「.com Master ADVANCE シングルスター」第1章の頻出問題
この記事では、「.com Master教科書 .com Master ADVANCE 第3版(以下、教科書と表記)」に付属している模擬試験の5回分の出題傾向から、「第1章 インターネットの仕組みと関連技術」の範囲で、実際の試験で問われる可能性の高いシングルスターレベルの問題をまとめました。
試験直前の総仕上げとして参考にしていただければ幸いです。
他の出題範囲を確認したい方は、以下の記事をご参照ください。
本記事は、効率的に点数をとるために、確実におさえておいた方がいい問題のみ掲載しています。身についていない知識があった場合は、受験までに確実におさえておくことをおすすめします。
第1章 インターネットの仕組みと関連技術の出題傾向
「.com Master ADVANCE」で最大の出題数を誇る「第1章 インターネットの仕組みと関連技術」。今回解析した模擬試験5回分では、合計75問が出題され、私が頻出として定義した範囲からは61問(約81.3%)が出題されています。
教科書のページ数でみると、第1章は前書きや索引を除く567ページ中、181ページ(約32%)と、全5章構成の中でも、突出して内容が多いことがわかります。
一方、一度CCNAなどでネットワークの学習経験がある人であれば、一度は見覚えのある内容が中心ですので、比較的学習しやすいことも特徴です。
ダブルスターでの合格を狙う場合も、この範囲は非常に重要です(ダブルスターの半数程度が第1章からの出題!)。シングルスターの知識もダブルスターで問われますので、頻出範囲については確実に知識を身に着けるようにしましょう。
また、ネットワークスペシャリスト試験を目標に、準備段階として学習している人は、詳細な知識についてもできるだけ抑えるようにしましょう。とくにDNSやTCPなどで問われる「動作の仕組み・流れ」に関する知識は、一通り理解しておくと効果的です。
第1章の頻出問題の詳細
ここからは「第1章 インターネットの仕組みと関連技術」の範囲における頻出問題とおさえるポイントをまとめていきます。
また、それぞれの頻出問題には、模擬試験から想定される出題されそうな問題数も記載してあります。
想定通りであれば、15問中11問程度は頻出のポイントを学習するだけでおさえられることになりますが、試験内容が途中で変更される可能性もありますので、この値については参考程度にご利用ください。
IPにおける基礎知識(5問/5回)
教科書では「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」の範囲からの出題。
高確率で1問程度出題される内容です。「IPネットワークのパケット通信についての説明として正しいもの・誤っているものを選びなさい」という形での出題が多いです。
知識として身に着ける範囲は広いですが、他の問題についても基礎の知識になるため、確実に点数を取れるようにしておくべき出題といえます。とくに以下の特徴はよく聞かれますので、最低限おさえておきましょう。
- 必ずしも物理的に最短距離で伝送はされない
- 同じ宛先に送信しても、それぞれのパケットが同じ経路を通るとは限らない
- 送信した順番で、データが到着するとは限らない
- ヘッダには送信先・送信元のIPアドレスが格納されている
IPv4の知識(9問/5回)
教科書では「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」の範囲からの出題。
「IP」ではなく「IPv4」と明確に指定したタイプの問題であり、選択肢としては上記「IPにおける基礎知識」に紛れ込むこともあります。
内容はかなり広範囲にわたり、ダブルスター問題に挑む際にも必須の知識となります。出題率はかなり高いので、確実に点を取れるように仕上げておくと良いでしょう。
- IPv4アドレスの種類(リンクローカルアドレス、ブロードキャストアドレスなどの特徴)
- ●●キャストの判断(ブロードキャスト、マルチキャストなどの特徴)
- 指定されたアドレスの読み取り(ホストに付与可能か? どんな種類のアドレスか?)
