【基本情報技術者】絶対にマネしてはいけない、よくある失敗と不合格体験記
基本情報技術者試験は、IT業界を志す人や、IT業界の新入社員が受験するレベルの試験。いわば「初心者向け」の試験です。
一つ下のレベルの資格に「ITパスポート試験」がありますが、IT業界で働くことを考えるのであれば「基本情報技術者試験」がスタートラインといってもいいでしょう。
そんな基本情報技術者試験ですが、おおむね合格率は25%前後(CBT方式になってからは、45%前後)。不合格になる可能性も十分あり、かくいう私も一度目の受験で不合格になった経験があります。
今回は、そんなわたし自身の失敗体験も交えながら「基本情報技術者試験を受験するに当たり、絶対にマネしてはいけない注意点」について解説したいと思います。
【午前試験】不合格の最大の原因は「単純な努力不足」
なぜ午前試験の不合格が「単純な努力不足」といえるのか
まず、午前試験に不合格になってしまう人(過去の私)にいえることですが、これは「単純な努力不足」です。
世の中には「未経験だけど20時間で合格できた」なんて人もいます。ですが、そういう人も「午前試験に合格できるだけの知識」をなんらかの方法で身につけています(四択なので、運もあり得無くないですが)。
また、午前試験の6割ほどは過去の情報処理技術者試験からの流用です。その上、その他の問題も、過去問で身につけた知識でほとんど解答が可能です。
出題内容の過半数がそのまま学習できる試験で、合格点に達しないとすれば、それは「単純な努力不足」といえるでしょう。
午前試験における効率と努力の関係
午前試験の対策において、勉強の効率を上げる方法がないわけではありません。
過去問が全く理解できなかったというのであれば、わかりやすいテキストを読みながら理解するといいでしょう。頻出テーマを厳選された過去問題集を利用することでも、効率を上げることは可能です。
また、午前試験では、流用されやすい範囲というものが存在します。「直近10年分の過去問(そのうち直近2回はほぼ流用されませんが)」の対策を徹底していれば、まず不合格にならないことも確かです。結果的には「過去問を繰り返し、わからないものの解説を読む」という「単純な勉強量」がものをいいます。
ですので「午前試験に合格できなかった」という人は、効率的な勉強方法を考えるより、「過去問でしっかり点数を取れるようになること」を意識してください。過去問で9割程度の点数が安定的に取れるようになっていれば(9割を深く理解する必要はありません)、安心して合格を目指すことができるでしょう。
午前試験対策は、経験者ほど要注意
実は若干の学習経験がある人ほど午前試験には注意が必要です。

経験者は、未経験者が難関とする「データ構造及びアルゴリズム」と「ソフトウェア開発」の分野の点数は、当然未経験者よりも容易に合格ラインに届きます。しかし、午後試験は長文の読解問題。手応えとしては難しく感じてしまうため、経験者とはいえ、午後試験の対策を重視してしまう方がいます。
一方、既に学習経験がある上に、4択問題ということもあって、経験者ほど、午前試験の対策はおろそかになりがちです。
結果的に、午後試験にばかり時間を割いてしまい、地道な努力が必要な午前試験の過去問演習が不足する可能性があります。
私の通っていた大学でも、こういった理由から「午前試験の対策だけは、過去問で繰り返し行うように」と、たびたび注意する先生がいました。とくに短期学習で試験に挑む場合、確実に過去問演習ができるよう、スケジュールには注意しましょう。
完璧は目指さない
努力が重要な午前試験ではありますが、努力する上で一点だけ注意してほしいことがあります。
それは「完璧は目指さない」こと。とくに「出題された問題の選択肢は全てしっかり理解する」という勉強方法は、効率がかなり悪いです。
出題される選択肢の中には、基本情報技術者試験のレベルとして想定されていないものもあります。そういったものが、次回の試験の答えにならないとまではいい切れませんが、学習の優先順位としてはかなり低いのは確かです。
まずは正解の選択肢を理解し、徐々に見慣れた間違いの選択肢も理解していくようにするといいでしょう。
基本情報技術者試験に「午前だけ」「午後だけ」合格のメリットは無い
たまに誤解されている方がいますが基本情報技術者試験では「午前だけ」や「午後だけ」の片方合格にメリットはありません。
この「午前だけ」合格でメリットがあるのは、高度試験(基本情報技術者の、上の更に上の資格)です。高度試験では午前I試験が免除される制度が存在し、恐らくはその制度が誤った形で伝わってしまったのかなと思います。
