「.com Master ADVANCE シングルスター」第2章の頻出問題
この記事では、「.com Master教科書 .com Master ADVANCE 第3版(以下、教科書と表記)」に付属している模擬試験の5回分の出題傾向から、「第2章 インターネット接続の設定とトラブル対処」の範囲で、実際の試験で問われる可能性の高いシングルスターレベルの問題をまとめました。
試験直前の総仕上げとして参考にしていただければ幸いです。
他の出題範囲を確認したい方は、以下の記事をご参照ください。
本記事は、効率的に点数をとるために、確実におさえておいた方がいい問題のみ掲載しています。身についていない知識があった場合は、受験までに確実におさえておくことをおすすめします。
第2章 インターネット接続の設定とトラブル対処の出題傾向
「第2章 インターネット接続の設定とトラブル対処」はシングルスター50問の内、10問程度の出題数。今回解析した模擬試験5回分では、合計49問が出題され、私が頻出として定義した範囲からは43問(約87.8%)が出題されています。
教科書のページ数でみると、前書きや索引を除く567ページ中、100ページ(約17.6%)が第2章となります。
第1章と関連性が深い範囲ではありますが、CCNA・CCNPのようなネットワークの資格との相性はそれほど高くなく、家庭での集合住宅における接続形態やトラブルシューティングなどがメインの出題となります。
第2章の頻出問題の詳細
ここからは「第2章 インターネットの仕組みと関連技術」の範囲における頻出問題とおさえるポイントをまとめていきます。
また、それぞれの頻出問題には、模擬試験から想定される出題されそうな問題数も記載してあります。この値については、試験内容が途中で変更される可能性がありますので、参考程度にご利用ください。
OSの種類(3問/5回)
教科書では「2.1.2 ネットワーク接続端末」の範囲からの出題。
OSに関する出題は2.5ページ程の範囲で解説されていますので、少ない知識で得点を稼ぎやすいです。
とくにWindows、Android、iOSについての知識は、テキストの内容を確実におさえると得点につながりやすいと思います。また、テキスト出版後に新たに追加された機能などがあれば、余力がある人はおさえるようにしましょう。
Windows | デスクトップOSとサーバOS(ネットワークOS)がある 32ビット版と64ビット版がある 教育機関向けや組み込みデバイス向けのエディションがある Windows10でLinuxディストリビューションを動作させる仕組み(WSL。Windows Subsystem for Linux)がある |
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Android | 開発はグーグル社で無償のオープンソース 管理権限の取得が許可されており、システムファイルの改変ができる(ただし自己責任) アプリケーションの配布がiOSより自由(不正なアプリも出回りやすい) |
iOS | 開発はアップル社で、アップル製品のみサポート アプリの配布はApp Storeで一元管理(Androidより不正なアプリが出回りにくい) |
macOS | 開発はアップル社。 OS X Leopard以降においては、UNIX標準化団体にUNIX認定を受けている MacのコンピュータにWindowsをインストールするソフトウェア「Boot Camp」を利用すると、コンピュータ起動時に、macOSかWindowsを選択して起動できる。 |
Linux | オープンソースソフトウェア。教科書でも模擬試験でもほぼ登場しないので、優先順位低め。 |
出題される選択肢として「●●は64ビットに対応している・していない」などが問われることがあります。64ビットアーキテクチャは浸透してきているため、基本的に全て対応していると考えていいです(古いOSの特徴については、問われる可能性がそもそも低い)。
一方、64ビットアーキテクチャ向けのOSは、基本的に32ビットもサポートしていますが、サポートの打ち切りも進んできています。模擬試験・教科書で問われたことはありませんが、余力があればサポートの打ち切りについても覚えておくといいでしょう。
macOS | 10.14 Mojaveで32ビットアプリケーションのサポートは最後 (10.14 Mojavaは2019年9月時点で最新) |
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iOS | バージョン11以降は32ビットアプリケーションのサポート終了 (iOS13が2019年9月時点で最新) |
