基本情報技術者試験とは?就職への活用、難易度、試験の特徴について
IT業界を志す人であれば、「基本情報技術者試験」を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。とくにIT関連の大学に入学したばかりだったり、文系からIT業界に入った新入社員の方には
- 「基本情報技術者試験」ってどんな内容の試験?
- 「基本情報技術者試験」は自分が受けるべき試験なの?
- 「基本情報技術者試験」に合格するには、どんな勉強が必要?
と疑問に思っている人も多いのではないかと思います。
今回は、IT業界の登竜門ともいえる、基本情報技術者試験について
- 基本情報技術者試験はどんな人向けの試験か?
- 基本情報技術者試験は就職に有利? 意味ない?
- 基本情報技術者試験の特徴
- 基本情報技術者試験の難易度
- そもそも基本情報技術者試験ってどんな試験?
といった内容について解説したいと思います。
基本情報技術者試験はどんな人向けの試験か?
社会的な評価から、基本情報技術者試験は以下の人におすすめの試験といえます
- IT関連での就職を考えている学生
- 幅広く資格を取得しておこうと考えている学生
- IT業界未経験で転職を考えている人
- IT業界に入ったばかりの新入社員
- IT関連の学部への進学を考えている高校生
基本情報技術者試験は、学生の就職活動や、IT業界の新入社員が設定する学習目標、キャリアアップ過程での取得に向いている試験です。
また、大学入学共通テストの情報関係基礎の難易度は「基本情報技術者試験よりやや低く、ITパスポート試験よりは高い」とされていまする。2025年からは「情報」を出題教科に追加指定とのことですので、今後は高校生であっても需要が増してくるのではなかと思います(もちろん、情報関係基礎を選択できる場合ですが)。

基本情報技術者試験に合格するメリットについては、以下の記事に詳細にまとめてありますので、興味がある方はご参照ください。
基本情報技術者試験は就職で有利? 意味ない?
正直に言えば、必ずしも有利であるとまではいえません。企業と求める人材の組み合わせによっては、大卒で取得してもほぼ意味がないこともあります。
ただ、IT業界に入った新人が取得をすすめられるレベルということもあり、就職活動で有利に働く可能性は高い資格です。ですので
- IT業界での就職を希望している
- 真面目に勉強できる人材であることをアピールしたい
といった場合は、取得して損はない資格といえます。
基本情報技術者試験は、文系の就職で有利?
先にも述べた通り、「企業や求める人材による」とはいえますが、私の周で文系からIT業界に入った人では、取得を進められた人が何人もいます。
そういった意味でも、文系大卒や、全くの他業界からの転職であれば、取得しておいた方が有利である可能性は高いです。
企業から見れば、最低限の知識があることが保証され、教育コスト削減にもつながります。
ただし、基本情報技術者試験に合格しただけでは、基本的に現場では歯が立ちません。「即戦力にはなれない」ことは承知の上で合格を目指しましょう。
基本情報技術者試験は、テクノロジ系の就職で有利?
文系に対して、テクノロジ系(工学部、情報学部など)の場合、取得しても意味がないことはあります。
しかし、テクノロジ系の大学生であっても、私は取得しておくことをおすすめします。理由は以下の通りです
- テクノロジ系の人には難易度がそれほど高くない(情報系なら、比較的短時間で取得できる)
- 自己研鑽する人間であることアピールできる
- 一定の知識水準は証明できる
ただし「大学に通っていたが、勉強についてアピールできない」といった人が、最低限の努力を保証するレベルです。知識が豊富であるとか、即戦力とは全くみなされないと考えた方が良いです。
テクノロジ系の大卒が前提の求人であり、競争が激しいような企業では、持っていてもほぼ意味がないと思った方が無難です。
基本情報技術者試験は会社で評価される?
IT業界に入った新社会人が求められるレベルということもあり、就職後も一定の評価を得ることが可能な資格です。20代半ばまでに取得すれば、社内で評価を上げられる可能性はあるかと思います。
IT関連の企業では、取得に対して数万円程度の報奨金が支払われることもあります。新人向けとしては価値ある資格として認めている会社が多いと言えます。
一方、キャリアアップを狙った転職では物足りない資格です。とくに、20代後半で、IT業界で数年の経験がある場合は、一つ上の「応用情報技術者試験」以上の取得を狙いたいところです。



基本情報技術者試験の特徴は?
CBT方式で実施される
令和2年秋試験以降、基本情報技術者試験はCBT方式(コンピュータで受験する方式)になりました。
自宅での受験ではなく、全国の試験会場にあるコンピュータを利用して試験を行います。
ちなみに、ITパスポート試験用ですが、CBT疑似体験ソフトウェアがあります。CBT試験をやったことがない人は、参考にしてみてもいいでしょう。



試験は午前と午後にわかれる
基本情報技術者試験の特徴としては、午前の試験と午後の試験に分かれるところがあげられます。午前は多肢選択式(四肢択一)、午後は多肢選択式(大問形式)となっています。
どちらが難しいと感じるかは人によって異なります。
午後の試験のほうが難しいと感じる人が多く、実際に午後の方が合格基準に達する人は少ないです。
ただし、IT関連の業務経験や、学校でプログラミングを学習したことがある人の場合、知識不足で午前の試験だけ合格基準に達しない人もいます。



午前試験と午後試験を別に受験できる!