- サブネット
クラス | 上位ビット | プライベートIPアドレスの範囲 | プライベートIPアドレスのサブネット |
クラスA | 0 | 10.0.0.0~10.255.255.255 | 255.0.0.0 |
クラスB | 10 | 172.16.0.0~172.31.255.255 | 255.255.0.0 |
クラスC | 110 | 192.168.0.0~192.168.255.255 | 255.255.255.0 |
クラスD | 1110 | なし(マルチキャスト用) | ー |
クラスE | 1111 | なし(将来の使用のための予約) | ー |
アドレスの種類 | 特徴 |
ネットワークアドレス | ネットワーク全体を代表するアドレス。ホスト部が全て0 |
ブロードキャストアドレス | ブロードキャストを行う際に使用する。ホスト部が全て1 |
ループバックアドレス | 自分自身を表す。通常127.0.0.1 |
リンクローカルアドレス | IPアドレスが決定できなかった際に自動設定されるアドレス。169.254.0.0~169.254.255.255の範囲。ルータを超えない範囲で通信できる。 |
グローバルIPv4アドレス | インターネットで使用できるIPv4アドレス。 |
プライベートIPv4アドレス | インターネットに直接接続しない場所で使用できるIPv4アドレス。 |
通信方式 | 特徴 |
ユニキャスト | 1対1の通信 |
マルチキャスト | 特定のアドレスを指定して行う1対多の通信 |
ブロードキャスト | 同一データリンク内全体宛ての、1体多の通信 |
エニーキャスト | IPv6で利用する。特定のグループの最適な1台に対する1対1の通信。エニーキャストアドレスには、グローバルユニキャストアドレスが使用される。 |
とくに指定された条件からホストに付与可能なアドレスを選ぶ問題や、同一ネットワークで割当可能なIPアドレスを判断する知識はよく問われます。理解が進んできてら、アドレスクラスによるネットワークの分類や、クラスレスアドレッシングについても抑えておきましょう。
また余裕がある人は、IPv4ヘッダの基本的な内容(とくにIPv6との違い)についておさえておくと、ダブルスター範囲でも大いに役立ちますのでおすすめです。
IPv6の知識(5問/5回)
教科書では「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」の範囲からの出題。
IPv6については、ネットワークの学習経験があっても馴染みが薄い人も多いかと思います。
どうしてもという場合捨ててしまっても構いませんが、以下の知識はダブルスター範囲でもよく出題されますので、ダブルスターを目指すなら捨てないようにしましょう。
- IPv6アドレスの種類(リンクローカルアドレス、ブロードキャストアドレスなどの違い・範囲)
- 表記方法(省略表記)
- IPv6アドレスの自動設定
IPv4と同様、IPv6ヘッダの内容(とくにIPv4との違い)についておさえておくと、ダブルスターの問題でも得点しやすくなります。
- IPv4は32bit、IPv6は128bitで構成される(IPv6はほぼ無限大にアドレスがある)
- IPv4とIPv6はアドレスの表記方法が違う(計算の際はIPv6が16進数である点に注意!)
- IPv6は拡張ヘッダでセキュリティ機能(IPsec)を標準で装備
- IPv6の基本ヘッダは固定長(IPv4は可変長。なのでヘッダにヘッダ長のフィールドがある)
- IPv6ではフラグメント化しないため「識別子」「フラグ」「フラグメントオフセット」のヘッダは廃止された
イーサネット関連知識(10問/5回)
教科書では「1.2.2 LANの技術」の範囲からの出題。
範囲はやや広いですが、1~2問は出題されると思っていいです。
- 無線LANの規格と特徴
- スイッチングハブとリピータハブの違い(大雑把に、リピータハブは判断せず全てのポートからフレームを送出、スイッチングハブは判断して送出と覚えればだいたい解ける)
- コリジョンドメイン
- MACアドレスに関する知識(とくにARP・NDP。ダブルスター以上を目指すなら、動作の流れも覚えること)
中でも頻出は無線LAN。1問は出題される確率が高く、内容としては無線LAN規格とその特徴が問われることが多いです。教科書の内容だと、僅か2ページに知識が集約されていますので、覚える量と出題率の関係からすれば、かなり美味しい問題です。
規格 | 転送速度 | 周波数帯 |
IEEE802.11b | 11Mbps | 2.4GHz |
IEEE802.11a | 54Mpbs | 5GHz |
IEEE802.11g | 54Mbps | 2.4GHz |
IEEE802.11n | 600Mbps | 2.4GHz、5GHz |
IEEE802.11ac | 1Gbps以上 | 5GHz |
IEEE802.11ad | 1Gbps以上 | 60GHz |
周波数帯 | 特徴 |
2.4GHz | 障害物に強い 屋内・屋外で使える 電子レンジなどの周辺機器と干渉しやすい |
