インターネット検定「.com Master」とは? 試験の概要やおすすめの利用方法
この記事では、ネットワーク関連の資格であるインターネット検定「.com Master」について、主に以下の内容をまとめています。
- 試験の概要
- 資格のメリット・デメリット
- おすすめの利用方法
「.com Master」に興味がある方、ネットワーク関連の学習をしている方の参考にしていただければ幸いです。
「.com Master」とはどんな試験か?
試験の区分
「.com Master」には、2つの試験区分と、3つの認定の種類があります。
- .com Master BASIC
- .com Master ADVANCE シングルスター
- .com Master ADVANCE ダブルスター
2つの試験区分のうち、難易度の高い「ADVANCE」については、受験時の採点結果により「ダブルスター」と「シングルスター」にわかれます。
合格基準
「.com Master」の合格基準は以下の通りです。
- .com Master BASIC
・70%以上の得点を取ること - .com Master ADVANCE シングルスター
・シングルスターレベルの問題で、60%以上の得点を取ること
・各出題分野別の必須得点を取得すること - .com Master ADVANCE ダブルスター
・全体の出題で70%以上の得点を取ること
・シングルスターの基準を満たすこと
・各出題分野別の必須得点を取得すること
「ADVANCE」の各出題分野の必須得点は公表されていませんが、シングルスターの合格基準が60%であるため、60%よりは低いのではと思います。
受験料・認定書の発行手数料
受験料は以下の通りです。
.com Master BASIC | 4,400円 |
---|---|
.com Master ADVANCE | 8,800円 |
ただし、NTTのラーニングサイトより、申し込むと、「ADVANCE」は500円引きで申し込む受験バウチャーチケットを購入することができます。
また私が購入した「.com Master教科書 .com Master ADVANCE 第3版」には、7560円(税込み)で試験を申し込める購入者特典がありました。参考書を購入した際は、こういった特典も確認しておくといいでしょう。
試験日と試験時間
試験はCBT方式により、テストセンターで随時受付しています。都合の良い日に申し込むようにするといいでしょう。
試験時間は以下の通りです。
.com Master BASIC | 45分 |
---|---|
.com Master ADVANCE | 80分 |
出題形式がやや特殊ですが(後述します)、1問1答形式の選択式であるため、試験時間が足りなくなることはまずないと思っていい試験です。
また「ADVANCE」については、シングルスター狙い(全50問)でも、ダブルスター(全70問)と同じ80分で受験できるため、ほぼ確実に時間が余るとみていいでしょう。
出題数
出題数は以下の通りです。
.com Master BASIC | 50問 |
---|---|
.com Master ADVANCE シングルスターレベル | 50問 |
.com Master ADVANCE ダブルスターレベル | 20問 |
「ADVANCE」を受験する場合は、シングルスターを狙うなら、最低50問。ダブルスターを狙うなら、シングルスターレベルの50問と、ダブルスターレベルの20問で、合計70問を解く必要があります。
また「ADVANCE」レベルの出題数の内訳は、模擬問題や私の受験経験から、おおむね次の通りです(公式には公表されていません)。実際には、試験のたびに、出題分野ごとに問題数の上下が予想されます。
- インターネットの仕組みと関連技術 約15問
- インターネット接続の設定とトラブル対処 約10問
- ICTの設定と使いこなし 約5問
- セキュリティ 約10問
- サービス利用と法律 約10問
- インターネットの仕組みと関連技術 約10問
- インターネット接続の設定とトラブル対処 約2問
- ICTの設定と使いこなし 約2問
- セキュリティ 約4問
- サービス利用と法律 約2問
出題分野
出題分野は以下の通りです。
- インターネットの利用
・インターネットとは
・SNS - 情報機器の使いこなし
・情報機器の仕組み
・ソフトウェア
・情報機器の機能と操作 - インターネット利用のための技術とモラル
・インターネットの仕組みと接続方法
・Web ブラウザと電子メールの利用
・インターネット社会と情報システム
・インターネット社会のルールと情報の取り扱い
・インターネットの安全な利用 - インターネットをとりまく法律
・知的財産権にかかわる法律
・インターネット社会の法律
- インターネットの仕組みと関連技術
・インターネットの基礎知識
・インターネット通信関連技術
・アプリケーション関連技術 - インターネット接続の設定とトラブル対処
・インターネット接続機器、機材
・インターネット接続の技術と設定
・インターネットサービスプロバイダ
・インターネット利用に関するトラブル事例と対策 - ICTの設定と使いこなし
・World Wide Web(WWW).
