【初心者向け】第三種冷凍機械責任者試験 – 合格ラインを26時間で突破した勉強方法
この記事では、第三種冷凍機械責任者試験に挑むため、全くの業界初心者の私が実際に行った勉強方法とその反省点を中心にまとめます。初心者の方で勉強方法や勉強時間、教材選びに迷っている方の参考にしていただければ幸いです。
この記事は、初心者の方を対象に記載しております。既に学習経験のある方や、業務での経験がある方向けの勉強方法にはなっておりません。
また、この記事の学習方法は「第三種冷凍機械責任者試験に合格すること」を主な目的としています。より深い知識を身に着けたい場合は、テキストを詳細に読み込み、法令についても条文をしっかり読み込むことをおすすめします。
結論。第三種冷凍機械責任者試験の勉強について
- 初心者でも26時間で突破できる可能性はある
- 安全策をとるなら、50時間程度は確保しておきたい
- 保安管理技術はテキストもあった方がいい
- 法令は過去問一択でOK
- 通勤時間がメインなら、過去問演習はスマホやタブレットを利用する
- 実力診断のため、新しい過去問を1つ以上は残しておく
- 「過去問演習 → 間違えをテキストで確認」が、最善ではある
それでは、詳細を解説していきます。
第三種冷凍責任者試験の勉強前のスペック
念のためですが、第三種冷凍機械責任者試験の勉強を開始する前の私のスペックは以下のような状態でした。
- 第三種冷凍責任者試験について
→試験内容をほぼ知らない(試験の名前から推測するレベル)
→ビルメン関連で有名な資格と認識している
→冷凍機械というのだから、冷蔵庫とか冷凍庫とか空調とかの資格だろうという認識 - 保安管理技術について
→物理は苦手科目(飽和蒸気圧と温度の関係を試験直前まで間違えてたレベル)
→冷蔵庫やエアコンがどんな原理で冷やしているのか知らない
→冷凍の機械に使われている機器の用語は全く知らない - 法令(高圧ガス保安法)について
→高圧ガス保安法については、全く知らない
→危険物取扱者、計量士、行政書士で法律勉強したから、似た感覚で勉強すればいいやという認識
一言でいうなら、勉強が得意なだけの完全な初心者ということになります(本業はネットワークエンジニアですので)。IT関連なので一応理系の人間ではありますが、学生時代の得意科目は社会の全科目。数学・物理・化学(ついでに英語)が苦手でしたので、ほぼアドバンテージはありません。
また、周囲に学習経験がある人や、関連の業務に関わっている人もいませんので、試験に関する情報の面でも完全な初心者であり、「勉強が得意」という一点を除けば有利な点はほぼありませんでした。
主に利用した参考書・サイト
試験の範囲は大きく二つ。「保安管理技術」と「法令」となります。
「保安管理技術」に利用したテキスト
利用したのはこちらのテキストです。他にも初心者向けのテキストとして「ゼロからはじめる3種冷凍試験」などもありますが、わたしは「トコトンわかりやすい第3種 冷凍機械責任者試験 完全テキスト」のみで十分理解できました(後述しますが、一部理解は難しいです)。
ちなみに「保安管理技術に」と前置きしている通り、法令の勉強にはこのテキストを利用しませんでした(法令は単純暗記で対応できるので、過去問演習だけで十分です)。
「保安管理技術」を学習する上でのテキストの必要性
試験によっては過去問だけでも十分合格できるものもありますが、第三種冷凍機械責任者試験については、テキストは購入しておいた方が効率的です(とくに初心者の方の場合)。
最大の理由は「冷凍機械に使用される機器をイラスト付きで把握できるから」。
冷凍機械に利用される機器はかなり種類が多く、文字だけでどんな特徴の機器であるかを把握するのは実質不可能です。ですので、初心者が文字のみの過去問で状況を想像し、理解を深めるのは無駄な時間を消耗します。
また、過去問から機器の種類を把握しようとした場合、自分で関連する機器についての出題内容をまとめていかないと「どれだけ種類の機器がどのような用途で使われていて、実際に出題されるのか?」を把握しにくく、ここも学習効率を落とす要因となります。
その他にも「それぞれの機器がどのようにつながっているか?」「図やグラフは実際にどのような形をしているか」など、保安管理技術の範囲は、視覚的に把握することで学習効率が上がる要素がかなりあります。
ただし、過去問演習を行わずにテキストを読み続けると、優先順位の低い内容に時間がとられてしまいます。テキストでの学習はほどほどにおさえ、一通りの内容を把握できたら、あとは参考資料として活用しましょう。
利用した過去問