Windows | Microsoft Windows Server 2008 R2以降は64ビット版OSのみ |
機器の接続規格(3問/5回)
教科書では「2.1.3 機器の接続規格」の範囲からの出題。
比較的出題されやすいですが、覚えるべき内容が3.5ページ程度あり、ページ内で覚えるべき内容も多いため、あえて優先する範囲ではありません(とくに数字系が多いのが厄介)。
接続規格の中でもUSBに関する問題はよく問われますので、機器の接続規格について学習する場合は優先することをおすすめします。
- USBの規格ごとの特徴(とくにUSB3.0~3.2)
- コネクタの形状と種類による特徴
- Bluetoothの特徴(バージョンごとの特徴まで聞かれたら捨ててもいいです)
サービスの速度(2問/5回)
教科書では「2.2.1 インターネット接続における接続回線」の範囲からの出題。範囲は1.5ページです。
計算問題が出題される分野です。
教科書内では、2進数単位系と国際単位系の単位合わせを行う内容が出てきますが、暗記が大変だと思う人は無理して覚える労力を割く必要はないかと思います(教科書では単位合わせが必要な問題が出ましたが、模擬試験では不要な問題だけでした)。
注意すべきポイントは、ビットとバイト、メガとキロなどの単位の変換は忘れず行うこと。これは情報処理技術者試験でもよく問われます。
関連だと「2.4.4 アクセス回線のトラブルシューティング」の分野から、サービス速度に影響を与える要素も登場しますが、登場頻度は高くありません(1問/5回)。
光ファイバ(2問/5回)
教科書では「2.2.1 インターネット接続における接続回線」の範囲からの出題。
出題される可能性は高くありませんが、1ページ程度のかなり限られた知識で解くことができます。
- 曲げ、踏みつけに弱い
- コア、クラッド、保護層から構成される
- 銅線に比べて電磁ノイズに強く、長距離伝送に向いている
- マルチモードファイバよりシングルモードファイバの方が長距離伝送に向いている
インターネット接続サービスにおける接続回線(7問/5回)
教科書の「2.2.1 インターネット接続における接続回線」の範囲から、上で解説した「サービスの速度」と「光ファイバ」を除いた範囲。ほぼ1問以上問われます。
教科書でいえば10ページ程度の範囲で、ページ数は多いですが、数値の暗記はなく、主に条件に応じた接続形態が問われますので、論理的に暗記しやすい内容ではあります。
- FTTH(Fiver To The Home)
シングルスター方式とパッシブダブルスター方式の違い
光配線タイプ・LAN配線タイプ・VDSLタイプの違い - ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)の接続形態
通信速度は非対称。
光収容だと利用できない。
ADSL通信と一般加入電話の音声通話の併用のため、スプリッタが必要。 - CATVインターネット接続サービス利用時の接続形態
テレビ放送の配信用のCATVの同軸ケーブルや光ファイバにインターネット接続用のデータを共存させる。
データ通信側にはケーブルモデムが必要。
とくに、FTTHに関する問題が出題されやすいです。全体としては、各接続形態で利用される機器と、どこにその機器が接続されるかを覚えておくと点数につながりやすいです。
以下に試験に問われるFTTHの接続方式をまとめておきます。
シングルスター方式 | 接続形態は専有型。収容局と加入者宅は1対1で接続される 加入者ごとに光ファイバが必要なので、コストが高め 終端装置はメディアコンバータ |
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パッシブダブルスター方式 (PON:Passive Optical Network) | 日本において共有型FTTH接続の中で主流 収容局と加入者宅の間で光スプリッタを使用し、1対多での接続が可能 ある程度加入者が集まればシングルスター方式よりコストが安い 終端装置はONU |
※共有型FTTH接続にはADS(Active Double Star方式)もありますが、教科書には出ません。
また、FTTHの集合住宅における配線タイプもよく問われますので、以下の特徴をおさえておくといいでしょう。
光配線タイプ | 各部屋まで光ファイバを引き込むタイプ。工事が大変なので多くない |
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LAN配線タイプ | 共有スペース(主にMDF室)に集合型回線終端装置を配置 その先は、集合住宅内に配線されたLANケーブルで各戸まで接続 |
