【基本情報技術者】統計情報・合格率から読み解く! 難易度・勉強時間は?
基本情報技術者試験について調べてみると、統計情報や合格率など、難易度についての情報が色々と確認できると思います。
例えば、勉強時間であれば
- 経験者なら、10時間で十分
- 経験者でも、100時間ほしい
- 未経験でも100時間あれば十分
- 未経験で200時間勉強してギリギリだった
- 何度も落ちて、合格まで500時間以上かかった
など、人によって勉強時間に対する意見はさまざまです。
これは、「日常的にどの程度IT関連の知識をつけているか?」「試験勉強をどれだけ効率的にできたか?」「資格試験の勉強にどの程度慣れているか?」といった各個人の状況によって、勉強時間が変わってくることが原因かと思います。
同じIT関連の学習をしたことがない人でも、「最新のIT技術に興味がある人」と「日頃パソコンにほとんど触れない人」とでは、差は確実に大きいはずです。数学的な考え方が得意な人と不得意な人でも、勉強時間に差がでます。
そこで今回は
- 試験の概要から、どの程度の難易度であるか
- 試験の統計情報から、どの程度の難易度であるか
- 試験の合格率はどの程度か?
を中心に、解説してみたいと思います。
本記事で解説している試験概要や、統計情報の詳細については、以下に掲載されておりますので、興味がある方はご確認いただければと思います。
基本情報技術者試験の合格者数・合格率は?
基本情報技術者試験の合格者数や合格率などの情報をまとめると、以下のようになります。
実施時期 | 応募者数 | 受験者数 | 受験率 | 合格者数 | 合格率 |
R5年6月 | 10,557人 | 9,141人 | 86.6% | 4,802名 | 52.5% |
R5年5月 | 10,933人 | 9,724人 | 88.9% | 5,322人 | 54.7% |
R5年4月 | 11,294人 | 10,513人 | 93.1% | 5,928人 | 56.4% |
R4年秋期 | 63,776人 | 55,500人 | 87.0% | 19,780人 | 35.6% |
R4年春期 | 53,739人 | 46,023人 | 85.6% | 18,215人 | 39.6% |
R3年秋期 | 60,475人 | 52,831人 | 87.4% | 21,167人 | 40.1% |
R3年春期 | 37,004人 | 32,238人 | 87.1% | 13,522人 | 41.9% |
R2年秋期 | 60,411人 | 52,993人 | 87.7% | 25,499人 | 48.1% |
R1年秋期 | 91,700人 | 66,870人 | 72.9% | 19,069人 | 28.5% |
H31年春期 | 77,470人 | 54,686人 | 70.6% | 12,155人 | 22.2% |
H30年秋期 | 82,347人 | 60,004人 | 72.9% | 13,723人 | 22.9% |
H30年春期 | 73,581人 | 51,377人 | 69.8% | 14,829人 | 28.9% |
H29年秋期 | 76,717人 | 56,377人 | 73.5% | 12,313人 | 21.8% |
H29年春期 | 67,784人 | 48,875人 | 72.1% | 10,975人 | 22.5% |
H28年秋期 | 75,095人 | 55,815人 | 74.3% | 13,173人 | 23.6% |
H28年春期 | 61,281人 | 44,184人 | 72.1% | 13,418人 | 30.4% |
H27年秋期 | 73,221人 | 54,347人 | 74.2% | 13,935人 | 25.6% |
H27年春期 | 65,570人 | 46,874人 | 71.5% | 12,174人 | 26.0% |
H26年秋期 | 74,577人 | 54,874人 | 73.6% | 12,950人 | 23.6% |
H26年春期 | 65,141人 | 46,005人 | 70.6% | 11,003人 | 23.9% |
H25年秋期 | 76,020人 | 55,426人 | 72.9% | 12,274人 | 22.1% |
H25年春期 | 66,667人 | 46,416人 | 69.6% | 10,674人 | 23.0% |
H24年秋期 | 79,674人 | 58,905人 | 73.9% | 15,987人 | 27.1% |
H24年春期 | 75,085人 | 52,582人 | 70.0% | 12,437人 | 23.7% |
H23年秋期 | 82,090人 | 59,505人 | 72.5% | 15,569人 | 26.2% |
H23年特別 | 88,001人 | 58,993人 | 67.0% | 14,579人 | 24.7% |