利用した過去問はこちらになります。こちらに掲載のある過去問について、全て1回以上は解きました。
メリットとデメリットは以下の通り。
- 無料で学習できる
- 通勤時間中にスマホで勉強しやすい ← 最重要ポイント
- 範囲が平成28年までしか対応していない(解説不要でいいなら、最新版は別のサイトで学習可能)
- 広告の挿入が多い(スマホだと稀に「×」で閉じないと次に進めなくなる)
- 解説が問題文そのままのことが多い(とくに法令)
- 解説に貼ってある法令のリンク先が、すぐに理解できる解説になっていない
最大のポイントは「通勤時間などの移動時間で学習できる」ところです。家でまとまった時間をとれるのであればともかく、忙しい学生や社会人であれば、通勤・通学時間を利用した学習が多くなると思います。私にとっては、この1点がこのサイトを利用するポイントとして、最も重要でした。
ただし、デメリットに記載のある通り、私の利用したサイトは学習できる範囲がやや古い点と、解説が詳しくない(ほとんど役立たないこともある)点がマイナスです。今後、何年も経過して試験内容が変わっていった場合や、第二種も視野に入れて詳細な学習を行いたい場合は、本の問題集を購入してもいいでしょう。
ちなみに、実をいうと、高いお金を払って以下の本の過去問集も購入していました。
しかし、こちらの問題集だと、通勤時間中の学習には不向きです。そもそも満員電車で本を開くこと自体が難しいですが、その上解答と解説が別冊になっている構成であるため、机をつかってゆっくり学習できる環境がないと、利用が難しいです。
若干利用した参考資料
ほぼ利用しませんでしたが、こちらのサイトでは出題内容ごとに過去問の演習ができます(例えば「圧縮機に関する過去問演習」といった具合です)。
また「冷凍の原理」や「p-h線図」など、簡単な図もあわせて解説もありますので、無料でテキスト代わりに利用することも可能です。
保安管理技術の勉強方法
①全体を把握する
まずは先に紹介した「トコトンわかりやすい第3種 冷凍機械責任者試験 完全テキスト」で、保安管理技術の範囲を読みます。
私の場合、1度読んだ部分をできるだけ数日以内にもう一度読み直し、全て2回読んでから、最後に全体を流し読みしました(つまり、合計3回です)。
テキストの内容としては、以下の章については初心者にとって読むのが難しい範囲ではないかと思います。
- 圧縮機
- 凝縮器
- 膨張弁
- 蒸発器
これら4つは冷凍サイクルで最も重要な要素といえる機器です。
必要とされる知識についても、他の機器や冷凍の原理、式の暗記よりも深いものが求められますし、登場する機器の種類も豊富です。
それぞれの機器の動作内容についても理解する必要があるため、最初に読むときはかなりの時間を要するかと思います(私は時速10~15ページで進めるのがやっとでした)。
ただし、あくまで試験で問われるレベルに解答できればOKですし、この4つの分野をある程度理解できれば、試験の山は超えたも同然です。
あまり深く暗記しようとはせず、まずは全体の把握を進めることを優先しましょう。
②過去問演習
学習ができた範囲から、並行して過去問演習を進めました。
こうすることで「実際の試験ではどの程度のレベルが問われるのか?」を確認することができ、テキストの2周目、3周目では、ある程度の読み飛ばしが可能です。
③テキストの保安管理技術の範囲を把握できた時点で、最新の過去問で実力診断
テキストの保安管理技術の範囲が全て読み終わった段階で、一度も挑戦していない最新の試験に取り組み、自分の実力診断を実施しました(このために、わざと直近2回の過去問は解かないで取っておきました)。
結果としては以下の通りです。
勉強時間(保安管理技術):約20時間(時間の計測はStudyplusを利用)
正解率:6割(ケアレスミスを正解にすると8割)
この時点で、既に合格ラインには達したことがわかります。
④過去問を幅広く解き、合格ラインから更に上で安定させる
合格ラインを突破できるようになったら、あとはひたすら過去問を解きつつ、理解の浅いところをときどきテキストで振り返る形で学習を実施しました(試験までの追加の勉強は、法令の範囲を含めて10時間強)。
最も効率が良い方法としては「過去問演習 → 間違えたところをテキストで確認」だと思いますが、私の場合は学習の大半が通勤電車となっていたため、テキストでの確認が難しく、後で覚えている範囲でテキストを読み直すという形での対応となりました。
補足①:式や値の暗記について
第三種冷凍機械責任者試験の保安管理技術については、多くの式や値が登場します。
