シスコ技術者認定が、2020年2月24日より大幅に改定予定
ネットワークエンジニアとしては、ほぼ必須の資格と言える「シスコ技術者認定」が、2020年2月24日より大幅に改定されます。
この記事では「主な改定内容」と「今後想定される変化」についてまとめます。

・ネットワークエンジニアを目指している方
の参考にしていただければ幸いです。
シスコ技術者認定が2020年2月24日より改訂され、それに伴い新しく記事を書きなおしました。
新しい記事については、以下の記事を参考にしていただければと思います。
シスコ技術者認定のトラック形態が大きく変更される
まずは改定前の状況について簡単に確認しておきます。現在のシスコ技術者認定のトラックについては、以下のとおりです。

そして、2020年2月24日の改訂によって、上記の内容が以下のように変更されます。
主な変更点を簡単にまとめると、以下のようになります。
- エントリーレベルの「CCENT」は廃止。「CCT」が新設された
- 「CCT」には「CCT Routing & Switching」と「CCT Data Center」の2分野が用意される予定
- CCNAは、全てのトラックが「CCNA」に集約された
- 「CCNP Routing & Switching」は「CCNP Enterprise」になった
- 「CCIE Routing & Switching」は「CCIE Enterprise infrastructure」になった
- 新しく「DevNet認定プログラム」が作られる
CCENT廃止後に実施される「CCT」とは?
既存のCCENTが廃止されて、新しく設けられた資格が「CCT(Cisco Certified Technician)」です。もちろん、その内容は「CCENT」と同じではありません。
トラックは「CCT Routing & Switching」と「CCT Data Center」の2種類が用意されています。
「CCT Routing & Switching」については、その名の通りルータやスイッチの知識が重視され、オンサイトサポートやメンテナンスに必要なスキルが問われます。
一方「CCT Data Center」はCisco UCS(Unified Computing System)やサーバメンテナンスのスキルが重視される資格となります。
また、両試験ともCisco TAC(Technical Assistance Center)と連携して、問題を解決する能力がテストされる予定となっています。
既存のシスコ技術者認定の、変化に関する考察
CCNAの改定における変化
まず、先にも記載しましたが、一番の大きな変化は「トラックの集約」です。10の分野があったCCNAは、今回の改訂により、1つの「CCNA」となります。
また、試験範囲も改訂があります。試験範囲の内容は、大まかに以下のとおりです(詳細はこちら)。
- ネットワークの基礎
- ネットワークアクセス
- IP接続
- IPサービス
- セキュリティの基礎
- 自動化とプログラマビリティ
上記6分野のうち、新たに設けられたのが「自動化とプログラマビリティ」です。
恐らくSDN(Software Defined Network)の知識や、それらに伴うプログラミングの知識・考え方なども問われるのではないかと思われます。
SDNに関する知識・業務経験のある人はまだ多くないかと思います(SDNの研究が始まったのは2008年)。難易度が上昇するかは不明ですが「業務経験ありでも、学習すべきことは多くなる」のは確実ではないかと思います。
CCNPの改定における変化
今回の改訂によって、「CCNP Routing & Switching」は「CCNP Enterprise」へと変化しました。
取得のために必要な科目数は、現在3科目から2科目へと減少しますが、難易度と受験料が下がる可能性は低いと考えています(CCNP R&Sが4科目だった時代より、3科目の時代の方が受験料が高いため)。
また、必要な2科目は以下のとおりです。
- 必須科目:300-401 ENCOR
- 選択科目:以下6科目から1つ
300-410 ENARSI
300-415 ENSDWI
300-420 ENSLD
300-425 ENWLSD
300-430 ENWLSI
300-435 ENAUTO
また、必須科目である「300-401 ENCOR」の出題範囲については、以下のとおりです(詳細はこちら)。
- Dual stack (IPv4 and IPv6) architecture
- Virtualization
- Infrastructure
- Network assurance
- Security
- Automation
CCNAと同様に、CCNPにおいても「自動化」に関する内容が、新しく出題範囲となっています。内容を見ると「Python」や「YANG」「Cisco DNA CenterとvManageのAPI」などの知識も必要となる予定のようです。
選択科目については、得意分野から1つ選べば合格を狙えるというメリットもありますが、試験範囲が専門化し、結果的に難易度が高まる可能性が高いかと思っています。
必須科目である「300-401 ENCOR」の範囲についての詳細と、CCIEの現行の試験を比較すると、CCIEの筆記試験に含まれない内容も出題されることがわかります。後述しますが「300-401 ENCOR」はCCIEの筆記試験代わりとして利用できますので、難易度は現在の「CCIEの筆記試験」と同等以上となっている可能性も考慮した方がいいでしょう。