ただし、基本情報技術者試験には「午前試験を事前に免除する制度」であれば存在します。詳細は以下の記事にまとめてありますので、興味がある方はご参照ください。
午後試験の「ソフトウェア開発(プログラミングや表計算)」にビビってはいけない
ソフトウェア開発の問題で登場するプログラムそのものは、初心者にはかなりレベルが高いです。少なくとも、基礎的な参考書を少しかじった程度では、とても0から作ることができないレベルとなっています。
しかし、午後試験は「プログラムを記述できる」ことが求められる試験ではありません。
求められる能力は「問題文とプログラムの読解能力」です。
ようするに「内容を完全には理解できなかったが、問題に回答するために必要な内容はわかる」だけの力を身につけることができれば、合格を目指すことは十分に可能です。
このことに気づかずにソフトウェア開発の問題に取り組んでしまうと、必要以上の時間をソフトウェア開発に割いてしまうため、結果的に他の学習がおろそかになってしまうことがあります。とくに短期で合格を目指す場合、午前・午後試験全体の学習スケジュールを考えながら、無理なくソフトウェア開発の学習をすすめましょう。
情報系初心者で選択される方の多い表計算については、学習のポイントを別途まとめてあります。興味がある方はご参照ください。
未経験から合格を目指す場合の注意点
未経験から合格を目指す場合、十分な時間がとれるのであれば全体の学習をしっかり行って取り組むようにしましょう。200時間程度かけて勉強すれば、全体の学習を行うことは可能です。
しかし、それほど時間がとれない状態で、短期合格を目指す場合、未経験者が苦手とする午後の科目
- 「データ構造及びアルゴリズム」
- 「ソフトウェア開発」
この2つに対して、どの程度取り組むかは重要なポイントです。
午後試験は、点数がとれる分野・とれない分野を把握する
「点数を稼ぐなら、どの分野を勉強すると効率がよさそうか?」という観点で考えましょう。
「データ構造及びアルゴリズム」と「ソフトウェア開発」ついては、上げられそうな点数の幅が大きくても、苦手な場合は学習に対する時間が大きくなってしまい、結果的にコストパフォーマンスが悪くなる可能性があります。
この2分野については、基礎知識や文章読解力で取れる点数はしっかり稼ぎ、基礎レベルでは解答できない問題については捨ててしまうのも、場合によってはありでしょう。
しかし、2020年春季試験より、上記2科目の配点は上がるため、できれば最初から捨てることはせず、難問以外は点はとれるように学習をすすめたいところです。
まずは自分がどの分野で点数がとれているか、とれていないかを把握するため、午後試験を解いたときの点数から分析してみましょう。その上で「何を解決すれば点数が大きくあがりそうか?」を考えて勉強をすると効果的です。
CBT方式以前の基本情報技術者試験で、合格率が低かった理由
以前の基本情報技術者試験は、おおむね合格率が25%前後と、決して簡単ではなく、合格率はやや低めといっていい試験でした。
しかし近年、CBT方式になってから合格率は大幅に上昇し、合格率は45%前後が多く出るようになりました(R3秋試験時点)。
では、昔に比べて「基本情報技術者試験が簡単になったか?」というと、そうではないという意見が多数派です。
実は、CBT方式以前の基本情報技術者試験は、午前試験と午後試験を連続して受験しなくてはなりませんでした。
ただでさえ長丁場で集中力が削がれるというデメリットもありますが、その上、午前試験と午後試験の試験勉強を、同時にしなくてはならないというのが、最大の難所でした。
午前試験は「過去問流用を期待できるが、細かな知識も問われる暗記科目」なのに対して、午後試験は「知識は午前程ではないが、論理的な思考力が問われる科目」になっています。その為、午前試験と午後試験を同時に受験するということは、それだけ一度に幅広く学習しないと、両方に合格できる点数がとれない試験でした。
一方、CBT方式になってからは、午前試験と午後試験の受験時期を大幅にずらすことが可能です。極端な話「4月1日に午前試験を合格し、午後試験を5月下旬に合格する」ということも可能であり、1.5カ月以上を一方の試験だけの勉強期間に利用可能です。
つまり「CBT方式以前の基本情報技術者の合格率が低かったのは、問題そのものの難易度が違うのではなく、試験制度面での難易度の低下の影響」といえます。
また、あまりにも合格率が変動してしまったため試験日をずらせる期間や、そもそも別日に受験可能な点については、今後何か見直しが行われる可能性もゼロではないかなとは思います。
コラム:CBT方式以前も、実はそんなに合格率は低くない?
