目に勉強できる人材であることをアピールしたい
といった場合は、取得して損はない資格といえますし、IT関連の学部でも取得することを推奨することは多い資格です。
基本情報技術者試験は会社で評価されるか
IT業界に入った新社会人が求められるレベルということもあり、就職後も一定の評価を得ることが可能な資格です。20代半ばまでに取得すれば、社内での評価を上げられる可能性は比較的高いです。
IT関連の企業では、取得に対して数万円程度の報奨金が支払われることもありますので、そのことからも価値ある資格として認められているといえるでしょう。
一方、キャリアアップを狙った転職では物足りないため、より高い待遇を求めてIT業界で転職するのであれば、一つ上の「応用情報技術者試験」以上は取得しておきたいところです。
基本情報技術者試験はどんな人におすすめか
社会的な評価から、基本情報技術者試験は以下の人におすすめの試験といえます
- IT関連での就職を考えている学生
- 幅広く資格を取得しておこうと考えている学生
- IT業界未経験で転職を考えている人
- IT業界に入ったばかりの新入社員
- IT関連の学部への進学を考えている高校生
基本情報技術者試験は、学生の就職活動や、IT業界の新入社員が設定する学習目標、キャリアアップ過程での取得に向いている試験です。
また、一部の大学受験で利用できるセンター試験の科目「情報関係基礎」は、「ITパスポート試験」と「基本情報技術者試験」の中間程度の難易度であり、実は基本情報技術者試験の勉強をすることは、大学受験にも利用できる試験であるといえます(もちろん、情報関係基礎を選択できる場合ですが)。実際、自分の友人には情報関係基礎の試験で高得点を取り、特待生として入学した人もいます。
また、情報処理学会の「大学入試センターが実施する試験における「情報」出題の提言」や、2020年から必修化するプログラミング教育からも、今後「基本情報技術者試験」に対する需要は増えていくものと考えられます。
基本情報技術者試験に合格するメリットについては、以下の記事に詳細にまとめてありますので、興味がある方はご参照ください。
基本情報技術者試験の制度
試験の日程
試験は春と秋の二回実施され、以下のようになっています。
- 申込日:1月中旬~2月中旬頃
- 受験日:4月第3日曜日
- 合格発表:5月中旬頃
- 合格証書発送:5月下旬~6月上旬頃
- 申込日:7月中旬~8月中旬頃
- 受験日:10月第3日曜日
- 合格発表:11月中旬頃
- 合格証書発送:11月下旬~12月上旬頃
集中して学習する時間があれば、1ヶ月でも合格可能な試験ではありますが、申込みの締め切りは受験日の1ヶ月以上前となっているため、申込みタイミングには注意が必要です。
受験料
受験料は5700円(税込)です。
ちなみに、情報処理技術者試験はレベル2の基本情報技術者試験だけでなく、レベル1~4まで受験料は5700円となっています。
受験料は変更される可能性もありますので、受験の際はIPAのホームページを参考にしていただければと思います。
受験資格・注意点
受験資格はないため、実務経験のない学生でも受験を受けることは可能です。
その他の注意事項としては、受験票に忘れず写真を貼り付けて持っていくことなど、通常の資格試験と概ね同じ内容です。
受験票紛失時の再発行手続や、細かな注意事項については、試験の案内書に記載されています。心配な方はIPAのホームページで確認するといいでしょう。
基本情報技術者試験の特徴は?
試験は午前と午後にわかれる
基本情報技術者試験の特徴としては、午前の試験と午後の試験に分かれるところがあげられます。午前は多肢選択式(四肢択一)、午後は多肢選択式(大問形式)となっています。
どちらが難しいと感じるかは人によって異なりますが、午後の試験のほうが難しいと感じる人が多く、実際に午後の方が合格基準に達する人は少ないです。
ただし、IT関連の業務経験や、学校でプログラミングを学習したことがある人の場合、知識不足で午前の試験だけ合格基準に達しない人もいます。

過去問が重要な午前試験
午前試験の内容は以下の通りです。
- 試験時間:9:30~12:00(150分)
- 出題数:80問
出題内容は、毎回ほぼ決まった分野から決まった数が出題されており、以下のとおりです(2019年10月時点)。
- 問1~50:テクノロジ系
- 問51~60:マネジメント系
- 問61~80:ストラテジ系
ちなみに、令和元年度秋期試験から、午前試験については以下の見直しが実施されました。
(3)午前試験での数学に関する出題比率の見直し(適用時期:2019年の秋期試験から)
・理数能力を重視し、線形代数、確率・統計等、数学に関する出題比率を向上
テクノロジ、マネジメント、ストラテジからの出題数に変化はありませんでしたが、それぞれの分野における数学の絡む問題は、以前より出題比率が上がっています。
また、出題傾向の特徴としては、「過去問からの出題が非常に多い」ことがあげられます。実に半数程度が何らかの形で過去に出題された問題を、そのまま流用という状態です(応用情報技術者試験からの流用もあります)。
また、流用以外の問題についても、過去問を幅広く解いた知識があれば、午前試験はほとんどのものが解答可能なレベルとなっています。一部に最新技術の分野などから新出の問題もありますが、常識の範囲で解けなければ捨ててしまって大丈夫です。効率を重視するなら過去問に集中しましょう。
午前の試験対策については、こちらの記事で詳細に解説していますので、気になる方はご参照ください。
選択式の午後試験
午後試験の内容は以下の通りです。
- 試験時間:9:30~12:00(150分)
- 出題数(2019年秋試験まで):13問(内7問を解答)
