【合格体験記】技術士第一次試験(情報工学部門)に33時間52分で挑んだ記録
2020年10月11日、技術士第一次試験を受験し、無事合格しました。
その体験を振り返り、この記事では技術士一次試験(情報工学部門)の受験体験と反省を中心にまとめました。
技術士第一次試験を受験予定の方(とくに、専門科目が情報工学部門の方)の参考にしていただければ幸いです。
勉強開始前のスペック
まずは前提から。私の勉強開始前のスペック(経歴)は以下の通りです。
- 2008~11年度:大学でIT関連を学習するが、2年生の後半から別業界を目指し始める
- 2016年2月~:卒業後、4年弱別業界で仕事した挙句、結局、IT業界に就職。内容はネットワークの保守・運用
- 2019年10月:ネットワークスペシャリスト試験を受験(午後IIが1点足りず落ちる)
- 2020年10月:プロジェクトマネージャ試験の学習を行う(技術士第一次試験の1週間後に受験しました)
- 毎年2時間以上は会社でコンプライアンス研修を受けてる
- 数学・物理・化学は苦手だけど、高校の初歩が理解できないわけではない
- ほとんど忘れているけど、基本情報、応用情報、セキスペ、危険物取扱者、環境計量士(濃度)など、理系の資格にも色々合格してる
経歴だけだと、試験にどの程度有利かわかりにくいですね…。
それぞれの科目にあてはめて要約すると、こんな感じ。
- 専門科目:初心者より確実に上(応用情報の午前試験で6割くらいのレベル)
- 基礎科目:理系は苦手だけど、高校レベルかつ簡単な問題なら正解できる。情報系の知識で、全体の4割(1群・2群)は有利
- 適正科目:一般常識と会社のコンプライアンス研修で対応可能
個別の科目の詳細な内容は後述しますが、実は上記のレベルで全科目6割のラインに達します(事実、初見で全てギリギリ6割突破してました)。
受験した動機
受験した動機は「会社の報奨金対象だと思ってしまったから」というのが理由。
しかし、実は報奨金対象ではありませんでした(合格しても、技術士補になれない環境なので報奨金貰えない…。皆さん、同じミスをしないよう気を付けましょう)。
その他には、過去の勉強を活かして、簡単に取れそうだと思ったことも理由。
特に「情報処理技術者試験の高度試験(平成21年度から実施)合格者」が、専門科目免除となっていたので、「基礎と適正だけで合格できると思ってしまった」ことが大きいのです
が、先ほどと同じく、思ってしまっただけで、実際には免除になりませんでした(後述します)。
技術士第一次試験の特徴と注意点
技術士第一次試験の特徴と注意点については、長くなるので他の記事にまとめました。
勉強時間や難易度に対する考察も記載しましたので、気になる方はご確認いただければと思います。
技術士第一次試験に利用した教材と感想
科目ごとの勉強方法の記事にも記載していますが、実際に利用した教材と、その感想についてまとめます。
適正・基礎科目の教材
技術士試験ナビ 基礎科目 適正科目
技術士の一次試験で、基礎・適正科目を学習するなら、一番おすすめのサイトです。
- 無料で最新の過去問~平成25年まで学習できる
- 書籍の過去問と比べて、解説に大差はない
- 無料(書籍は2,000円以上)
- 書籍の過去問よりも通勤・通学で使いやすい(個人的には重要)
- 暗記カードにコピペで落とし込める(個人的には最重要)
個人的に最大のメリットは、暗記カードアプリにコピペで落とし込めたところ。
私は暗記カードアプリとしてAnkiDroidを利用していますが、このサイトから「過去問4年分の中から、暗記で対応できそうな問題」を抽出し、後はこのアプリだけで勉強していました。移動中にも利用可能で、理解度に応じた復習タイミングをアプリが管理してくれるのでかなりおすすめの方法です。
技術士教科書 技術士 第一次試験問題集 基礎・適性科目パーフェクト 2020年版
こちらも購入しましたが、ほぼ使いませんでした。
先に紹介したサイトに辿りつく前に購入してしまい、一度利用しましたが、移動中に利用しにくかった上に、自宅では時間がとりにくかった(取れた時間は、別の試験勉強に使ってた)ので、この本はほぼ使いませんでした。
