仏教に関する検定試験(一般人向け)について調べてみた
この記事では、仏教に関する日本の検定試験・資格(一般人向け)について、主なものをまとめてみました。
- 仏閣巡りが趣味なので、仏教の基礎的な知識を身に着けてみたい
- 今まで勉強した仏教の知識を試してみたい
- 趣味・教養として、仏教について学んでみたい人
という方の参考にしていただければ幸いです。
試験に関する情報は、変更される可能性があります。実際に受験する際には、必ず公式の情報を確認するようお願いいたします。
日本における一般人向けの仏教の検定試験
ここでは、一般人向けの仏教の検定試験について、それぞれの特徴をまとめます(いわゆる、僧侶資格ではなく、知識の勉強で取れる資格です)。
簡単にインターネットで調査したところ、大きく分けて3種類の資格試験がありました。
一般社団法人 仏教協会の検定試験
試験の趣旨・目的
「どのような検定試験か?」公式サイトから引用します。
《仏教知識を身に付けることで人生が変わる》
仏教知識を身に付けることにより、人生が大きく変わる方がおられます。
たとえ僧侶にはならず在野で生活を続けるとしても、仏教に関する理解を深めることで、物事に動じず心穏やかに過ごせるようになる方は少なくありません。
辛いことがあったとき、高僧が乗り越えた苦しみや成し遂げた偉業、仏の尊い教えを思い出すことによって、力を得られて乗り切ることができるケースも多々あります。
仏教に関心のある方や人生を変えたい、より心穏やかに過ごしたい方には是非とも受けて頂きたい検定試験です。
要するに「仏教の考え方・精神性を学び、日々の生活に活かすことを目的とした一般人向けの試験」として行っているようです。
試験の種類
仏教協会の主催する仏教の資格は、種類が最多で難易度は最も高いことが推測されます(実際、仏教3級、密教3級を受験しましたが、他の検定の同じ級より難しく、危うかった)。
簡単にまとめると、以下の通りです。
資格名 | 備考 |
弘法大師検定4級 | 弘法大師 空海に係る知識 |
弘法大師検定3級 | 弘法大師 空海に係る知識 |
仏教4級 | 中学、高校程度の仏教知識 |
仏教3級 | 仏教の基本知識 |
仏教2級 | 仏教の基本知識 |
仏教1級 | 仏教の深い知識 |
密教3級 | 密教の基礎知識(仏教用語含む) |
密教2級 | 密教の知識(仏教用語含む) |
密教1級 | 密教の本質、用語、真言など |
密教法師 | 密教1級の上。記述式2問 |
密教大法師 | 密教法師の上。記述式1問 |
真言検定 | 真言知識について。難易度は高いらしい |
仏教カウンセラー | 仏教3・2級と密教3・2級に合格と小論文の合格で取得 |
『弘法大師検定』については、2021年に追加されたものと思います(5月頃に見たときはなかった)。また上記以外に2021年9月23日時点で「問題更新のため試験休止中」となっている区分が複数あります。更に、動物僧侶(ペット僧侶)もありますが、こちらは得度(出家)が必要な、本格的にお坊さんになるコースです。
試験の学習方法
この試験は、公式テキストはありません。理由は以下の通り。
仏教、真言密教等のテキストは作成しておりません。仏教のテキストは色々な文献からエキスを抽出し編纂者が まとめたものだからです。他人の推薦する書物があったとしても書店で必ず自分の目で確かめて良い本を選ぶことが仏教・密教の勉強の第一歩です。自力で良書を探す能力を養うことが勉強なのです。自灯明・法灯明、犀の角のように歩み、勉強しましょう。
とはいえ、初心者向けで参考書の一例は掲載されていました。
密教用はこちら。
ちょっと古いものが多いですが、知識は変わっていないはずなので、試験に必要なことは学べると思います(仏教4級についていえば、あまり向かない感じではありました。どちらかと言えば、日本史の仏教知識+αな感じ)。
完全な初心者であれば(たぶん、そういう人の方が多い)、先にもっと噛み砕いた最近の入門書を読んで見た方が知識の整理ができると思います。
出題傾向
明確な出題傾向は不明です。また、級によって出題傾向が変わるといった印象はあります。