・電子メール
・クラウドコンピューティング
・IoT(Internet of Things)
・人工知能(AI:Artificial Intelligence) - セキュリティ
・セキュリティの基礎知識
・端末利用時の脅威とその対策
・LAN利用時の脅威とその対策
・インターネット利用時の脅威とその対策 - ICTの活用と法律
・インターネット上のサービス
・主要技術のビジネス活用
・インターネット利用に関する法律
ちなみに「ADVANCE」の出題分野については、公式サイトでは、第3章にあたる「ICTの設定と使いこなし」が登場しません。実際にテストを受けた際も、この分野は採点結果の「分野別達成度」に登場せず、他の分野に吸収されて採点されるものと考えられます。
2019年10月の改訂の新試験では、主に第3章の「IoT」、「人工知能」と、第5章全体が大きく追加・変更されます。
「ADVANCE」の出題範囲については、ほとんど「BASIC」の内容を含んでいません。私は最初からADVANCEの勉強を進めたため、勉強の途中でBASICの問題を解ける無料アプリを使ったところ、ADVANCEの方が点数が良いという状態になりました(とはいえ、BASICは勉強なしで8割取れましたが…)。
試験の特徴
出題形式が特殊
「.com Master」は、選択式の試験ですが、単純な4択よりはやや特殊な形式です。
例えば以下のように出題されます。
- 選択肢の中から正しいものを2つ選びなさい
- 選択肢の中から正しいものを全て選びなさい
- (1)、(2)について、それぞれ正しいものを選択肢から1つ選びなさい
また、選択肢の数もおおむね4~6種類(とくに4と5が多い)と、4択問題よりは難易度が高くなっています。
ベンダーフリーだが、会社名やサービス名などは登場する
「.com Master」はベンダーフリーの資格です。ですので、特定のネットワーク機器で利用されている技術などが出題のメインとなることはありません。
しかし、IT関連で特定のベンダーに依存しない資格としてもっとも有名な「情報処理技術者試験」と比べると、会社名やサービス名が直接的に登場することがあります。
例えば「ADVANCE」の学習範囲では
- 機器接続の規格に関する問題(ThunderboltやLightningの特徴は?)
- OSに関する問題(WindowsでLinuxディストリビューションを動作させる仕組みは?)
- クラウドサービスに関する問題(GCPはどの会社が提供しているサービス?)
といった具合に、あまり多くはありませんが、特定の会社の提供している規格やサービスに関する出題も登場します。
こういった、実際に社会に使われているサービスを具体的に学習できるというのは、「.com Master」の利点の一つではあります。
やや実務・実践寄りの出題内容
「.com Master」の特徴として、やや実務・実践寄りであることがあげられます。
「BASIC」レベルについては、そもそも仕事や家庭での日常利用を想定しているところが大きく、実務・実践としてはやや弱いですが、身近な内容(例:LINEアカウントの制限に関する出題など)が多く登場します。
一方「ADVANCE」レベルになると、より詳細な内容で、実務・実践よりの出題が行われます。(例:「家庭内LANのトラブルシューティング」や「検索キーワードの絞り込みに関する出題」など)。
同じIT関連資格でいえば、MOSなどに比べると、概念的な学習が多めではありますが、実践的な役立て方もできる資格という位置づけとなります。
旧試験について
大雑把にですが、旧試験との際についてもまとめておきます。
試験制度自体は2001年から存在し、2013年までは「BASIC」「シングルスター」「ダブルスター」「トリプルスター」の4試験が実施されていました。
また、当時は取得した資格に、取得年度が付与されていたので、例えば2008年にトリプルスターに合格した場合は「.com Master ★★★ 2008」のようになっていました。
また「.com Master」の下位試験として、インターネット検定では「.com Mate」というものが2013年までは提供されていました。
その他、現在の試験形式になることに伴い、問題数と試験時間が減少しています。