メリットとしては、重要度が掲載されているところ。
といっても、暗記カード化の際に重要度を参考にカードを作りましたが、基礎科目で2問、適正科目で1問しか勉強が役に立たなかったので(単に試験の特性の影響ですが)、無くてもよかったかなと思います。
ちなみに、収録問題数が多い分、解説はそれほど深堀されていません。計算問題の中には、解説だけでは理解できないものも多い印象です(高校数学の基礎に苦戦する自分には無理でした…)。
専門科目(情報工学部門)
技術士第一次試験「情報工学部門」専門科目 問題と対策
誤字がかなり多く、Amazonなどのレビューはかなり評価が悪いです。が、情報工学部門の効率的な合格を目指すなら、おすすめの参考書です。
おすすめの理由は、以下の通りです。
- 出題傾向についての解説がある
- 技術士第一次試験の情報工学部門は過去問の流用が多いので、過去問ベースでの学習が結局は一番いい
- 過去問ベースの参考書がこれ以外にない
技術士第一次試験の情報工学部門は、応用情報のテキストで対応しようとする人もいます。が、それでは学習範囲が広くなりすぎます。
というのも、出題傾向が考慮されてませんし、何より流用の問題をそのまま学習することができないからです。
一方、この参考書では、過去問の傾向を反映した内容で問題が紹介されていますので、出題される可能性が高いものを優先的に学習できます。
また、流用の出題は、選択肢の言い回しも同じになるため、より確実に正解することが可能です。
こういった理由から、現時点で合格への最短ルートになる参考書といえます(ただ、誤りは確かに多いです。理解できない問題があったら、誤字を疑ってネットで調査しましょう)。
過去問(公式)
先に紹介した参考書は2017年4月販売なので、やや古いです。
そこで、最新の過去問を公式サイトから拾ってきます。
解説はついていません。ただし、暗記系(とくに用語系)の問題に絞って、ネットで調べれば知識が補充できるので、学習可能です。
ただ、「過去問を解いて、ネットで検索して…」を毎回やると効率が悪いです。
おすすめの利用方法は、抜粋した問題(または選択肢単位)を暗記カード化すること。
先に紹介した参考書や、基礎・適正科目と一緒にスマホで全て学習できる環境を整えておけば、忙しい社会人でも十分勉強時間が確保できると思います。
暗記カードアプリは、長期戦の試験ほど効果が高いですが、こういった「参考書が使いにくい・そもそも存在しない」試験でもおすすめです。
技術士第一次試験にかかった費用
実際にかかった費用は以下の通りです。
- 受験料:11,000円
- 申込(簡易書留):320円
- 技術士第一次試験「情報工学部門」専門科目 問題と対策:1,250円(中古)
- 技術士第一次試験問題集基礎・適性科目パーフェクト 技術士試験学習書 2020年版:2,420円
- 交通費:1,110円
- 食費(飲料):150円
- 合計:16,250円
想像よりかなり高くなりました(報奨金も出ないので大赤字…)。
技術士の基礎・適正のテキストは余計だったと思います。最新の過去問が出題されるわけではないので、使うにしてもちょっと古いものを買って、重要度の高い問題の調査用にしておけば良かったです。
技術士第一次試験に使った勉強時間
最終的な結果は、合計は33時間52分です。
基礎・適正科目は15時間27分。専門科目(情報工学部門)18時間25分です。
基礎・適正科目の勉強時間
基礎・適正科目の勉強時間は以下の通りです(測定はStudyplusを利用)。
合計の学習時間は15時間27分です。
基礎と適正の内訳は計算していませんが、概ね「基礎3:適正1」の割合だったと思います。
教材別では、「AnkiDroid」が実際に問題演習をやっている時間で、他が暗記カードの作成と実力診断の過去問演習です。
学習時間の目安としては、「基礎・適正でそれぞれ15時間」「基礎は15時間、適正は5時間」などとネット上で紹介されているので、概ね妥当な時間になった印象です(意図してないですが…)。