例えば、仏教4級は「中学、高校程度の仏教知識」というだけあって、「有名な宗派について、有名なお坊さん(開祖など)と有名なお寺(本山など)」が問われるような「学校の歴史の授業でならったな」というような問題が多めです。もちろん、仏教の基礎知識のようなもの(理論より用語より)も出題されるため、そっちの勉強も必要です。
一方、仏教3級になると「仏教の基礎用語」と「仏教の基礎理論(といっても、実質用語での解答がほとんど)」が中心となってきますので、仏教の勉強をしっかり行わないと合格はできません。
受験料について
基本的に1科目3,000円です(仏教カウンセラーは他の資格が含まれることもあり、20,000円)
他の団体の試験もそうですが、「就職では使えない趣味の資格」と思った方が良いですので、いわゆる「コスパが良い資格」とは言えません。
ただ、他の仏教系の試験に比べれば、料金は安くできていることは確かです。
試験の方式について
試験については、基本的に「メールで送られてきた問題に解答して、採点してもらう」というもの。
基本的には、全問記述式(ひらがな可)となっています(論文形式の試験もある)。1問に複数の記載が必要になるような問題(十種類あるものを、全部答えさせるなど)もありますので、そういった意味でも難易度が高い出題形式となります(部分点の有無については不明です)。
単に合格するだけであれば、徹底的に答えを調べてしまえば、素人でも合格できるとは思います(カンニング可能なので)。
とはいえ「参考書を見ながらの解答では、日頃の勉強の成果を知ることができません」と、公式で調べながらの解答は推奨していないので、やはり勉強して身に着けた知識で解答しておきたいところです。
一般社団法人 仏教検定協会の「仏教検定」
試験の種類
試験の種類は、以下の通りです。
資格名 | 備考 |
般若心経コース | 般若心経に関する内容 |
仏教検定5級 | 『遺教経』『法句経』『シンガーラ経誡経』に関する内容 |
仏教検定4級 | 『往生要集』に関する内容 |
仏教検定3級 | ブッダの生涯と教えに関する内容 |
仏教検定2級 | ブッダの生涯、仏教の伝播、日本の仏教史に関する内容 |
仏教検定1級 | 浄土宗系・禅宗系・密教系の3コース |
仏教検定1級については、準備中となっています。
試験の学習方法
どれも『公式のテキストを購入してから、受験する』という方式になります。
公式テキストを購入していることが、受験資格になっていることになるため(IDに購入履歴が紐づく)、公式テキストが必須となります。公式テキストについては『般若心経コース』と『仏教検定5級』は無料です(何気に、この二つのテキストが無料の割りに内容濃いです)。
仏教検定3級までの内容は、公式テキストを一読すればほぼ合格可能です。仏教検定5級に至っては、読まなくても「道徳的だと思うもの」を選んでいけば、だいたい正解できる内容です。仏教検定2級まで来ると、流石に内容が多くなりますが、全て選択式なのでそれほど難易度は高くありません。
出題傾向
全ての級で出題内容が異なるため、全体を通した出題傾向はありません(3級の範囲は2級の範囲に含まれる感じです)。
細かな傾向で言えば、どちらかと言えば歴史や思想的な要素が多く、現代社会の中で関わりやすい仏教の行事(冠婚蔬菜など)については、出題がほとんどない印象でした。
基本的にはテキストを読んでおけば十分合格可能な内容が出題されます。
受験料について
内容 | 料金 |
仏教検定4級テキスト | 3,300円 |
仏教検定4級受験料 | 1,800円 |
仏教検定3級テキスト | 4,400円 |
仏教検定3級受験料 | 2,100円 |
仏教検定2級テキスト | 5,500円 |
仏教検定2級受験料 | 2,400円 |
受験にはテキストを購入することが必須であるため、受験料は実質的にテキスト代を含めた料金となります(4級なら、実質5,200円)。
また、飛び級ができないため、2級を受験するためには、4級からの料金全てが必要になります。
試験の方式について
ネットでどこでも受験でき、全て選択式になります(準備中の仏教検定1級は不明)。ネットでどこでも受験できるため、カンニングし放題ではありますが、推奨はされていません。
