技術士第一次試験 適正科目のおすすめの勉強方法
この記事では、技術士第一次試験の適正科目の勉強方法についてまとめています。
技術士第一次試験を受験予定の方の、参考にしていただければ幸いです。
技術士第一次試験 適正科目の特徴
まずは、前提条件として、技術士第一次試験の適正科目の特徴をまとめます。
合格ラインは15問中、8問正解
まず、前提として、合格ラインは15問中8問です。
正確には50%が合格ラインですが、50%を超えるには8問必要となります。
基礎・専門科目と違い、全ての問題に解答する
適正科目は、基礎科目や専門科目のように「苦手な問題を捨てても、一定数は点数に影響しない」といった試験ではありません。
全ての問題に解答する必要があるため、純粋に半分を超える正解を目指す必要があります。
問題にいくつかの出題形式がある(出題形式で難易度が異なる)
適正科目は5択問題となっていますが、更に細かい出題形式が分かれており、そのため出題形式によって難易度が異なります。
出題形式は、大きく分けて以下4種類があります(稀に例外もあります)。
- 空欄に入る用語の正しい組み合わせを選択する問題(比較的簡単)
- 正誤など、2択の選択肢が全て正しくなる組み合わせ選ぶ問題(比較的簡単)
- 正しい(又は間違っている)唯一の選択肢を選ぶ問題(やや難しい)
- 解説文の正しい数・間違っている数などの、数を答える問題(難しい)
出題形式の中で、とくに厄介なのが「数を答える問題」です。
「空欄の穴埋め」や「正誤の組み合わせ問題」は、一つでもわかる部分があれば、5択を4択以下へ絞り込みできます。
また「一つだけある例外を答える問題」につても、わかる選択肢の数だけ絞り込みが可能です。
一方、数を答える問題については、5つ以上ある解説文の中から「正解・不正解」の数を求められることが多く、仮に3つ判断できる解説文があったとしても、全く絞り込みができないこともあります。
例えば、以下のような問題です。
ものづくりに携わる技術者にとって,知的財産を理解することは非常に大事なことである。知的財産の特徴の1つとして,「もの」とは異なり「財産的価値を有する情報」であることが挙げられる。情報は、容易に模倣されるという特質を持っており,しかも利用されることにより消費されるということがないため,多くの者が同時に利用することができる。こうしたことから知的財産権制度は,創作者の権利を保護するため,元来自由利用できる情報を,社会が必要とする限度で制限する制度ということができる。
次に示す(ア)〜(ケ)のうち,知的財産権に含まれないものの数はどれか。
- 特許権(「発明」を保護)
- 実用新案権(物品の形状等の考案を保護)
- 意匠権(物品のデザインを保護)
- 著作権(文芸、学術,美術,音楽,プログラム等の精神的作品を保護)
- 回路配置利用権(半導体集積回路の回路配置の利用を保護)
- 育成者権(植物の新品種を保護)
- 営業秘密(ノウハウや顧客リストの盗用など不正競争行為を規制)
- 商標権(商品・サービスに使用するマークを保護)
- 商号(商号を保護)
① 0 ② 1 ③ 2 ④ 3 ⑤ 4
技術士第一次試験 適正科目 令和元年度15問目
この問題の場合、仮に1~5番(特許権~回路配置利用権)が知的財産権に含まれると判断できたとしても、残り6~9番(育成者権~商号)の内容次第で、どの選択肢も正解がありえてしまうため、半分以上がわかっても、正解の絞り込みの役に立ちません。
裏技:「数を答える問題」で答えがわからない場合
先に紹介した令和元年度15問目の場合、全てが判断できる人はかなりの少数派だと思います。回路配置利用権なんて、私は初めて聞きました。
こういった問題で私が使ったのが「全て正しい、又は全て間違っているを選択する」という裏技です。
試しに「数を答える問題」で「全て正しい、又は全て間違っている」が正解になるものを抽出すると、以下のような傾向がありました。
- 令和2年:4問中4問
- 令和元年再試験:6問中3問(不正解の3問は、技術士法第4章、製造物責任法、国際安全規格)
- 令和元年:7問中3問(不正解の4問は、製造物責任法、情報漏洩対策、技術者の情報発信・管理、BPC)