凝縮負荷を求める式や、物質の熱伝導率など、かなりの量がテキストには登場するため「どのくらい深い理解が求められるか?」は迷うところだと思います。
結論から言うと
- 細かい数値が羅列されている部分は暗記しない
- 過去問で出た内容についてはある程度暗記する
- 式は「過去問で出題された値の求め方」のみ覚える(実際に計算できる必要はない)
といった対応をしてください。
なんとなく問題を解かなくてもわかると思いますが「グラスウールの熱伝導率が0.035~0.046W/(m・K)」などという知識は全く必要ありません。
しかし「金属の方がグラスウールより熱伝導率が大きく、グラスウールの方が空気より熱伝導率が大きい」のような大雑把なレベルであればよく出題されます。
また、試験は電卓の持ち込みが可能ですが、電卓が必要になるレベルでの計算は求められません。登場する式についても「伝熱量は温度差、伝熱面積に比例し、物体の厚さに反比例する。○か×?」のような出題内容が登場しますので、あくまで「問われればなんとなく式を組み立てられる」というレベルでOKです。
補足②:優先的に暗記するべきこと
暗記の優先順位をあげるのであれば、当然過去問で出題された内容と、その関連知識の優先度が高いですが、それ以外の内容として、以下のようなものは覚えておきましょう。
- ○○には、××を使用してはいけない
- ○○を行う時は、××を行ってはならない
- 関連する他の用語と置き換えやすい内容
このパターンは、そのまま出題されたり、○○や××の部分を他の物に置き換えたひっかけ問題が出題されるパターンが多いです。
例えば「アンモニア」の部分を「フルオロカーボン」に入れ替えるのはよくある出題パターンです。アンモニアとフルオロカーボンで、潤滑油の扱いや水の混入による影響などが変わりますが、そういった要素を入れ替えた出題はかなりの頻出問題です。
この他にも圧縮機について「容積式」の解説を「遠心式」に置き換えるなど、「似たものに置き換えて出題する」ということが多々あります。テキストを読んでいる最中に「ここは単純な置き換えができそうだ」と思った箇所については、積極的に暗記しておくといいでしょう。
法令の勉強方法:過去問演習のみ
過去問演習一択で十分です。
第三種冷凍機械責任者試験で問われる内容の多くは、毎回パターンが決まっているため、細かい表などにまとめた値を暗記する必要性は低いです。数値の暗記についても、毎回同じような内容が出題されますので、結局は過去問演習が最短での合格につながります。
注意点として、数値に関する問題は「以下か以上か。より上か未満か」などは正確に把握しておくようにしましょう。数値そのものや「以上・以下・より上・未満」などの表現が変化して出題されることがあるので、その点は正確に把握しておく必要があります。
ちなみに、法令については、私は6時間の勉強した時点で合格ラインを突破していました。このことからも、初心者にとって、保安管理技術よりも法令はかなり簡単であるといえるかと思います。
勉強方法の反省点と、反省を活かした勉強方法
今回の勉強方法について、より効率化する場合の反省点は以下の通りです。
- テキストの学習は、もっと軽くしてもよかった
- 机での学習時間を「過去問演習 → 間違いをテキストで学習」を中心にすればよかった
保安管理技術の範囲については、テキストでの学習を行った方が効率が良い(初心者は)というのは、試験が終わった後の今でも意見としては変わっていません。
しかし、テキストの内容は実際に出題される内容よりもやや深いものになっているため、やはり時間が大きく取られます。
そこで、「もし、もう一度ゼロから試験勉強をするならどうするか?」を考えると以下のようになります。
- 保安管理技術の範囲をテキストで2回流し読み(精読せず、3回目の不要)
- 並行して法令の過去問演習
- テキストの保安管理技術を流し読みしたら、過去問演習しつつ、間違えた問題をテキストで確認
- 勉強時間が20時間になったら、残しておいた最新の過去問で実力診断
- 実力診断結果次第で、試験までの勉強量を調整
- あとは「過去問演習 → 間違いをテキストで確認」を繰り返す
今回は、机での学習時間をテキストの読み込みに20時間ほど使ってしまいましたが、その時間の1/3程度を「過去問演習 → 間違いをテキストで確認」に割り当てることができれば、より効率的な学習ができたのではと思います。
ただし、いくら学習効率を上げることができたとしても、第三種冷凍機械責任者は年に1度しか機会のない試験です。50時間は勉強時間を確保しておいて、進捗具合によっては勉強量を調整できるよう、余裕を持たせることをおすすめします。