「飛騨の里」の観光情報と、実際に観光した感想
この記事では、高山にある「飛騨の里」の観光情報と、実際に観光した感想をまとめます。
「古民家に興味がある方」「飛騨高山方面を観光予定の方」などの参考になれば嬉しいです。
「飛騨の里」の観光情報
- 営業時間:8:30~17:00
- 休業日:無休
- 見学料金:大人700円、小・中学生200円(ライトアップは大人300円、子供100円)
- 所要時間:園内で貰えるマップには20分、40分、60分の散策コースが書かれています。私は古民家の見学のみでしたが2時間10分かかり、後半は早足で回りました。
- 備考:紅葉・クリスマスシーズンと、1月上旬~2月末の金~日曜日は夜間ライトアップが行われます。体験などのイベント情報はこちら。
※詳細は変更の可能性もあるため、訪問前には公式HPなどの情報をご確認ください
「飛騨の里」とは?
飛騨の里とは、簡単に言えば「高山にある古民家の集まった集落のような野外博物館」です。
園内には、国指定の重要文化財「旧若山家」など、貴重な古民家が多く移築された場所で、古民家ごとの建築様式の違いや、山村の暮らしや文化、民話などを学ぶことができます。また、イベントを通してお祭りや工芸品づくりの実演を見たり、体験することもできます。
古民家の中に展示されているものにも重要な文化財が多く「飛騨の橇コレクション23点」「荘川の養蚕用具230点」「飛騨の山村生産用具989点」が、国指定の重要有形民俗資料に指定されています。
歴史的には、高度経済成長期にいくつもの集落が消滅の危機に瀕する中、元荘川村長若山作右衛門がダムに沈む予定だった自家を高山市へ無償譲渡したことが「飛騨の里」が生まれるきっかけになりました。この旧若山家が「飛騨民俗館」として開館し、更に館内で展示されていた橇や養蚕のコレクションが国指定重要有形民俗文化財に認定されていきます。
そんな中で「スウェーデンのスカンセン民俗博物館(世界初の野外民族博物館といわれる)のように、その土地の民俗文化を一堂に集めたものができないか」という考えが生まれ、この構想をきっかけとして「飛騨の里」が生まれました(この辺りは、公式の「飛騨の里誕生物語」で詳しく解説されています)。
古民家の集まった農山村が再現されているため風景も美しく、紅葉やクリスマス、雪のシーズンには夜間にライトアップも行われます。写真撮影スポットとしても魅力的な観光地です。
「飛騨の里」へのアクセス
住所は「岐阜県高山市上岡本町1丁目590」です。
公共交通機関を利用する場合、高山駅から市内の観光施設を巡回している「さるぼぼバス」で10分ほどです。高山濃飛バスセンター~飛騨の里間の往復バス乗車券と、飛騨の里入館券がセット割で売られていますので、バスで往復する場合は購入を検討してみてもいいでしょう(詳細はこちら)。
また、自動車で向かう場合、飛騨の里から徒歩1分の場所に駐車場があります。駐車料金は、普通乗用車300円です。
「飛騨の里」を実際に観光してみた(所要時間2時間10分ほど)
この日は飛騨高山エリアの観光をする目的で高山駅前のホテルから出発し、8:50頃に「飛騨の里」に到着しました。
所要時間は2時間10分と長いですが、民芸品作成の体験や、お祭りなどのイベントへの参加はしていません。むしろ、一位一刀彫りの実演見学などもしたかったのですが、時間があまりにもかかってしまったため、やむを得ず途中で切り上げた感じです。施設がかなり多いので、この記事では一部を紹介したいと思います。
ちなみに、飛騨の里のマップは下の図のようになっています。番号が振られている施設だけで30カ所あるため、仮に1か所5分ペースで見学しても、移動含めず2時間30分かかる計算なので、やはり時間に注意が必要です。
「飛騨の里」の風景