- 平成30年:4問中3問(不正解の1問は、製造物責任法)
- 平成29年:3問中0問(不正解は、技術士法第4章、研究倫理、論理的意思決定)
- 平成28年:1問中0問(不正解は、技術士法第4章)
- 平成27年:出題なし
- 平成26年:出題なし
- 平成25年:2問中1問(不正解は、技術士法第4章)
- 平成24年:1問中0問(不正解は、製造物責任法)
- 平成23年:1問中0問(不正解は、リスクの認識)
令和2年、平成29年、平成25年には「全て正しい、又は全て間違っている選択肢が無い問題」が1つずつあったので、それは省きました。
全体でみると裏技による正解率は48%です。何も考えず5択を選んだ場合と比べれば、明らかに高い正解率となりました。とくに「数を答える問題」の出題数が増加した平成29年以降の近年に絞ってみると、正解率は約62%と更に高くなります。
また、裏技が利かない問題については技術士法第4章や製造物責任法のような、頻出かつしっかり学習すべき内容が半数程度となっています。
こういった傾向がみられるため、頻出問題を重点的に勉強して挑めば、更に正解率を上げられます。
ただし、あくまでも裏技ですので、本番でどうしても答えが出せない場合に利用する前提で考えましょう
頻出テーマは何か?
適正科目で、よく主題されるテーマを確認すると、以下のようになっています(令和元年再試験以前の12年間で判定)。
- 技術士法第四章(14問/12年)
- 技術者の倫理・行動規範(9問/12年。関連で「倫理」を含む問題も合わせると23問)
- CPD(5問/12年)
- 知的財産権(7問/12年。内、産業財産権に絞ったものは2問)
- 製造物責任法(11問/12年)
- 公益通報者保護法(6問/12年)
- リスク関連(9問/12年。内、アセスメント3問、コミュニケーション3問、マネジメント2問、認識1問)
- ハラスメント(7問/12年。近年はセクハラ・パワハラの混合問題が多い)
注意しなければいけないのは、「これらの分野の問題を勉強したからと言って、点数が確実に得られるとは限らない」というところ。
というのも、過去問と同じテーマであっても、まったく違う論点が出題されることが多いからです。
実際、過去問9年分を完璧に仕上げても、正解数は15問中11問だったという体験記もありました。私が受験した際の正解数は15問中14問でしたが、7問は正解がわからず、直感で当てていました(先に解説した裏技を利用したので、運よく高得点になっただけです)。
そんな中で、誰にでも優先的に学習すべきテーマは「技術士法第四章」と「製造物責任法」です。この2つは毎年のように出題されていますので、過去問を使って幅広く学習を行いやすいです(技術士法第四章は類似問題も多い)。
時間に余裕がある人は、良く出題されるが、知識がないと答えられないテーマを中心に学習するといいでしょう。
「CPD」などは、技術士の学習した知識がないと答えられない問題ですので優先しましょう。一方、「ハラスメント」「技術者の倫理・行動規範」については、常識で答えられる問題が多いので、優先順位は下げてもいいでしょう。繰り返し解いても点数にはつながりにくいです。
技術士第一次試験 基礎科目の勉強準備
勉強の方針
ここまでの前提条件から、勉強の方針をまとめると、以下のようになります。
要するに「時間がないなら頻出テーマに絞って勉強し、残りは一般常識と勘、裏技で回答」でOKです。
参考書・教材を準備する
準備内容は基礎科目と同じです。
技術士試験ナビ 適正科目
技術士の一次試験で、適正科目を学習するなら、一番おすすめです。このサイトだけで、十分合格を目指せます。
- 無料で最新の過去問~平成25年まで学習できる
- 書籍の過去問と比べて、解説に大差はない
- 無料(書籍を使うと2,000円以上)
- 書籍の過去問よりも通勤・通学で使いやすい(個人的には重要)
- 暗記カードにコピペで落とし込める(個人的には最重要)
個人的に最大のメリットは、暗記カードアプリにコピペで落とし込めたところ。