ちなみに、同じく令和2年に受験して合格した人は、12時間で合格していました。情報処理技術者試験や中小企業診断士にも合格している挑んでいる方だったので、やはり普段から勉強している人であれば、短時間での合格も可能という印象です。
普段勉強していない人で30時間、勉強している人なら10~20時間(実際には、勉強なしでも合格できる可能性あり)と考えるといいでしょう。
専門科目(情報工学部門)
続いて専門科目の勉強時間。以下の通りです(測定はStudyplusを利用)。
合計の学習時間は18時間25分です。
学習時間の目安は、やはりサイトによって紹介に差がありますが、30時間程度が多かった印象です。
教材別では、AnkiDroidの11時間弱が暗記に使っていた時間。残りが過去問演習と暗記カードの作成です。
私は過去の情報処理技術者試験の経験や、並行してやっていたネットワークスペシャリスト試験とプロジェクトマネージャ試験の勉強(午前I除く)があったので、勉強時間を短縮できた印象です。
そもそも、応用情報技術者試験の午前試験や、高度区分の午前Iを突破できる人であれば、勉強なしでも合格ライン前後は取れるかと思います(もちろん、安全と自己研鑽のために勉強することをおすすめします)。
技術士第一次試験で、実際に行った勉強方法
基礎・適正科目の勉強方法
実際に行った勉強の流れは以下の通りです。
- 実力診断のため、令和元年の過去問と平成30年の過去問に取り組む
- 平成30年の基礎科目だけやって終了(これ以上は不要と判断)
- 時間もないので、暗記で点を稼ぐことに集中するため、技術士ナビで暗記カードを作成(重要度の参考として、紙の参考書を利用)
- 作成した暗記カードをひたすら解く
まずは実力診断をすることをおすすめします。
私の初期状態は、基礎はギリギリ合格ライン突破、適正は余裕をもって合格ラインでした。
そこで過去問全体を演習することは不要と考え、短期で点が稼げそうな暗記に集中する戦略に変更。暗記カードアプリ(AnkiDroid)を利用して学習する戦略をとりました。
あとはひたすら受験直前まで暗記カードに取り組むのみ。といっても、プロジェクトマネージャ試験の勉強も並行してやっていたので、直前1週間は、前日以外ほとんど勉強しませんでした。
専門科目(情報工学部門)の勉強方法
専門科目も概ね勉強の流れは同じです。
- 実力診断のため、平成28年の過去問(参考書に乗ってたのがこれだった)に取り組む
- 時間もないので、暗記で点を稼ぐことに集中するため、参考書と直近4年の過去問で暗記カードを作成(過去問は解説が無いので、暗記カード化が難しいものはパス)
- 作成した暗記カードをひたすら解く
やり方は基礎・適正と同じです。
まずは過去問で実力診断。こちらも私は最初から合格ライン突破でした。
後は暗記カード化しやすいものを優先し、暗記カード化し、ひたすら暗記です。
技術士第一次試験の持ち物
試験で持ち込めるものは以下の通りでした(令和2年度)。
- 受験票(必須)
- 黒鉛筆又はシャープペンシル(HBまたはB程度)
- 消しゴム(電動不可)
- 鉛筆削り(電動不可)
- 時計(通信機能、計算機能の無いもの)
- 電卓(関数電卓は不可)
- 写真付き身分証明書(必要に応じて使う)
- ペットボトル及びボトル缶(蓋つき)の飲み物
身分証明書については、提出を求められることはありませんでした。
また、ペットボトル飲料は机の上に置きっぱなしでOKでしたが「試験中に飲んでいいものか?」と迷ったので、結局飲みませんでした。
技術士第一次試験の試験当日
新型コロナウイルスの関係で、検温が必須でした。受験票にも検温の欄があります。
ちなみに、本籍の申請が間違っていましたが、二重線を引いて書き換え、後日訂正の申請をすれば良いとのことで、手書きで修正しています。
私の試験会場は、TKP市ヶ谷カンファレンスセンター。初の利用となります。
また、時刻が普段とずれていたため、会場到着は11時頃となりました(入口の写真は試験終了後の17時30分頃に撮影)。
情報工学部門以外も同じ会場で受験していたこともあり、会場として利用している部屋ははかなり多め。コロナ対策の影響もあって、余計に多かったのかなと思います。