今回、あまりじっくり風景写真は撮影しませんでしたが、「飛騨の里」は農山村の集落を再現した場所というだけあって、撮影スポットに向いていると感じました。実際、外国人観光客などが和風の道具を持って、記念撮影していました。
入ってすぐに「五阿弥池」と呼ばれる大きな池があります。ここから合掌造りを始め、多くの家屋を見渡すことができ、周囲に近代的な人工物も少ないことから撮影スポットとして利用されている方も多かったです(運悪く、写真に軽トラックが入ってしまいましたが……)。何枚か写真撮影をしていたら、外国人観光客からも記念撮影のお手伝いを求められました。
「五阿弥池」をすこし回り込んだ場所で撮影。ギリギリ紅葉のシーズンに入っていたので、葉が色付いて美しい景色を楽しめました(でも、もうちょっと紅葉が進んだ方がたぶん綺麗)。
こちらは飛騨の里にあった「車田」です。車田の文化が現存しているのは新潟県佐渡島と、高山市松之木町の2か所のみとされています。
車田の起源は不明ですが、1600年代の文献には登場しており、山の神を迎える神聖な田であるという説があります。神聖な田を穢さないよう、肥料に下肥は使わず、藁だけが利用されました。また、収穫されたお米は、伊勢神宮に奉納されていたという説もあります。
ちなみに、下肥の蓄積用の「肥壺」も飛騨の里の中に置かれていました(国指定重要瓶続文化財になってます)。
こちらは道祖神として祀られていた「チンポ石」。いわゆる石棒です。
冗談みたいに見えるかもしれませんが、これも飛騨の歴史と関係があり、飛騨市では多くの石棒が出土しているため(飛騨市宮川町塩屋にある島遺跡および塩屋金清神社遺跡)、石棒の聖地とされる「飛騨みやがわ考古民俗館」もあります(ついでに、この日訪れた飛騨大鍾乳洞には特大石棒がありました)。
この道祖神の他にも、多くの神仏が祀られた祠や神社があり(公式で17カ所)、円空物を再現したものや、高山の各地から移築されたお地蔵様や不動明王像などがあります。
旧中薮家(県指定重要文化財)
旧中薮家は、現在の高山市一之宮町山下から移築された民家。榑葺き屋根の珍しい古民家です。
榑葺き屋根は、「榑」と呼ばれる板を葺き、その上に石を置いた構造をしており、多くは切妻造りの建物でした。飛騨地方中央の古川・国府盆地から高山盆地、南にかけて多く見られたそうですが、現代はほぼ全て無くなってしまったそうです。
住宅内から天井を見るとこんな感じ。榑がよく見えます。ちなみに、榑材の寿命は5~6年と茅葺(寿命は15年前後)に比べて短く、古い榑は焚き物として利用されました。
飛騨の里では、榑材を作る「クレヘギ」の実演を見ることもできます(4月~10月の不定期、旧中藪家で行われるそうです)。
立保神社
立保神社は、旧河合村大字保から移築したものです。
鈿女神社・白山神社・国作大神社の三社を合祀した神社で、三社の拝殿を集めて建てられました。三社を集めた際、拝殿の二つを上下に並べ、上を拝殿、下を舞台とし、残りの一つは神饌殿とされました。そしてダムによる水没の危機にさらされた際にこの地に移築され、神饌殿と舞台が花道でつながれ、神饌殿は楽屋となって今に至ります。
飛騨地方では、神社の一部として舞台を作り、そこで地歌舞伎や獅子芝居などが「奉納」されることがあったそうで、幕府から禁じられることが多かった芝居などを「神事」とすることで許可を得ていたとも考えられています。ちなみに、現在は伝統芸能の上演のほか、「HIDA TAKAYAMA JAZZ FESTIVAL」のステージとしても利用されました。
旧若山家(国指定重要文化財)
こちらは、大野郡白川郷下滝村(現高山市荘川町下滝)にあった農家で、「飛騨の里」が作られるきっかけともなった「旧若山家」です。御母衣ダムの建設に伴い、水没することになったため、無償で譲渡されました。