CBT方式に変更されたことに伴い、午前試験と午後試験を別の日に受験できるようになりました(同じ日も可能)。
これがかなり有利には足りている可能性があり、CBT方式になってから合格率がほぼ倍増しています。
例えば
- 午前問題だけ勉強し、流用された過去問で合格
- 苦手な午後試験の問題に集中し、午後試験は後から合格
といった形で勉強すると、文系でIT業界未経験でも、比較的容易に取得可能です。
午前試験の特徴(過去問が重要)
午前試験の内容は以下の通りです。
- 試験時間:150分
- 出題数:80問
出題内容は、毎回ほぼ決まった分野から決まった数が出題されており、以下のとおりです。
- 問1~50:テクノロジ系
- 問51~60:マネジメント系
- 問61~80:ストラテジ系
ちなみに、令和元年度秋期試験から、午前試験については以下の見直しが実施されました。
(3)午前試験での数学に関する出題比率の見直し(適用時期:2019年の秋期試験から)
・理数能力を重視し、線形代数、確率・統計等、数学に関する出題比率を向上
テクノロジ、マネジメント、ストラテジからの出題数に変化はありませんでしたが、それぞれの分野における数学の絡む問題は、以前より出題比率が上がっています。
また、出題傾向の特徴としては、「過去問からの出題が非常に多い」ことがあげられます。実に半数程度が何らかの形で過去に出題された問題を、そのまま流用という状態です(応用情報技術者試験からの流用もあります)。
また、流用以外の問題についても、過去問を幅広く解いた知識があれば、午前試験は多くの問題が解答可能なレベルとなっています。一部に最新技術の分野などから新出の問題もありますが、常識の範囲で解けなければ捨てるべき問題と思いましょう。効率を重視するなら過去問演習一択です。
午前の試験対策については、こちらの記事で詳細に解説していますので、気になる方はご参照ください。
選択式の午後試験
午後試験の内容は以下の通りです。
- 試験時間:150分
- 出題数(2020年春試験から):11問(内5問を解答)
午後試験の出題範囲は以下の通りです。
問番号 | 分野 (T:テクノロジ、S:ストラテジ、M:マネジメント) |
選択方法 | 配点 | ||
出題数 | 回答数 | ||||
問1 | T | 情報セキュリティ | 1問必須 | 20点 | |
問2~4 | T | ハードウェア・ソフトウェア、データベース、ネットワーク、ソフトウェア設計 | 4分野から3問出題 | 2問 | 各15点 |
問5 | M・S | プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム戦略、経営戦略・企業と法務 | 4分野から1問出題 | ||
問6 | T | データ構造及びアルゴリズム | 1問必須 | 25点 | |
問7~11 | T | ソフトウェア開発 (C、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフト) |
5問 | 1問 | 25点 |
合計 | 11問 | 5問 | 100点 |
問1と問6は必須。問2~5からは選択で2問、問7~11は5問のうち1問。合計5問に回答することになります。
選択式なので、早い段階で学習する分野を絞った方が効率的です。
また、「データ構造及びアルゴリズム」と「ソフトウェア開発」以外の分野については、午前対策をしっかり行っておけば、基礎知識までは身に着けられるレベルとなっています(マネジメント・ストラテジ系は稀に難問がでますが)。問1~5については、まずは午前試験の対策から始めていくといいでしょう。
一番の悩みどころはソフトウェア開発。とくにプログラミング未経験者には厄介です。どの問題を選択するべきかですが
- プログラミングの経験がある人は該当の言語
- プログラミングの経験がない人で、今後プログラミングを学習予定の人は、学習予定の言語
- プログラミングの経験がなく、学習予定も未定の人は表計算ソフト
がおすすめです。私の通っていた大学では、プログラミングが苦手な人はアセンブラがおすすめ(難易度が低い)という意見もありましたが、経験がない人はあえて選ぶ必要は高くないかと思います。
試験問題で登場するプログラムの内容は、自分で作るには難しく、面食らう可能性が高いですが、自力で作成できる必要も、全てを読み解く必要もありません。プログラムの要所を読めれば回答が可能ですので「全てを理解する必要はない」と考えて、気楽に挑みましょう。
ちなみに、2020年春季試験からは「COBOL」が「Python」へと変更されました。「COBOL」の廃止については、大学などで教育内容として利用が減少しており、試験でも選択者が減ってきていたので、自然な流れかなと思います。
午後の試験対策については、こちらの記事で詳細に解説していますので、気になる方はご参照ください。
基本情報技術者試験の難易度は
試験の合格点
試験の合格点は、午前・午後共に60点となっています。平均で60点を超えていても、片方が60点を下回った場合は不合格の可能性が高いため注意が必要です。
確実に合格を目指すのであれば、午前・午後共に70点以上は取れるように学習をすすめるといいでしょう。