基本情報技術者試験の合格率はCBT方式以前は25%程度となっていましたが、実はそんなに合格率は低くないという考えもあります。
もちろん、統計情報が間違っているというわけではありませんが基本情報技術者試験は「大学ですすめられたから受験した」とか「会社で研修の一環として受験させられた」という人がいるのも確かです。
一方、大学や会社で合格をすすめられた人の中には、基本情報技術者試験に合格するための講座を、大学や会社で受けてきた人も含まれます。
そう考えると、必ずしも「大学」や「会社」の影響で合格率が大幅に低下しているとまではいえないでしょう。
どんな合格率であれ、結局合格できるかは自分の実力次第で決まりますので、あまり気にせず勉強をすすめていただければと思います。
実例:狒々山の不合格体験記

- 年齢18歳
- 大学入学まで、ネットサーフィンすらまともにやってない
- 携帯・スマホはなし。大学に入ってからノートPCを所持
- 大学入学し、半年IT関連を学習した
- 週15~20時間程度のアルバイトと大学の授業(最大まで受講)以外は自由時間
- 資格試験は大学入学後に受験した「漢検2級」が最後。その前は中3で受けた「漢検3級」
わたしが不合格になってしまった流れは以下のとおりです
- 勉強を開始したのは、試験まで1ヶ月程度になってから
- 午前・午後試験を一通りやって、ソフトウェア開発にビビる
- 午後試験対策に絞って学習をすすめる
- 結果、午後試験は合格。午前試験は不合格
勉強を開始したのは、試験まで1ヶ月程度になってから
試験まで1ヶ月程度になってから勉強をはじめること自体は悪いことではありません。
しかし、短期決戦にも、いい短期決戦と、悪い短期決戦があります。
あえて困難な状況に置くことにより、モチベーションを上げる
不合格になってもいいので、とりあえず直前になってから勉強する
わたしは今でも通常想定される勉強期間より、かなり短期で試験に挑むことがあります。これは自分の実力に自身があるからなどではなく「その方が凄いことをやってる気分になってモチベーションが上がるから」です。
ばかみたいな理由ですが「小学1年生でも解ける問題」に正解するより「東大生でも頭をひねる問題」に正解したほうが嬉しいものです。その精神的な高揚を利用できるので、あえて難関試験にギリギリのスケジュールで挑むことがあります(科学的な根拠もありますが、説明は割愛します)。
一方、失敗するのは「直前になってしまった…」タイプ。この状態に追い込まれると、精神的に高揚するどころか「いままで勉強してなかったのに、いまから突然勉強なんて始められるのか?」と疑問すら感じられます。
とくにその勉強していなかった理由が「不合格になってもいいから」というのであれば、かなりモチベーションは上げにくいです。当時のわたしはまさにこの状態であったため、勉強期間が短期であったにもかかわらず、勉強時間はせいぜい1日1時間程度。それ以上努力する気がおきませんでした。
午前・午後試験を一通りやって、ソフトウェア開発にビビる
勉強開始直後に午前・午後試験を一通りおこなったこと自体は悪いことではありません。
とくに直前の時期からの勉強となってしまうと、自分の能力と試験のレベルを確認するために、一通り実際の試験の内容にふれてみることは有効だと思います。
しかし、その際に試験のレベルを誤認してしまっては意味がありません。
わたしの場合「ソフトウェア開発」で出題された問題にビビりました。大学で習ったプログラミングの内容を明らかに超えたプログラムが出題されていたため、これが攻略できなければ合格にはいたらないと考えてしまいました。