また、飛び級はできないため、2級を受験するには5級から始める必要があります。
一般社団法人 日本仏教協会の「日本仏教検定(通称『仏検』)」
試験の種類
試験の種類は以下の通りです。
資格名 | 備考 |
日本仏教検定3級 | 仏教の基礎や葬式仏教の基礎が中心 |
日本仏教検定2級 | 3級よりも各宗派について掘り下げられている |
日本仏教検定1級 | レポート形式 |
仏教葬儀アドバイザー | 有資格者が1名以上在籍の葬祭業者(営業所ごと)を優良葬儀社認定 |
試験の学習方法
日本仏教検定1~3級については、問題文の内容を学習しながら、解答用紙を埋める形式になります。
仏教葬儀アドバイザーについても同様で、学習しながら解答する形ですが、問題用紙と一緒に参考図書のリストも送付されてきます。
出題傾向
出題内容は幅広く、仏教の理論・哲学、歴史的な知識、葬儀や仏教の豆知識(有名人の戒名など)まで問われることがあります。
受験料について
資格名 | 料金 |
日本仏教検定3級 | 3,000円 |
日本仏教検定2級 | 5,000円 |
日本仏教検定1級 | 8,000円 |
仏教葬儀アドバイザー | 12,000円 |
「仏教検定」よりは安く受験できますが、一方で教材なしでの受験料になるため、「どちらの方がコスパが良いか?」となると、微妙なところです。
試験の方式について
試験に申し込むと、2週間程度で問題用紙と解答用紙が送付されてきます。この問題用紙を読み、解答用紙を埋めていく方式になります。
解答の際は、インターネットや参考書は自由に使っていいことになっているため、まず不合格になることはありません。
ただし、解答して返送するまでには期限があるため、あまり長く放置しないようにしましょう。
仏教1級については、レポート形式になります。
各試験の難易度の違い
全ての試験を受験したわけではありませんが、私が受験した日本仏教協会の「仏検2・3級」、仏教協会の「仏教3・4級」「密教3級」、仏教検定協会の「仏教検定2~5級」で出題される問題の難易度については、体感で以下のようになりました。
- 仏教協会の「密教3級」
- 仏教協会の「仏教3級」
- 日本仏教協会の「仏検2級」
- 日本仏教協会の「仏検3級」
- 仏教検定協会の「仏教検定2級」
- 仏教協会の「仏教4級」
- 仏教検定協会の「仏教検定3級」
- 仏教検定協会の「仏教検定4級」
- 仏教検定協会の「仏教検定5級」
「仏教検定2級」「仏検3級」については、仏教知識の内容としては「仏教検定2級」の方が難しいと感じましたが、漢字で筆記が必要な分だけ「仏検3級」の方が上にしておきました。
ただ、上記はあくまでも出題される問題の難易度です。日本仏教協会の「仏検」については「調べながら解く」という形式である為、実際には事前の試験勉強は不要な「仏検定」が、合格だけなら最も簡単と言えます。
検定についての個人的な感想
正直に言えば「どれも今一つ欠けるものがある」といった感じです。
形が立派ならそれで良いというわけではありませんが、類似の資格で言えば「神社検定」くらいに力を入れた検定があったら嬉しかったところです。
組織としても情報が少なく、いったい何をやっている組織なのかわかりませんし、これでは「ただの利益目的では?」と思われても仕方がないかなという印象を受けます。
ホームページもあまり更新頻度が多くないので「果たして今後も継続できるのか?」「作成予定・休止中の試験は果たして実施されるのか?」と、心配になってしまいます(このブログも他人事じゃないですが…)。
個人的には
- カンニング不可の試験を作り、全国で点数を競う(総合、一般、お坊さん、年齢などで順位を付けてみる)
- 定期的な講演会や修行体験会を開く(座禅と写経はよくありますが、護摩行とか、お坊さんの日常とか、あまり体験できないので)
- 仏教関係で合格者に割引ができるようにする(これは協力してくれるお寺を見つけるのが難しいか?)
など、があったらもう少し盛り上がるかなあと思います(特に点数を競うのとか、趣味の試験向けな気がします)。
本当に仏教の精神性を身に着けるのなら?