H22年秋期 | 100,113人 | 73,242人 | 73.2% | 17,129人 | 23.4% |
H22年春期 | 92,108人 | 65,407人 | 71.0% | 14,489人 | 22.2% |
H21年秋期 | 107,800人 | 79,829人 | 74.1% | 28,270人 | 35.4% |
H21年春期 | 90,752人 | 64,544人 | 71.1% | 17,685人 | 27.4% |
R1秋期までについては、受験者の75%前後が不合格であること考えると、簡単な試験とはいえないことがわかります。
ただ、CBT方式で受験可能になったことに伴い、試験制度上の難易度が下がり(当時の午前試験と午後試験(現:科目Aと科目B)を別に日に受験し、バラバラに対策できるようになった)R2秋期からの合格率は大幅に上昇しました。
その後、R5年4月より試験が大幅に改定され、合格率は50%以上と、昔と比べて倍以上になりました。科目A試験と科目B試験(旧:午前試験と午後試験)を別日で受験できなくなった上で、この合格率の上昇なのですから、試験の難易度は簡単になったと言えるでしょう。
統計情報から、基本情報技術者試験の難易度を読み取る
どんな仕事をする人が受験しているか
一番多い業務はプログラム開発
平成31年の統計資料を見ると、「その他・無記入」を除く、27,371人の回答の内、10,245人が業務内容に「プログラム開発」をあげています。
これは2位、3位のシステム設計(3,762人)、ITサービスマネジメント(3,744人)と比べても大きく差がありますので、今後もこの傾向が続くのではないかと思います。
かくいう私も、一時はプログラマーを目指して学習を進めていた経緯があります。現在の業務はネットワーク技術支援に区分されると思いますが、こちらも受験者の1,001人で、決して少なくはありません。
プログラム開発・システム設計はどんな仕事?
受験者の業務で1位、2位のプログラム開発、システム設計。ざっくりとどんな仕事かといえば、こんな感じです。
- 設計されたシステムの通り、プログラムを開発する
- 開発したプログラムについてテストを行う
- お客様からシステムの要望を聞き取り、要件を定義する
- システムの設計書の作成を行う
- システムのテストについてもプログラマーといっしょにテストを行う
- 開発したシステムについて、トラブルが発生した場合の対処を行う
念のために断っておきますと、現実はこんなに簡単には割り切られていません。
プログラマーでもシステムエンジニアと同じように要件定義を結局やることはありますし、お客様とのトラブルも結局プログラマーで対処することもあります。「プログラム作るのは好きなのに、お客様からの無理難題をつきつけられてやる気を失ってしまった…」なんてプログラマーもそこそこいます(自分の友人とか)。
また、プログラマーとして就職しても、気づいたらIT関連で営業を行っていた友人や、何故かネットワークエンジニアやってる人(私です)とかもいます。基本情報技術者試験は、IT関連全体の知識が出題されますので、IT関連であればけっこう幅広い業種で利用できるでしょう。
どんな学歴の人が受験しているか
統計情報を確認して驚きましたが、受験者で一番多いのは「情報系以外の文系大学卒」で、8,751人。ついで「理工系の情報系大学卒」で、5,599人となっています(平成31年度春期試験の応募時)。
現在は、IT業界の人材不足のためか、未経験からでも就職できる会社は多く、実際にわたしの職場の若手社員も、大半は文系出身となっています。
このことから、「理系文系にかかわらず、IT業界で活躍する人」が取得を目指していることがわかります。
合格者の平均年齢・最年少・最高齢は?
基本情報技術者試験の合格者の平均年齢、最年少・最高齢の年齢は以下の通りです。
実施時期 | 合格者平均年齢 | 最年少合格者 | 最高齢合格者 |
30年秋期 | 24.8歳 | 13歳 | 69歳 |
30年春期 | 25.0歳 | 14歳 | 70歳 |
29年秋期 | 24.7歳 | 14歳 | 64歳 |
29年春期 | 25.1歳 | 13歳 | 64歳 |
28年秋期 | 24.6歳 | 14歳 | 66歳 |
28年春期 | 25.3歳 | 14歳 | 67歳 |
27年秋期 | 24.9歳 | 12歳 | 66歳 |
27年春期 | 25.5歳 | 13歳 | 66歳 |
26年秋期 | 24.5歳 | 14歳 | 61歳 |
26年春期 | 25.8歳 | 14歳 | 65歳 |
25年秋期 | 24.6歳 | 13歳 | 64歳 |
25年春期 | 25.4歳 | 13歳 | 65歳 |
24年秋期 | 25.3歳 | 10歳 | 65歳 |
24年春期 | 25.0歳 | 13歳 | 65歳 |
23年秋期 | 25.3歳 | 14歳 | 66歳 |