しかし、実際に必要だったのは「問題に回答するだけの読解力」です。
こういった試験に対する誤認は、行うべき勉強を誤った方向に進めてしまうため注意が必要です。
午後試験対策に絞って学習をすすめる
誤った認識のまま、誤った対策をすすめてしまいました。
現実的には、午後試験の出題形式になれることが自分には必要であり、残った時間は午前試験の過去問演習に全て費やすべきでした。
しかし、低いモチベーション(次の春までに合格できればいいや)であったこともあり、勉強時間を増やすこともなく、午後試験の対策以外には時間を使いませんでした。
結果、午後試験は想定外に余裕を持って合格、一方の午前試験はわずかに点が足りず不合格となってしまいました。
失敗体験の反省点
反省点をまとめると、以下の2点です。
- 「来年の春季試験で合格すればいいや」という低いモチベーション
- 事前調査不足による、試験に対する誤った認識
「〇〇までに合格できればいいや」という考え方自体は、必ずしも間違った考え方ではありません。わたしが受験した1回目の基本情報技術者試験も、午前の4択問題で少し運がよければ合格できたため「合格できればラッキー」という気分でも実際に合格できることがあり、実際に合格できてしまえば「たった30時間で合格」といえてしまうからです。
しかし、結果的に機会や受験料を失ったことも確かです。
半年後、わたしは再受験して合格していますが、1回目の勉強にもっと集中していれば、総合的に見た勉強時間は削減できましたし、受験料も半額ですんだはずです。
また、わたしは半年後に合格できただけましな方で、一度不合格が癖になると、そのまま中途半端勉強を続けてしまい、ずるずると不合格が続いたり、諦めてしまうこともあります。
こういった理由から「次があるからいいや」程度の低いモチベーションで受験することは、おすすめとはいえません。
また、モチベーション以上に失敗点があったとすれば、それは事前調査不足です。
大学で「経験者には午後試験よりも午前試験に苦戦する人がいる」と聞いたにもかかわらず、わたしはその意味を考えず、午後試験の「ソフトウェア開発」に力を注ぎすぎてしまいました。
当時の自分はネットサーフィンすらまともにやっていない状況でしたので、試験にたいして事前調査をするという行為がほとんど身についていませんでした(せいぜい参考書の冒頭にある試験の概要に目を通す程度)。
どんな試験にもいえることですが、試験の最新情報や傾向について調査し、計画をたてることは、適切な試験対策を行うために重要です。ここは手を抜かないようにしましょう。

基本情報技術者試験は、努力を積み重ねれば合格できる
基本情報技術者試験は、選択式の試験ですが、運だけで簡単に合格できる試験ではありません。
中には日本語能力だけで解けるようなサービス問題もありますが、それだけをあてにして合格できる試験ではなく、午前は幅広い知識、午後はある程度の実力が求められます。
しかし、不合格の理由のほとんどは「勉強量が足りていない」というものであり、「勉強方法が間違っていた」という場合も、そもそも十分な勉強時間が確保できていれば(初心者が合格できる水準が200時間程度)合格ができているものと思います。
確実な合格を目指すためにも、事前調査も含めて計画的に学習をすすめていただければと思います。
また、独学で合格を目指す場合の参考書の比較について、以下の記事にまとめました。これから学習を進める方の参考になれば幸いです。