今回紹介した検定については、「文化を守る」とか「歴史の知識を深める」という面では意義深いものです。
ただ、仏教の精神性を身に付けるには、座学だけでは難しく、むしろ座学では学べないことがほとんどかなと思います。
例えばお寺での作法も知るには、検定の知識だけでは全く足りず、結局は「実際に足を運んで、体験してみる」ことが必要です。それに当然、お寺によっての違いもありますし、1日で身に付くものでもありません。
また、仏教的な哲学については、知っただけではほとんど意味がありません。例えば十善戒であれば「与えられていないものを自分のものとしない(不偸盗)」「乱暴な言葉を使わない(不悪口)」「激しい怒りをいだかない(不瞋恚)」と、色々なものがあります。知るだけなら一瞬であっても、それを本当に身に付け、社会の中で役立てる域に達するには、一生あっても足りないかもしれません(この辺は、あらゆる学問で共通の課題ですが)。
私は歴史や文化について「知る」ことも好きですが、仏教に関心を持った切っ掛けは「哲学・思考」を身に付ける方なので、検定試験にかかわらず、精神面での勉強を深めていきたいと思います。
私が仏教に興味を持ったわけ
最後に、私が仏教に興味を持った理由。
ビジネススキルを幅広く学ぶ目的で「グロービス学び放題」というサービスを利用し始め、その中で、偶然に塩沼亮潤さんの動画を観ました。
タイトルは『大阿闍梨 塩沼亮潤が死の手前で見つけた「生き方」』。ちなみにですが、この動画はYouTubeでも公開されているため、無料で見られます。
タイトルを見た時点の自分の本心を、失礼を承知で言わせてもらえば…
ハッ!坊さんがキツイ修行をして何がわかる!
実践で磨いた起業家の方が上よ!
というなめくさった態度でした。
そんなわけで「偶然でも学ぶべきところがあれば儲けもの。まあ、通勤時間の休憩にならいいか」といった程度で垂れ流してみたのですが…
大当たりでした。
煙たいだけの道徳心の話かと思っていたら、むしろ並の起業家の講演よりも、真に迫るものがある実践的な話でした。
内容はシンプルで、それでいて実践が難しい普段の日常生活も含めた修行。そして、その実践が確かな成長につながると実感させられるもの。
ある意味で自分の意見と一致して「修行をやったから悟れるわけではない」というお話をする方であり、今でも日々修行として生きる、まさに実践で磨かれた起業家でした(事実、修行後は地元に帰りゼロから苦労してスタートしている)。
動画を見終わる頃には「これ、下手にビジネス書を1000冊読み漁るよりも、よっぽど価値があるな」と、意見が逆転していました。
そして、気づいたら
- 何度もこの動画を繰り返す
- 気づいたら他の動画にも手を出す
- 書籍も購入する
- 毎週欠かさず「塩沼亮潤 大阿闍梨のstep by step」を拝聴する
- 気づいたら近所の清掃活動を始める(掃除しながら、度々音声を聴く)
と、ブレーキの壊れたブルドーザーのような勢いで、興味を持つようになりました(たぶん、人生でこれほど興味を持った人は、他に1人しかいません)。
こうして気づけば、私は仏教の文化・歴史にも興味を持つようになりました。
ですが、実を言うと塩沼さんは仏教についての解説はあまり行いません。
「仏教では…」と解説が入ることはありますが、自分で実践し、体感していく中で「ああ、こういうことか」と感じた事、腑に落ちたことを、メッセージとして発信しています。「お寺で覚えた事ではなく、家庭で覚えた事」と言うこともありますし(実家は仏教と関係はない)、「仏教の難しい教義はお坊さんに任せて、一般の人は生活を少しでもプラスにできる考え方を学べれば、それでいい」と考えているような感じです。
とはいえ、「尊敬できる人」が、どのようなことを学び、どのような体験をしてきたのか。その背景を知ることは、自分にも何かプラスになるのではないかと思い、仏教を学びたいと思いました(全くといっていい程、仏教を知らなかったことも理由)。
最初は「仏教の考え方を学び、より良く生きるコツを掴む」というのが目的ではありましたが、いつの間にか「だったらより深く、仏教の歴史や文化も含めて勉強するべきでは?」となり「じゃあ、資格取るか」といういつもの流れです。
長くなりましたが、こうして私は「仏教の資格を調査しよう!」と思い、この記事を書いた次第です。
仏教系の資格の合格体験記
一部ですが、仏教系の資格を実際に受験してみました。その際の合格体験記をまとめてみましたので、興味がある方の参考にしていただければ幸いです。