建物は1751年の建設で、画商づくりの中でも「荘川造り」といわれる入母屋合掌造りから、切妻合掌造りに移行する建築物で、小屋組に残された「荘川式寄せ棟造り」の構造は貴重なものだそうですが……正直、そこまで細かなことを言われてもよくわかりません(一応、前日に白川郷と五箇山で、色々と勉強してたのですが……)。ただ、貴重なことは確かで、国指定の重要文化財になっています。
建物の中はこんな感じ。展示物が多い民家ではありませんが、そのぶんじっくり建物自体を味わうには向いています。二階に上がることもでき、高校から寄贈された30分の1の建物の模型が置かれていました。
旧西岡家住宅(県指定重要文化財)
「旧西岡家住宅」は白川郷加須良村(元白川村加須良)から移築されたもので、蓮受寺の庫裏として江戸後期に建てられた合掌造りの建物です。県指定の重要文化財になっています。屋根の上に分厚く苔がむした感じが気に入りました。
昔は、この建物の二階部分で養蚕が営まれており(合掌造り家屋では、二階より上で養蚕していることが多い)、現在は2階で養蚕関連の道具の展示を見ることができます。
こちらは一階の展示。農山村で使われていた民具や、絵画などの展示がされていました。
こちらは2階の展示。ちょっと階段が急な感じですので、見学する際は気を付けましょう。
旧田口家住宅(国指定重要文化財)
「旧田口家」は、益田郡東村卯野原(現下呂市金山町卯之原)から移築された民家で、国指定の重要文化財になっています。
代々庄屋を務めた家で、集会所として利用できるよう部屋数が多く、囲炉裏は三つあります。また、比較的温暖な最飛騨の特有の構造(雨戸の外に廊下があるなど)になっています。
私が訪れた際は、建物の中で特別展示「鉤づる」が行われていました。いくつかの民家では常設的な展示が行われていますが、このように時期によっては特別展が行われている民家もあります。
こちらが「鉤づる」の展示。ちなみに、鉤づる(自在鉤)とはやかんや鍋などを囲炉裏の火にかけるために利用される道具です。現在のコンロのように火の強さを調節しなくても、火までの距離を変えることで、火加減が調整できるようになっています。
ちなみに、鉤づるのデザインに魚が多い理由としては、「火事を避けるお守り(魚が水の象徴)」などの説があります。
匠神社
飛騨の里にある長い階段をのぼっていくと、飛騨の工芸を祀っている「匠神社」があります。
こちらは飛騨各地から集められた信仰の集合体の様なもので、本殿は「飛騨市河合町保鈿女神社」、拝殿は「飛騨市宮川町加賀沢」、鳥居と灯篭は「高山市桐生町白山神社」、狛犬は「高山市丹生川町」にあったものが移されました。
拝殿の開き戸は千鳥格子、拝殿の天井には飛騨中の職人による天井絵があります。小さいながらも「匠」の名にふさわしい、飛騨の技が散りばめられた神社です。
こちらが、匠神社の天井絵。公式HPでは6月と11月初旬頃の年2回公開となっており、私が訪れた2023年の秋は10月14~11月12日まで公開されていました。
「飛騨の里」周辺の観光スポット
「飛騨の里」からバスで10分ほどかかりますが、高山駅近辺には多くの観光スポットがあります。
史跡であれば「高山陣屋」は有名な観光スポット。無料の博物館であれば「高山市政記念館」や「飛騨高山まちの博物館」なども近く、とくに「飛騨高山まちの博物館」は無料とは思えないほどのボリュームでした。
また、これらのある地域自体も古い町並みが残る観光スポットで、飛騨牛などを使ったご当地グルメも充実しており、食べ歩きをするだけでも十分楽しめるでしょう。
その他、「飛騨高山レトロミュージアム」や「高山昭和館」などのレトロ系の博物館や、「飛騨国分寺」や「高山別院 照蓮寺」などの歴史ある神社仏閣もあります。じっくり時間を取れるのであれば、高山駅周辺だけで数日観光する計画を立ててみてもいいでしょう。