私は暗記カードアプリとしてAnkiDroidを利用していますが、このサイトから事前に問題を抽出し、その後はこのアプリだけで勉強していました。AnkiDroidは移動中に利用しやすく、理解度に応じた復習タイミングをアプリが管理してくれるのでおすすめです。
技術士教科書 技術士 第一次試験問題集 基礎・適性科目パーフェクト 2020年版
定番の参考書。基礎科目の勉強方法でも紹介した参考書です。
メリットは、重要度が掲載されているところです。ただし、それほど時間をかけて勉強すべき科目ではないため、適正科目の学習目的だけでこの参考書を購入することは、あえておすすめはしません。
技術士第一次試験 基礎科目のおすすめの勉強方法
【手順1】まずは実力診断
出題される問題レベルを体感するため、まずは実力診断。
初見から、自信を持って正解できる問題は少ないかと思いますが、一方で「何となく、それっぽい」という選択で解ける問題が多いかと思います。とくに「コンプライアンスの勉強・研修」の経験があれば、合格ラインを超えられる人が多いかと思います。
まずは「合格ラインに対して、自分の実力がどの程度か?」が把握できればOKです。
【手順2】頻出問題を順に学習していく
実力診断後は、頻出テーマの問題を順に学習していきます。
まずは「技術士法第四章」と「製造物責任法」がおすすめです(ほぼ毎年出題されます)。
「技術士法第四章」については、過去問の穴埋めを全て暗記するくらいには、しっかりやりこんでおきましょう。
一方「製造物責任法」については、過去に出題された切り口が何パターンもあります。理想としては、それら全てに対応できるようにすることですが、時間が許す限りでOKです。
先に述べた通り、残りの頻出テーマについては「良く出題されるが、知識がないと答えられないテーマ」を優先します。頻出であっても、一般常識で解けそうなものは避けましょう。
頻出テーマの確認方法
頻出テーマについては、先に紹介した「技術士 第一次試験 適正科目ナビ」を利用すると簡単に把握できます。
過去問の各問題のタイトルが問題のテーマとなっているため、頻出の問題がタイトルからある程度判断できますし、テーマを絞った学習も可能です。
ちなみに、最頻出テーマである「技術士法第4章」については、毎年出題されており、12年で出題数14問。このことからも「技術士法第4章」が確実に学習すべきテーマであることがわかります。
直近のニュース
明確なテーマではありませんが、直近のニュースから問題が出題されることもあります。
例えば、試験の半年前くらいに社会を騒がせるような企業の不祥事が発生していた場合、そのことをテーマとした問題が出題される可能性があります。
例えば、品質不正などが社会問題となっていた場合は、企業のコンプライアンスや、品質管理の過去問などを解いておいてもいいでしょう。
【手順3】直近数回分の過去問は目を通す(余力があれば)
個人的には「適正科目はあまり勉強時間をかけるべきではない」と考えています(あまり得点が上がらないし、常識だけで合格できる可能性も高い)。
ですので、あくまで余力があればですが、直近数回分の過去問は目を通しておきましょう。
直近の過去問に取り組むことのメリットは、最新のトレンドに対応できるようになること。
例えば「SDGs」は、令和元年度、令和元年度再試験と2回連続で出題されています。このように「世間で最近話題になっているテーマ」については、直近の問題と同じテーマが期待できます。
技術士第一次試験 適正科目は無理せず学習する
基礎科目の記事でも「あまり時間をかけるべきではない」という結論に至っていますが、適正科目は基礎科目以上に時間をかけるべきではないと考えています。
というのも、適正科目は「頑張って学習しても、点数につながりにくい」から。
基礎科目の場合「しっかり勉強すれば点数にはつながるけど、捨てられる問題に無理する必要ないよね?」といった意味で「時間をかけるべきではない」と判断しましたが、適正科目は「そもそも勉強しても点数につながらない問題は、勉強する必要ないよね?」といった判断から、時間をかけるべきではありません。
それぞれの科目にかけるべき時間は人による思いますが、技術士第一次試験の合格を目指すなら、専門科目に多めに時間を割り当てることをおすすめします。