試験の合格率(2020年秋試験から急上昇)
2019年までの試験では、長く合格率25%前後で推移していました。
しかし、2020年秋の試験から合格率が50%前後と急増しています。
原因としては、以下のようなものが考えられます
- 午後試験の試験制度変更の影響
- CBT方式は午前と午後を別で受験できるので、勉強しやすい
- コロナ影響で延期があったため、勉強時間が十分に取れた
試験内容自体は簡単になってはいないかと思いますが、制度上の要因によって、
試験の勉強時間
試験の勉強時間は人によって大きく変わります。
現役のSEや、大学で1年程度学習した人であれば、50時間未満で合格ラインに達することも難しくありません。実際、私が受験した際は、大学1年終了後、50時間程度の勉強で余裕をもって合格できました。
一方、全くの初心者の場合、プログラミングや設計にかかわる考え方など、馴染みのない内容を学習していく必要があります。初心者で確実に合格を目指すのであれば150~200時間程度の勉強している人は多い印象です。効率的に学習しても、100時間はかかると考えて準備をした方が安全でしょう。
勉強時間に関する詳細な分析は、以下の記事にまとめてありますので、興味がある方は参考にしていただければ幸いです。
そもそも基本情報技術者試験とは
念のため、最後に「基本情報技術者試験ってどんな試験?」ということについて解説します。
試験の情報は常に更新される可能性がありますので、実際に受験する際は、一度は公式サイトで最新の情報をご確認ください。
試験概要
基本情報技術者試験とは、情報処理技術者試験(IPAが運営する情報処理関連の国家試験)の一つです。4段階あるレベルの中では下から2番目のレベル2。一つ下が「ITパスポート試験」、一つ上が「応用情報技術者試験」です。
公式で利用される略称は「FE」。「Fundamental Information Technology Engineer Examination」の略です。
レベル4も含めて受験資格は存在しないため、レベル4からの受験も可能となっていますが、学生やIT業界に入ったばかりの新社会人が受験するならば、基本情報技術者試験が比較的ポピュラーな資格といえます。
ちなみに、個人的には時間に余裕がある学生であれば、基本情報技術者試験よりも応用情報技術者試験の方がおすすめです。学生で応用情報技術者試験に合格している人は比較的少なく、周囲に差をつけることができます(基本情報の合格者の平均年齢は25歳程度。応用情報は30歳程度)。
応用情報技術者試験については、以下の記事に基本的な情報をまとめていますので、興味がある方は参照して頂ければと思います。
基本情報技術者試験の位置づけ
独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)が想定する「対象者像」は以下のとおりです。
高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者 (基本情報技術者試験(FE) ~ ITエンジニアの登竜門 ~)
要するに、IT業界で働く人が身に着けるべき、基礎的な知識・技能が問われる試験となります。
基本情報技術者試験の制度
試験の日程
試験は春と秋の二回CBT方式で実施され、以下のようになっています。
スケジュールについては、若干の前後があり得ますので、受験の際は最新の情報をご確認ください。
- 申込日:4月中旬~6月中旬頃
- 受験日:5月上旬~6月下旬頃
- 合格発表:受験が完了した月の翌月下旬(予定)
- 申込日:9月中旬~11月中旬頃
- 受験日:10月上旬~11月下旬頃
- 合格発表:受験が完了した月の翌月下旬(予定)
集中して学習する時間があれば、1ヶ月でも合格可能な試験です。ただし、会場が空いているかにも左右されますので、受験する場合は早めの申込をおすすめします。
受験料
受験料は5,700円でしたが、2020年4月から実施する試験は7,500 円となります。
理由は「印刷や運搬費用、会場借料等の値上がり、新型コロナウイルス対策」とのことです。
受験資格・注意点
受験資格はないため、実務経験のない学生でも受験を受けることは可能です。
その他の注意事項としては、受験票に忘れず写真を貼り付けて持っていくことなど、通常の資格試験と概ね同じ内容です。
受験票紛失時の再発行手続や、細かな注意事項については、試験の案内書に記載されています。心配な方はIPAのホームページの「受験申込み」→「案内書」で確認するといいでしょう。
基本情報技術者試験を受けるなら10~20代前半がおすすめ
基本情報技術者試験は、しっかり準備して挑めば決して難しい試験ではありません。
例えば、大学生なら春休みに毎日2~3時間勉強すれば、初心者でも合格が狙えるレベルです。
IT業界を志すのであれば、就職・キャリアアップにも使えるため、10~20代前半のうちに取得しておくと良いでしょう。
また、既にIT業界就職している場合も、若いうちであればキャリアアップや社内の評価を上げることにつながります。報奨金がもらえることもありますので、是非チャレンジしてみてください。