VDSLタイプ | 共有スペース(主にMDF室)に集合型回線終端装置を配置 その先に、VDSL集合装置を設置し、LANケーブルで接続 VDSL集合装置から先は、各戸まで電話回線用ケーブルで接続 各戸の電話用のモジュラジャックから、PCなどへのデータ通信側にはVDSLモデムを接続 音声通話側のノイズによってデータ通信が不安定になることを防ぐため、音声通話側にはインラインフィルタを取り付ける |
ちなみに、同じ範囲内に登場し、1.5ページ程度を割いている「IPv6対応」については、シングルスター範囲では出題されにくいので、優先度は低めです。ネットワークスペシャリスト試験の受験を目標にしている人は、一通り概要をおさえておきましょう。
公衆無線LAN接続と移動体通信サービス(8問/5回)
教科書では「2.2.1 インターネット接続における接続回線」の範囲からの出題。3ページ程の内容から1~2問程度出題される美味しい範囲です。
- 移動体通信サービスの用語
MNO:移動体通信サービスを提供する
MVNO:MNOから回線を借りてサービスを提供する
MVNE:MVNOにたいして事業支援を行う - APN
接続先の事業者設備を指定する文字列。
SIMフリー端末・MVNOサービス利用時に指定する(MNOでは最初から設定されてる)。 - ローミング
ユーザが契約しているサービス事業者のサービスエリア外でも、事業者間の提携により、別事業者のサービスを利用して、元の事業者と同様のサービスを利用できる。
ただし、事前申請が必要だったり、料金が発生する場合もある。 - 公衆無線LANサービスの特徴
3Gに対応した通信機器は必要ない
屋外でも提供されている
盗聴を防ぐため、多くの場合暗号技術を用いている
上記知識の中で、異質なのはローミングと公衆無線LANサービスの特徴。この二つは模擬試験5回中で合計4問出題の上、試験改訂前の教材でも見かけたことのある出題内容ですが、教科書の中では一切解説されていません。
また、余力がある人は以下の用語についても基礎をおさえるようにしてください。
テザリング | スマホやタブレットを経由して、無線LANでPCからインターネットに接続する |
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3G | 第三世代移動体通信システムに分類されるデータ通信方式 |
LTE | 高速移動体通信システム。4Gに分類される |
キャリアアグリゲーション | 不連続な帯域を束ねて通信を高速化する |
モバイルWiMAX | IEEE802.16eをもとに規格化された高速無線インターネット通信 高速移動体にも対応しており、LANのように常時接続を前提としてサービスが提供されている |
IP電話サービス(4問/5回)
教科書では「2.3.2 IP電話オプションサービス」の範囲からの出題。
教科書記載の重要度では、最も低い「並」となっていますが、なぜか出題頻度は高めです。
そして、問われる内容はほぼ「050IP電話の特徴」だけ。1問は呼制御に利用されるプロトコルとしてSIPを選ばせる問題でしたが、基本的には050IP電話の特徴をおさえればOKです。
あくまで重要度「並」の範囲なので、学習する時間を割くなら、他の分野に回すべきだと思いまが、050IP電話の特徴だけは覚えておくといいでしょう。
- 緊急通話ができない場合がある
→発信者の位置情報等を通知できないと緊急通話はできない - 一般的に全国一律で一般加入電話と通話できる
- 古い端末から新しい端末へ引き継ぎ可能
- 1つの端末に複数割り当て可能
- 設置場所にかかわりなく番号を割り当て可能
- データ通信専用のSIMでも通話可能
端末・宅内通信機器のトラブルシューティング(12問/5回)
教科書では「2.4.2 端末におけるトラブルシューティング」と「2.4.3 宅内通信機器のトラブルシューティング」の範囲からの出題。
あえてまとめてしまったのは、問題によっては細分化した範囲に収まらないことがあるから。例えば「名前解決ができなくなった。被疑部はどこ?」という問題には、両方の観点からの考察が可能な場合があります。
この範囲の学習のポイントとして重要なところは、該当範囲の学習だけでは対応しにくいところ。例えば、頻出のDNS関連のトラブルシューティング(3問/5回)については、その仕組みを全体的に抑えておいた方が回答は容易になります。
また「端末Aから●●へ繋がらない・利用できない。被疑部はどこ?」というパターンについては
- 端末から通信できる・利用できる情報を確認
- 端末から正常に利用できる・利用できない範囲の境界を把握
といった流れで、被疑部を絞っていきましょう。DNSに関する問題に見せかけて、端末に接続されているケーブルの断線や、接続している機器の電源断・ポート不具合などの可能性も考えられます。