入り口には消毒液が用意されていたり(利用必須)、検温を忘れた人向けに体温測定を行っていたり、試験の休憩時間は換気したりと、コロナ対策を徹底している印象です。当面は、多くの試験がこんな感じになりそうですね。
あとは淡々と試験を受けるのみ。
他の多くの試験との違いといえば、試験時間中の退室が不可だったところ。専門科目はかなり時間が余ったので、正直暇でした(途中から試験と関係なく、将来について色々考えてました)。
休憩時間も含めて6時間の長丁場ですが、暇な時間も多いので、頭が疲れることはありませんでした。
技術士第一次試験の結果(合格)
そして、試験結果がこちら。
無事合格です!しかも、かなりの高得点(ただのラッキーです)。
一番自信があった専門科目が8割に届かず、残り2科目が9割超えている点は腑に落ちませんが、胸をはって合格と言える結果ですので、十分満足です。
技術士第一次試験の失敗と反省点
今回は珍しく、学習自体の失敗・反省点はありません。強いていえば、基礎と適正の参考書が無駄になったくらい。
最大の失敗をあげるなら「試験勉強をやってる期間で、技術士としてやっていく展望が無くなった」こと。
実は、本職であるネットワーク分野はもちろん、IT関連を専門として仕事を継続していく可能性がかなり低くなりました。
色々と事情はありますが、結局は収入が減っても、「自分の裁量で行動できる人生」と「楽しめる仕事を選びたい」という結論に至りました。
そんなわけで、技術士としての継続研鑽は行わない想定なので、技術士の二次試験を受験することはありません。たぶん。
「今と将来の自分を考えて、勉強内容を選ぶこと」を反省点として、今後の勉強を計画したいと思います(まあ、趣味・娯楽としての無駄な試験勉強は、たぶん一生辞められないんだろうなと思います…)。
技術士第二次試験に向けて勉強するなら?
「技術士の二次試験を受験する事はありません」と書いておきながら、「二次試験を受験するなら」色々と対策は考えた方が良いと思います。
というのも、二次試験は合格率11.7%(令和4年度)と狭き門であり、更に二次試験には以下の様な特徴があるからです。
- 出願時に、実務経験証明書を記載する必要がある(内容に不備があればアウト)
- 論文作成の問題がある(論述方法を誤ればアウト)
- 口頭試験がある(一人だけでは対応しにくい)
こういった試験の特徴からも、独学での対策するなら、身近に経験者がいないとハードルが高めになります。
そこで、試験対策には価格と内容的に「アガルートの第二次試験合格カリキュラム」を使うかなと思います。
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正直、アガルートはあまり宣伝のノリは好きではないのですが、論文の添削と口頭模擬試験付きで、価格は税込み65,780円です(2023年8月17日時点)。
価格自体はそれほど安いとまでは言わないですが、合格した場合は「お支払金額全額返金」と「合格お祝い金3万円贈呈」の二つの特典があります。特典の受け取りには、インタビューや合格体験記の執筆などの手間は取られますが、
また、合格率も令和4年度で77.78%と非常に高く(全国平均は11.7%)、8割近く落ちる事がないため、インタビューなどの手間をかければ、
ちなみに、講座は総合技術監理部門と他の技術部門(全20部門)にわかれますので、申し込みの際は対象の部門を選択するよう注意が必要です。
また、技術士二次試験で講座を利用する人では少数派だと思いますが、添削や口頭模擬試験なしなら、スタディングの「技術士二次試験合格コース(講座・テキストのみ)」が安く29,700円でした(2023年8月17日時点。総合技術監理部門なら28,600円)。ただし、添削や質問はあった方が、技術士二次試験はいいでしょう。
「インタビューや合格体験記を書くのは嫌」という場合であれば、スタディングとアガルートの価格差はほとんどありません。特別な割引キャンペーンなどが実施されていない限りは、無料体験の範囲で講座を視聴してみて、自分にあっている方を選択するといいでしょう。