23年特別 | 25.2歳 | 14歳 | 61歳 |
22年秋期 | 25.3歳 | 13歳 | 75歳 |
22年春期 | 26.2歳 | 13歳 | 67歳 |
21年秋期 | 26.0歳 | 14歳 | 75歳 |
21年春期 | 26.3歳 | 15歳 | 63歳 |
受験者の多くが大学生~新入社員くらいであるため、合格者の平均年齢は25歳前後となっています。また、趣味で受ける人が少ないからか、最年少は中学生程度、最高齢は65歳程度が多いようです。
ちなみに、より上位の資格であるレベル3、レベル4の試験でも小学生の合格者はいます。IT関連という比較的学校では学ぶ経験が少ない分野ですので、合格できるかどうかは本人の努力次第といえるかもしれません。
試験概要から、基本情報技術者試験の難易度を読み取る
基本情報技術者試験の位置づけから読み取れる難易度
まずは、IPAのホームページに掲載されている、基本情報技術者試験の位置づけです。
対象者像は「ITを活用したサービス,製品,システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者」となっています。
ようするに「IT業界で働くための基礎知識や技術を持っている人」を対象とした試験となります。
この対象者像からも「既にIT業界で何年も働いている人」よりも「これからIT業界で働くことを考えている人」や「最近IT業界に就職した人」を受験者として位置づけていることがわかります。
ただし、実はこの対象者像は、以前と「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」なっておりました。このことから、試験改定によって難易度は意図的に下げられていると考えることができます。
また、期待する技術水準については、以下のように記載があります。
ITを活用した戦略の立案、システムの企画・要件定義、設計・開発・運用に関し、担当する活動に応じて次の知識・技能が要求される。
- IT全般に関する基本的な事項を理解し、担当する活動に活用できる。
- 上位者の指導の下に、IT戦略に関する予測・分析・評価に参加できる。
- 上位者の指導の下に、システム又はサービスの提案活動に参加できる。
- 上位者の指導の下に、システムの企画・要件定義に参加できる。
- 上位者の指導の下に、情報セキュリティの確保を考慮して、システムの設計・開発・運用ができる。
- 上位者の指導の下に、ソフトウェアを設計できる。
- 上位者の方針を理解し、自らプログラムを作成できる。
これらの内容からも「社会人として最低限度のIT知識を持っているよりも、更に上の技術水準」が求められることがわかります。
一方、個別の項目を見ると「基本的な」や「上位者の指導の下に」という記載から、業務の中心となって、全体をまとめるレベルではなく「IT関連を中心とした業務にあたってはいるが、内容は基本的であり、上司の指導の下で活動するレベル」が期待されるレベルであることがわかります。
以上の公式の位置づけからも、試験の難易度は「IT関連企業の新人」レベルが受験することを想定して水準に調整されていることがうかがえます。
必要な受験資格は?
基本情報技術者試験に必要な受験資格はありません。
IT人材不足の日本で、IT業界の登竜門ともいえる基本情報技術者試験に受験資格を設けるとは現状では思えません。前身となる第二種情報処理技術者試験から50年ほど受験資格不要でしたので、今後も受験資格は不要のままと考えられます。
ちなみに、基本情報技術者試験は、「情報処理技術者試験」のレベル2(下から2番目)になります。上位にレベル3とレベル4の資格がありますが、全て受験資格はありません。努力次第では未経験の独学でも、最上位資格の合格を目指すことは可能となっています。
下位・上位資格との難易度の違い
難易度・勉強時間について調べていると、気になるのが下位・上位資格とのレベルの違いです。基本情報技術者試験には、下位に「ITパスポート試験」、上位に「応用情報技術者試験」があります。確保できる勉強時間や自分の立場から「どの試験を受験すべき?」と悩む人は多いのではないかと思います。
ざっくりレベルを解説すると、以下の通りです。
- ITパスポート試験
→社会人として求められる基本的にIT関連知識・技術レベル(IT業界に限らない) - 応用情報技術者試験
→IT業界で上位者として業務にあたる知識・技術レベル(とはいえ、未経験でも合格可能)
求められる知識・技術から、「自分がどの試験を受けるべきか?」は以下のように考えるといいでしょう。
- ITパスポート試験
→IT関連にかかわらず資格をとって就職を有利にしたい人
→IT関連の社会常識を身に着けたい人 - 基本情報技術者試験
→IT業界に就職を考えている人
→IT業界に就職したばかりで、基礎知識を身に着けたい人 - 応用情報技術者試験
→IT業界に就職を考えており、IT関連の知識や勉強に自信がある人