5GHz | 障害物に弱い 屋外で利用できない帯域がある(気象衛星、GPS衛星などと干渉するため。実際には、WiFiで使える帯域と各種システムが干渉しないよう、5GHz帯の中で更に細分化されているため、利用できる) 電波干渉が少ない |
60GHz | 直進性が高く、障害物に弱い 狭い範囲での高速通信向き |
- MIMO
複数アンテナを同時使用し、通信を束ねて高速化する - チャネルボンティング
複数チャネルを使用して帯域幅を広げることで高速化する - インフラストラクチャモード
アクセスポイントを介して通信する無線LANのモード。家庭内LANなどで利用 - アドホックモード
アクセスポイントなしで無線LAN機器同士が直接交信するモード。携帯ゲーム機同士の通信などで利用
ちなみに、MACアドレスに関する知識については、かなり広範囲のものが求められる上に、出題頻度は高くありませんが、イーサネット以外の出題にも影響してきますので、確実に基礎をおさえておいてください。
ポート番号関連(3問/5回)
教科書では主に「1.3.1 サーバ」の範囲からの出題。他の範囲でも幅広く登場します。
ポート番号に関する基礎的な知識や、ウェルノウンポートを答える出題です。
出題数は少ないですが、「.com Master教科書 .com Master ADVANCE」で、1.5ページ程度に集約されており、ウェルノウンポートは個別のプロトコルの問題でも問われる知識ですので、この分野も確実に覚えておきたい内容です。
- ポート番号の基礎知識(とくにウェルノウンポート)
- ウェルノウンポートとプロトコルの組み合わせ
また、ウェルノウンポートの番号と、プロトコルの組み合わせについては、以下の内容が比較的問われやすい内容です。メールのセキュリティ関連のプロトコルはやや出題確率が低いですが、ダブルスター範囲までしっかり点を取れるようにするのであれば、覚えておくべき知識です。
プロトコル(TCP) | プロトコル(UDP) | ポート番号 | 用途 |
FTP(データ用) | 20 | ファイル転送 | |
FTP(制御用) | 21 | ファイル転送 | |
SSH | 22 | 遠隔操作。パスワード情報を含めて暗号化 | |
Telnet | 23 | 遠隔操作。 | |
SMTP | 25 | 電子メールの送信 | |
STARLLS | 25 | SMTPの通信を平文で開始。双方がSTARLLSに対応しているなら暗号化通信にする | |
DNS(ゾーン転送) | DNS(名前解決) | 53 | 名前解決 |
HTTP | 80 | Web通信 | |
POP3 | 110 | 電子メールの受信。 | |
STARLLS | POP3の通信を平文で開始。双方がSTARLLSに対応しているなら暗号化通信にする | ||
IMAP4 | 143 | 電子メールの受信。メールはサーバに残る | |
HTTPS | 443 | HTTPにTLS/SSLでの暗号化を追加。 | |
SMTPS | 465 | SMTPにTLS/SSLでの暗号化を追加。SMTP over SSL | |
IMAPS | 993 | IMAP4にTLS/SSLでの暗号化を追加。IMAP over SSL | |
POP3S | 995 | POP3にTLS/SSLでの暗号化を追加。POP over SSL |
ドメイン関連(6問/5回)
教科書では「1.3.2 ドメイン名」の範囲からの出題。
ネットワークエンジニアとして働いていても、やや馴染みの薄い分野かと思います。
捨ててしまっても合格は可能ですし、ダブルスターやネットワークスペシャリスト試験でも利用できる機会が限られる知識だとは思います。積極的に点を取りたい場合は、以下の内容だけでも学習しておくと得点につながりやすいと思います。
- gTLDとは?(国・地域の制限なく登録できるトップレベルドメイン)
- ccTLDとは?(国別コードで割り当てられるトップレベルドメイン)
- gTLDの種別と用途(com、biz、org、net、edu、govあたりはおさえたい)
- 商用利用できるドメイン
- 属性型JPドメイン名、地域型JPドメイン名、都道府県型JPドメイン名、汎用JPドメイン名の取得に関するルール
ccTLDの具体例(日本はjp)は問われる可能性がありますが、範囲が広くなるので無理に覚える必要はありません。覚えたいのであれば、テキストに載っている内容のみを暗記し、覚えていないものは国の名前から推測しましょう。
また、ドメイン分野で登場するインターネットの資源管理組織については、出題される可能性が少ないので優先順位は低めです。
DNS関連(6問/5回)
教科書では「1.3.3 名前解決」の範囲からの出題。
DNSに関する問題については、DNSの構成と名前解決の仕組み・動作を問う問題が多く出題されます。とくに名前解決を行う上での、キャッシュDNSサーバの役割や、キャッシュ機能、再起問い合わせについてはおさえておきましょう。
一方、リソースレコードやDNSプロキシ、DNSプリフェッチなどは出題される可能性が低いです。まずは動作の仕組みを確実におさえるようにしましょう。
メール関連(6問/5回)
教科書では「1.3.4 メール配信技術」の範囲からの出題。