CCIEの改定における変化
CCIEについては、現在筆記試験とラボ試験がありますが、このうち改訂後の筆記試験については「CCNP Enterprise」の必須科目である「300-401 ENCOR」が対応することとなります。
つまり「CCNP Enterprise」に合格していれば、CCIEのラボ試験受験資格を得ることができます。
とはいえ、CCIEのラボ試験にも変化があります。
新しいラボ試験は、全トラック共通で「Module1(Design)」と「Module2(Deploy/Operate/Optimize)」の2つで構成されています。そして、このうち「Module1(Design)」は現行の「Diagnostics」と同様の内容であり、3時間固定の筆記試験として実施されることが想定されます。
また、CCNA、CCNPの自動化の流れを考えると、Pythonによるプログラミングの能力はほぼ必須と考えたほうがいいでしょう。
新しい認定「DevNet認定プログラム」について
今回のトラック修正によって、新しく「DevNet認定」が登場しました。
レベルは「アソシエイト」「プロフェッショナル」「スペシャリスト」の3段階が用意されています。
「DevNet認定」は、シスコプラットフォーム上に構築されたアプリケーションの開発と保守に関する知識の証明として利用できる資格です。内容としては「ソフトウェア開発」「DevOpsエンジニア」「自動化のスペシャリスト」「ソフトウェアプロフェッショナル」となっており、IoTやクラウドのためのアプリケーション、自動化などの新技術に関するものが問われます。
やはりこの分野についても「自動化」は用意されています。また「DevNet認定」は、比較的「最新技術」や「開発」が重視されている印象です。プログラミング能力については「アソシエイト」レベルでPythonプログラミングを含むソフトウェア開発1年以上、「プロフェッショナル」以上では3~5年が想定されており、「プログラマー」としての能力が問われることとなります。
全体として、SDN製品やプログラミング(Python)の能力が求められてくるのでは?
今回の改訂で、最も大きいと感じるところは、やはり新しく追加された分野である「自動化」です。受験自体に変化があるという意味では、トラックの変化も大きいですが、今後、長くネットワーク業界で仕事・学習を続けていくのであれば「自動化」の流れの影響は確実に受けることになるでしょう。
現状では「自動化」に関する業務を経験したことがある人は少数派だと思います(私も経験無しです)。ただ、今後のネットワーク業界で自動化が進むことはほぼ確実で、そのためにもSDN製品の知識や、プログラミング(Pythonなど)の能力は確実に重要視されていくはずです。
そもそも、公式の改定記事の冒頭にこのような記載があります。
ネットワークエンジニアとソフトウェアプログラマの可能性を引き出す、新しいラーニングポートフォリオであなたのキャリアを強化してください。
引用:https://www.cisco.com/c/ja_jp/training-events/training-certifications/take-learning-to-next-level.html
つまり、プログラミング能力は今後必須となっていくと考えたほうがいいでしょう。
また、今回の改訂により、自動化・プログラミングの知識を身につけた技術者は大幅に増えていくことになると思います。そうなれば、自動化・プログラミングのスキルが求められる業務も、当然増加することが想定されます。そういった今後の業界の変化も考えて、「シスコ技術者認定」に限らず、自己研鑽を積んでいければと思います。
シスコ技術者認定を受験するなら、お早めに
最後に念のため。「シスコ技術者認定試験」を受験するのであれば、改訂前をおすすめします。
もちろん、改訂後の内容を学習して合格できれば、より最先端の内容を学び取ることはできますが、改訂直後には、それを大きく超えるデメリットが以下のように想定されます。
- 試験内容が分かりにくいため、対策をたてにくい
- 対策を立てにくいので、合格率も下がる
- 総合的に見て、受験料が高くなる可能性がある
- 「CCNP Enterprise」については、英語での受験になる可能性もある(CCIEの代わりですし、現在日本語が用意されてない)
シスコ技術者認定の受験を考えている人であればわかると思いますが、受験料は非常に高額です。もしも受験料が上がり、その上試験に落ちた場合は、5万円や10万円の損失が発生してもおかしくはありません。
また、試験制度の変化直後については、会社側も報奨金などの設定が難しくなり、結果的に報奨金が安くなったり、一時的に廃止される可能性もあります。ですので、取得を考えているのであれば、2月24日の改定前には、試験に合格しておくことを強くおすすめします。
ちなみに、改定前に取得した資格については「CCNA」「CCNP」「CCIE」については、それぞれ新たに改訂されたあとの認定が付与されますが「CCENT」のみ保有している場合は改定後の認定の付与はありません。「CCENT」を保有している人は、確実に改定までに「CCNA」を取得できるよう、学習をすすめるといいでしょう。