→IT業界に就職し、後輩が増えてきた人(20代後半~30代前半ほど)
ちなみに「独学でも取得できるか?」についてですが未経験でも努力次第で「応用情報技術者試験」も独学で合格できます。私はIT関連から3年離れた後、1.5カ月程度の独学で、応用情報技術者試験に合格し、その上の情報セキュリティスペシャリストも合格できました。
ただし、最初から「応用情報技術者試験」の受験では、不合格のリスクも高いですし、途中で挫折する可能性もあります。未経験・知識に自信がないのであれば、まずは「基本情報技術者試験」の受験をおすすめします。
勉強時間に関する分析
例えば、「基本情報技術者試験ドットコム」では、標準的な勉強時間として180時間を掲げています。
ただし、これは2023年の改定前からの数値です。例えば、大手資格予備校のTACは、試験改定後は合格を目指すための勉強時間に平均125時間を掲げています。大手予備校は、合格率が極めて高いレベルでの時間を提示することが多いため、リスク覚悟の受験であれば、更に大幅に短い時間での合格もあり得ます。
また、試験改定前の時点で、他の人の学習時間も調べてみましたが、その結果はだいたい
- 初心者(旧試験):150~250時間
- 経験者(旧試験):50~100時間
の範囲に収まる意見となっていました。このことからも、現在は更に短い勉強時間での合格が可能であり、初心者であれば100~150時間、経験者であれば50時間前後での合格ができる可能性は高いと考えられます。
また、試験改定前からたまに「未経験だけど、50時間未満で合格できた」という意見もあります。これも現実に可能だと私は思いますが
- 普段から色々な知識を身に着けている(IT関連の常識がある)
- 勉強に慣れている
- 十分な事前調査がでてきる(経験者から助言をもらえるとなおよい)
といった条件がそろっていないと、やや難しいと思います(基本情報技術者試験は選択式なので、運もある程度点を左右します)。未経験から短時間で合格を目指す場合でも、余裕をもって100時間は確保した方が、柔軟にスケジュールを組めるかと思います。
勉強時間について、私の考えをまとめると、以下の通りです。
- 0~20時間:学習経験ありで、不合格の可能性があってもいいから、短期で合格したい人向け。未経験からの学習なら、運がかなり必要と覚悟した方がいい。
- 20~50時間:学習経験ありで、戦略を練って試験に取り組めば、不安さはあるものの合格率はそこそこ。学習経験なしだと、戦略を練っても落ちる可能性が高く、合格は安定しにくい。
- 50~100時間:学習経験ありで、戦略を練って試験に取り組めば合格率は高い。学習経験なしでも戦略を練って取り組めば点数が安定してくるため、合格の可能性はある。
- 100~150時間:学習経験があれば、勉強の効率が悪くても合格率が高い。学習経験なしの場合でも、学習方法を間違えなければ合格率が高い。
- 150~200時間:学習経験なしで、勉強の効率はほどほどでも、合格が期待できる。
- 200~250時間:学習経験なしで、勉強の効率が悪くても、合格率が高い。
- 250時間以上:基本情報技術者の過去問と、科目B試験用のテキストを併用していれば、落ちる可能性は非常に低い(体調不良などの不運が無ければまず合格)
ちなみに、2023年の改定までの受験ですが、私の勉強時間は
- 半年大学でコンピュータサイエンスを勉強し、30時間程度の勉強で受験
→午前試験(現:科目A)のみ不合格 - 1年大学で勉強し、50時間程度追加で勉強して受験
→合格
となりました。当時の自分が資格試験に慣れておらず、情報収集も怠っていたが、情報系の学習経験はある状態だったことを考慮すると、合計約80時間(直前は約50時間)というのは、だいたい上記の考え方とも一致する数値だと思います。
基本情報技術者試験は、学生のうちが取りやすい。社会人ならスキマ時間を有効活用しよう!
今回の記事の内容から「基本情報技術者試験の難易度は、難関試験というほどではないが、最低限の勉強は必要である」ことがわかるかと思います。
確実に合格を目指すなら、まずは勉強時間を確保することです。実務経験が勉強に有利ということもあまりないため(範囲が広すぎて、全てを実務で経験することはない)、結局は「しっかり時間をかけて勉強すること」が求められます。
そういった意味でも、「時間にゆとりのある学生時代に勉強をすすめ、受験する」ことが、比較的簡単に試験に合格する方法だと思います。
独学で勉強する人向けに、以下の記事でおすすめの参考書を紹介していますので、興味のある方は参考にしていただければと思います。
一方、社会人の場合は「いかに勉強時間を確保できるか」が重要です。基本的には独学がオススメではありますが「初心者だけど、スキマ時間を使って効率的に勉強したい!」という人向けの通信講座については、以下の記事で紹介していますので、参考にして頂ければ幸いです。