「.com Master」のメリット・デメリット
メリット
ネットワーク知識を幅広く学習できる → ネットワークスペシャリスト試験の対策になる
ADVANCEレベルが必要ですが、これが最大のメリットです。
実際に「.com Master」の参考書のレビューや、受験体験記を読んでみるとわかると思いますが「ネットワークスペシャリスト試験の準備で受験した」という人がけっこういます(私も同じくです)。
ネットワーク関連の資格といえば、シスコ技術者認定の「CCNA」「CCNP」あたりが有名で、どちらも「ネットワークスペシャリスト試験」の受験対策として利用できないこともありません。
しかし、シスコ技術者認定の場合
- 出題範囲が比較的狭くて深い
- ベンダー依存の知識や、コマンドについての学習が必要
といったこともありネットワークスペシャリスト試験の対策としては効率が悪いです。
一方「.com Master ADVANCE」は、ネットワークに関する知識をかなり幅広く学習することができます。とくに、普段比較的狭い範囲の業務(例えば、ネットワーク機器の保守がメインなど)を行っている場合TCP/IPの幅広い知識や、セキュリティ、メールやWeb関連など、業務で学習できない部分を幅広く学習することができます。
これら幅広い知識はネットワークスペシャリスト試験の対策でも有効です。
私は「ADVANCE ダブルスター」を807点で合格し、その流れでネットワークスペシャリスト試験の対策に入りましたが、午後I試験では、おおむね5~7割の点数が取れている状態でした(記述式は自己採点なのでブレが大きいです)。
もちろん「ADVANCE ダブルスター」に合格しただけではネットワークスペシャリスト試験に合格することは難しいですが、準備段階として幅広い知識を身に着けるには役立つ試験だといえるでしょう。
ネットワーク業界なら、報奨金対象の可能性がある
あまり知名度が高い試験とまではいえませんが、ネットワーク業界の場合は報奨金対象となっている可能性があります。
ちなみに、私の場合はネットワーク専門の会社ではありませんでしたが「ADVANCE」レベルは報奨金の対象となっており、ネットワークスペシャリスト試験の準備をしながら報酬を得ることが可能でした。
「OCN」テクニカルサポートスタッフ(在宅CAVA業務)に応募できる
これは非常に限られた人のメリットですが「.com Master」が必須資格となっているので、メリットと言えるでしょう。
ちなみに旧試験含めて「BASIC」レベルでは応募することができません。
在宅での業務ができるため、ネットワーク関連のコールセンター業務の経験がある人であれば、例えば育児や介護をしながらでも比較的働きやすい仕事として選択肢の一つにすることはできるでしょう。
デメリット
ネットワーク業界であまり評価は高くない
主催がNTTの関連会社ということもあり、全く知られていない資格というわけでもありませんが、ネットワーク業界では知名度が低めの資格と言えます。
はっきり言ってしまえば
- ネットワーク業界に就職する・した直後なら「CCNA」
- 給料を上げるなら「CCNP」(手当がつく会社が多い)
- 転職なら「ネットワークスペシャリスト試験」(または「CCNP」)
→「CCIE」などと並んで採用の条件とする会社がある。CCIE取得は現実的ではないので、取得するなら「ネットワークスペシャリスト試験」の人が多い
といった感じで「.com Master」には入り込む余地がほとんどないことは事実です。
ネットワーク業界以外では直接的な評価はされない
「.com Master」は幅広くネットワーク関連を学習できる資格ではありますが、ネットワーク業界以外では利用が難しい資格でもあります。
難易度が高い資格であれば、努力を買ってもらえる可能性もあるかと思いますが、現実的には「ADVANCE」のダブルスターレベルでさえ、CCNA取得より簡単といっても良いレベルです(試験範囲がずれるので、CCNA取得だけでは合格は困難です)。
ITインフラ関連の業界であれば比較的効果があるかもしれませんが、「ADVANCE」レベルを取得しても、せいぜい「ITパスポート以上、基本情報技術者試験未満」程度に考えておくといいでしょう。
「.com Master」の難易度は?