詳細な出題傾向としては、以下の通りです。
- DNS関連(3問/5回)
→DNSの仕組みから、どこが問題か? 問題を回避するにはどの設定を変えれば良いか判断する能力が必要
→DNSに見せかけて、実はDNSではないものも登場する - 無線LAN関連(4問/5回)
→通信遅延の原因や、アクセスできない理由など、広範囲が問われる
→「ルータモード」「ブリッジモード」「無線LANアクセスポイント機能付きブロードバンドルータへの置き換え」によるネットワークの分離関連も問われる
→WDSやヘアピンNATは優先度低め。余力があってダブルスターレベルを目指す人はおさえておく - トラブルシューティングコマンド(3問/5回)
→個別のコマンドの表示結果を読み取らせたり、コマンドの違いを読み取らせる
上記以外のパターンは、個別の知識系問題(リンクローカルアドレスが使用されるのはどんなとき?など)です。別範囲の学習でもある程度対応はできるかと思います。
IPv6移行期のトラブルシューティング(2問/5回)
教科書では「2.4.5 IPv6移行期のトラブルシューティング」の範囲からの出題。
問われる内容は「IPv6/IPv4フォールバック問題」。ようするに
- 両方使える環境で、IPv6で通信しようとする
- IPv6通信がタイムアウトする
- 失敗したのでIPv4に切り替える(フォールバック)
という一連の流れの影響で、通信遅延が発生する問題をどう解決するか?に関連する知識を問う問題です。
教科書で覚えべき知識はたったの3つ。出題率は高くありませんが、覚える内容との関係を考えれば美味しい範囲といえます。また、
- TCPリセット
TCPコネクションを切断することで、タイムアウトを早くする - Happy Eyeballs
ブラウザに搭載されている機能。
最初からIPv6とIPv4で接続を開始し、速く接続した結果をユーザーへ出力する - AAAA(クアッドエー)フィルタ
DNSサーバ側の機能。
IPv4による名前解決の問い合わせにAAAAレコード(IPv6用の名前解決)を返答しないことで、IPv6通信をさせない
弱点として、DNSSECとの相性の悪さがある
第2章のその他の範囲
第2章で出題が期待しにくい範囲もまとめておきます。
今回分析した模擬試験5回の内で、その他の範囲になる問題は以下の通りです。
- ホームネットワーク(0問/5回「2.1.1 アクセス回線と通信機器」より)
→他の分野と関連性は高いため、間接的には知識が出てきます - さまざまな端末(1問/5回「2.1.2 ネットワーク接続端末」より)
- 家庭内LAN(2問/5回「2.2.2 家庭内LAN」より)
→トラブルシューティングで問われる知識の基礎になります
→トラブルシューティングが弱いと思う人は、この章も使って学習しましょう - IPv4からIPv6への移行手順と注意点(0問/5回「2.2.3 IPv4からIPv6への移行手順と注意点」より)
- ISPの種類と契約(0問/5回「2.3.1 ISPの種類と契約」より)
- ISPによるユーザサポート(0問/5回「2.3.3 ISPによるユーザサポート」より)
- トラブル原因の切り分けと対処(0問/5回「2.4.1 トラブル原因の切り分けと対処」より)
- アクセス回線のトラブルシューティング(1問/5回「2.4.4 アクセス回線のトラブルシューティング」より)
- オプションサービスのトラブルシューティング(0問/5回「2.4.6 オプションサービスのトラブルシューティング」より)
- その他(2問/5回 分類不明)
上記「その他の範囲」で重要度が「並」からの出題は、1問もありませんでした。ダブルスターを狙う場合も、これらの範囲からの出題率は低い(半数程度がトラブルシューティング、残り半数程度がRAIDからの出題)ので、あえて学習する必要はありません。高得点を狙う人以外「第2章の重要度「並」は、時間が余裕過ぎる人以外は捨てる」と割り切ってしまってもいいでしょう。
上記範囲で重要度「高」は「2.1.2 ネットワーク接続端末」と「2.4.4 アクセス回線のトラブルシューティング」のみ。どちらも1問は問われていますので、余力があれば概要はおさえておきたいところ。
重要度「必」は「2.2.2 家庭内LAN」です。単体での出題は少ないかと思いますが、高確率でトラブルシューティングと絡めて出題されてきます。トラブルシューティングが弱い人は、積極的に学習するといいでしょう。
ちなみに、分類不明のその2問は「SSDの特徴」や「ROMとRAM」の違いなど。出題順や関連性から判断して、第2章の範囲なのだとは思いますが、教科書中のどこで解説されていたのか確認できなかっため、分類不明にしました。