第1章におけるメール関連の出題は、プロトコルとその特徴を問う問題がほとんどです。IMAP、POP、SMTPの特徴がわかれば、回答できる可能性が高いといえます。最低限、以下の内容で覚えておきましょう。
IMAP4 | ・メール受信で利用する ・クライアントがメールを受信した後も、サーバの保存領域でメールを管理する ・サーバ側で保存しているメールをフォルダで分類したり、複数端末からメールの閲覧が可能 |
---|---|
POP3 | ・メール受信で利用する ・クライアントがメールを受信したら、サーバからメールを削除 |
SMTP | ・クライアントから送信されたメールを受け付ける ・メールサーバからメールサーバへの転送でも利用する |
また、添付ファイル関連で、MIMEやContent-Typeに関する出題もあります。余力がある人はテキストに記載されている内容だけでもおさえておくと良いでしょう。
WWW関連(7問/5回)
教科書では「1.3.5 WWW」の範囲からの出題。かなり広範囲からちょっとずつ出題されてくるため「WWW関連」としてまとめました。
教科書で15ページ程あり、覚える内容がかなり多いうえ、教科書だけでは理解が難しいところが多い分野です。内容もCCNAなどのネットワーク知識とは関連性が薄めであるため、苦手であれば捨ててしまってもかまいません。
他の分野を優先的に学習したうえで、余裕があれば基礎的な用語を覚えておく程度にするといいでしょう。
FTP(4問/5回)
教科書では「1.3.6 その他のアプリケーションプロトコル」の範囲からの出題。
FTPに関する出題は、パターンが似ているものが多いので、少ない知識で点数を上げやすいです。
- 制御用はTCP21番ポート、データ転送用はTCP20番ポート
- 不特定多数のユーザが利用することを想定した「Anonymous FTP」
- アクティブモードとパッシブモード(FTPサーバ側からクライアントに接続しようとした際ファイアウォールに阻止されることがある。パッシブモードはクライアント側から確立し、これを回避する)
- BinaryモードとASCIIモード(ASCIIモードでは改行コードが送信先OSによって変化する。画像ファイルなどはBinaryモードで転送が望ましい)
余力があれば、SSL/TLSでFTPを暗号化する「FTPS」、SSHでファイル転送する「SCP」「SFTP」を覚えておくとより万全ですが、出題される確率は低めです。
ちなみに「その他のアプリケーションプロトコル」で出題される他の問題はストリーミング配信やNTP。出題率は低めですが、内容少ないので、余力があれば基礎知識をおさえておくと良いでしょう。
第1章のその他の範囲
念のため、第1章で出題が期待しにくい範囲もまとめておきます。
今回分析した模擬試験5回の内で、その他の範囲になる問題は以下の通りです。
- OSI参照モデル(1問/5回「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」より)
- NAT/NAPT(3問/5回「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」より)
- DHCP(2問/5回「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」より)
- ICMP/ICMPv6(2問/5回「1.2.1 インターネットの通信プロトコル」より)
- ルーティング(1問/5回「1.2.3 インターネットの転送技術」より)
- ファイル形式(3問/5回「1.3.7 コンテンツの形式」より)
- 圧縮技術(2問/5回「1.3.7 コンテンツの形式」より)
OSI参照モデルは、旧試験用のアプリでも出題されますが、数は多くありません。また、個別のプロトコルの知識をしっかり身に着けておけば解答可能な内容ですので、積極的に学習する必要は低いと言えます。
NAT/NAPT、DHCP、ICMP/ICMPv6については、シングルスターレベルで十分な人は捨ててしまっても構いませんが、ネットワークエンジニアとしては重要な知識です。とくにダブルスターやネットワークスペシャリスト試験を視野に入れている人は、しっかりおさえておきましょう。
頻出でない範囲で、以下の内容については、とくに優先順位低めです。該当範囲から出題されないとは言い切れませんが、同じ時間勉強するのであれば、頻出かつ理解が足りていない範囲に集中するようにしましょう。
- 「1.1.1 インターネットとその歴史」
→ ほぼ出ないと思っていいです。
→ 学問的には重要ですが、他の勉強を優先しましょう - 「1.1.2 インターネットの仕組みと関連技術」
→ 他の範囲で網羅できるので不要。完全な初心者は一読しましょう - 「1.2.3 インターネットの転送技術」
→ ルーティング(ロンゲストマッチ)はダブルスターで頻出です!
→ NATは出題率60%程度。余力があればおさえたいところ - 「1.3.7 コンテンツの形式」
→ 出題がないわけでもないけど、覚えるべき対象が多い
→ なぜか画像やXML関連で、SVGは問われやすい(これだけは覚えておく)
→ 覚えるなら圧縮技術の基礎知識は内容が少ないのでおすすめ(出題率40%程)