ここでは「.com Master」の難易度について、「BASIC」「ADVANCE シングルスターレベル」「ADVANCE ダブルスターレベル」の3つの種類ごとに簡単にまとめます。
詳細な難易度や勉強時間については、以下の記事にまとめてありますので、そちらを参考にしていただければ幸いです。
BASICレベル
「.com Master」の難易度は「BASIC」レベルであればかなり簡単です。具体的には「ITパスポート」よりも簡単なくらいです。
BASICのレベルは、ネットワークエンジニアというよりも、IT関連の基礎知識を身に着けたい社会人全体を対象としている試験です。日常でのPC利用などから想像しやすい問題を扱っているため、難易度は低めといえます。
ADVANCE シングルスターレベル
「ADVANCE」はネットワーク・インフラエンジニアとして働く人を対象としている出題内容ですので、難易度は上がります。基礎的なTCP/IPなどの知識や、セキュリティ関連知識など、専門性が高い知識を身に着けていく必要があります。
合格自体はCCNAよりは簡単ですが、出題範囲が広いため、CCNA取得後の人でも、改めて幅広い内容を学習する必要はあります。
ADVANCE ダブルスターレベル
比較的簡単な試験である「.com Master」ですが、ダブルスターレベルになるとけっこう難易度が高いです。
出題内容自体は、ネットワークスペシャリスト試験の午前IIやCCNAと同等以上の難易度と思った方がいいです。ルーティングテーブルの読み取りのような簡単な問題もありますが、基本的には広く深い知識が求められます(とくに出題の半数程度を占めるTCP/IP関連が難易度も高い)。
ただし「ダブルスター」に「合格」することは難しくありません。
理由は、全体で70%の得点が取れていれば合格できてしまうから(各分野別基準の達成は必要)。現実的な話、ある程度勉強を進めていくと、シングルスター8割、ダブルスター6割正解のようなレベルに達してきます(事実、私もそんな感じの割合でした)。合わせると、7割は超えてしまうため、合格そのものはCCNAよりもだいぶ簡単に手が届くといえます。
「.com Master」のおすすめの利用方法は?
メリットの部分でも述べましたが、最もおすすめの活用方法は「ネットワークスペシャリスト試験」の対策です。
「.com Master」は、資格そのものが高い評価を得られるものではありません。
ネットワーク関連で資格の取得を考える場合
- 何も資格を持っていないのであれば「CCNA」
- 「CCNA」を持っているなら「CCNP」(またはネットワークスペシャリスト試験)
となるため、最初から「.com Master」が目的になることはほぼありません。
また、知名度も他の試験と比べるとそれほど高くなく、難易度も比較的高くはないため、資格そのものが評価される機会が極稀です。
ではどうやってこの資格を活かすべきか? 現実的な方法は以下のようになります。
- 「.com Master ADVANCE」の学習を通して、浅く広くネットワークの学習を行う
- 「.com Master ADVANCE」に合格し、報奨金をもらう
- 「.com Master ADVANCE」で身に着けた知識を元に「ネットワークスペシャリスト試験」の学習を進める
これは、私が実際に「.com Master」を利用した際の内容(受験動機)と同じです。
ちなみに上記のおすすめの利用方法で登場しない「BASIC」は不要と私は考えています。知名度や報奨金対象である可能性を考えると「ITパスポート」やその上の「基本情報技術者試験」を受験した方がメリットは大きいと考えているからです。
数少ない貴重なネットワーク関連資格ではありますが「BASIC」ではほぼTCP/IPの知識が要求されないため、ネットワーク業界を目指す学生の人にもおすすめはできません。取得するなら「ADVANCE」一択というのが私の考えです。
「.com Master」の勉強をするなら?
「ADVANCE」取得を目標にして学習を開始しましょう。
「BASIC」と「ADVANCE」では、基本的に学習範囲が被らないため、「BASIC」から学習を始めていくメリットはほぼありません。
多くの人の場合、すでに「CCNA」を取得済みだと思いますので、最も出題数が多く、難易度も高い「TCP/IP関連(出題分野では第1章の『インターネットの仕組みと関連技術』部分)」については、基礎を学習済みだと思いますので、比較的スムーズに知識を吸収できると思います。
ただし「ネットワークスペシャリスト試験」の合格を最終目標に定めている場合、「TCP/IP」関連の細かい知識(IPv4、IPv6のヘッダの内容やDNSなどの動作の流れ)は、確実に理解しておく必要があります。学習時間は長くなると思いますが、短期合格を意識しすぎないようにしましょう。
ちなみに「BASIC」は難易度がかなり低いため、IT関連の学習未経験の場合でも、あえて挑戦する必要性は低いです。挑戦する場合であっても、問題演習を中心に勉強を進めれば、数十時間で合格は可能なレベルです。
以下の記事に「経験別」「目的別」で、「.com Master ADVANCE」のおすすめの学習方法や教材の利用方法をまとめてありますので、興味がある方は参考にしていただければと思います。