- 出題数(2020年春試験から):11問(内5問を解答)
出題内容については、2020年春以降については、以下の通りに変更されています。
午後試験の出題範囲は以下の通りです。
問番号 | 分野 (T:テクノロジ、S:ストラテジ、M:マネジメント) |
選択方法 | 配点 | ||
出題数 | 回答数 | ||||
問1 | T | 情報セキュリティ | 1問必須 | 20点 | |
問2~4 | T | ハードウェア・ソフトウェア、データベース、ネットワーク、ソフトウェア設計 | 4分野から3問出題 | 2問 | 各15点 |
問5 | M・S | プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム戦略、経営戦略・企業と法務 | 4分野から1問出題 | ||
問6 | T | データ構造及びアルゴリズム | 1問必須 | 25点 | |
問7~11 | T | ソフトウェア開発 (C、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフト) |
5問 | 1問 | 25点 |
合計 | 11問 | 5問 | 100点 |
問2~5までは4問のうち2問、問7~11は5問のうち1問を選択し、回答することになります。
選択式なので、早い段階で前もって選択する分野を決めて学習したほうが効率的です。また、「データ構造及びアルゴリズム」と「ソフトウェア開発」以外の分野については、午前対策をしっかり行っておけば、基礎知識を身に着けられるレベルとなっています。問1~5については、まずは午前試験の対策から始めていくといいでしょう。
一番の悩みどころはソフトウェア開発。とくにプログラミング未経験者には厄介です。どの問題を選択するべきかですが
- プログラミングの経験がある人は該当の言語
- プログラミングの経験がない人で、今後プログラミングを学習予定の人は、学習予定の言語
- プログラミングの経験がなく、学習予定も未定の人は表計算ソフト
がおすすめです。私の通っていた大学では、プログラミングが苦手な人はアセンブラがおすすめ(難易度が低い)という意見もありましたが、経験がない人はあえて選ぶ必要は高くないかと思います。
試験問題で登場するプログラムの内容は、自分で作るには難しく、面食らう可能性が高いですが、自力で作成できる必要も、全てを読み解く必要もありません。プログラムの要所を読めれば回答が可能ですので「全てを理解する必要はない」と考えて、気楽に挑みましょう。
ちなみに、2019年の秋期試験以前との大きな変更点は以下の2点です。
- 配点・出題数(回答数)が変わった
- ソフトウェア開発の「COBOL」が廃止され、「Python」が追加された
配点については、午前対策が流用できる範囲や、文系の分野が減少した印象です。特に問6以降は午前対策が通用しにくいため、午後用の勉強を以前よりしっかり行う必要があるでしょう。
「COBOL」の廃止については、大学などで教育内容として利用が減少しており、試験でも選択者が減っています。そのため、2020年春季試験からは「COBOL」が「Python」へと変更されました。

午後の試験対策については、こちらの記事で詳細に解説していますので、気になる方はご参照ください。
基本情報技術者試験の難易度は
試験の合格点
試験の合格点は、午前・午後共に60点となっています。平均で60点を超えていても、片方が60点を下回った場合は不合格の可能性が高いため注意が必要です。
また、試験要綱に以下記載があります。
試験結果に問題の難易差が認められた場合には,ITパスポート試験以外の試験区分では基準点の変更を行うことがある。
つまり、極端に難易度が高かった場合は、自己採点で60点を下回っていても合格の可能性がありますが、逆に難易度が低かった試験では、60点を超えていても不合格の可能性があります(合格点が上がった例は聞いたことがありませんが)。
確実に合格を目指すのであれば、午前・午後共に70点以上は取れるように学習をすすめるといいでしょう。
試験の合格率
ここ10年程度の合格率は、25%前後で推移しています。
決して簡単な試験とはいえませんが、IT関連を学び始めた初心者の方が腕試しで受けていることも多いため(昔の私とか)、真面目に勉強すれば十分合格できる試験といえます。
試験の勉強時間
試験の勉強時間は人によって大きく変わります。
現役のSEや、大学で1年程度学習した人であれば、50時間あれば合格ラインに達することも難しくありません。余裕をもって合格を狙うラインでも、100時間集中すれば到達可能といった印象です。私が受験した際は、大学1年終了後、50時間程度の勉強で若干余裕をもって合格することができました。
一方、全くの初心者の場合、プログラミングや設計にかかわる考え方など、馴染みのない内容を学習していく必要があります。初心者で確実に合格を目指すのであれば150~200時間程度の勉強時間は欲しいところです。効率的に学習しても、100時間はかかると考えて準備をした方が安全でしょう。
勉強時間に関する詳細な分析は、以下の記事にまとめてありますので、興味がある方は参考にしていただければ幸いです。
基本情報技術者試験を受けるなら10~20代がおすすめ
基本情報技術者試験は、しっかり準備して挑めば決して難しい試験ではありません。大学生であれば、春休みの期間に毎日2~3時間勉強すれば、IT関係初心者でも合格が狙えるレベルです。
IT業界を志すのであれば、就職・キャリアアップにも使えるため、10~20代のうちに取得しておくと良いでしょう。
また、既にIT業界就職している場合も、若いうちであればキャリアアップや社内の評価を上げることにつながります。報奨金がもらえることもありますので、是非チャレンジしてみてください。