【体験記】仏教協会の『仏教3・4級』『密教3級』に合格した際の勉強時間・勉強方法・教材について
だいぶ前ですが、2021年5月9日に仏教協会の仏教4級に合格し、2021年6月2日に仏教3級と密教3級に合格しました。
この記事では、仏教協会が主催している仏教関係の検定試験について、以下の内容を中心にまとめたいと思います。
- 『仏教3・4級』『密教3級』合格までの勉強時間
- 『仏教3・4級』『密教3級』で使った参考書と勉強方法
- 『仏教3・4級』『密教3級』の試験の概要と特徴(出題傾向)
『仏教3・4級』『密教3級』合格体験記のまとめ
- 仏教関係の資格(一般向け)では、仏教協会の検定試験が一番難しかった
- 明確なテキスト・問題集がないため、勉強すること自体が難しい(3~4級レベルなら市販の書籍で対応可能)
- 試験はカンニングし放題。ただ、社会的価値を考えると、カンニングすることに意味がない
- 一応、勉強にかかった時間は32時間18分
受験前のスペック
簡単に受験前のスペックをまとめると、以下の通りです。
- 2021年1月、グロービスの動画で塩沼亮潤さんを知り、仏教に興味を持つ
- 4月18日、ネットワークスペシャリスト試験が終わってから、般若心経を覚える
- 4月28日、仏教検定協会の「仏教検定5級」に合格
- 5月4日、仏教検定協会の「仏教検定4級」に合格
- 5月6日、仏教検定協会の「仏教検定3級」に合格
- 5月6日、仏教検定協会の「仏教検定2級」の勉強を開始(未受験)
一言でまとめると「2021年まで、仏教の事はほぼ知らなかったけど、直前で類似する試験に合格している」といったところ。
ちなみに、「仏教検定協会」の試験は、公式テキストを一読すれば簡単に合格できる試験。「日本仏教協会」の試験は、そもそも調べて学びながら解くという試験なので、勉強不要(試験自体が勉強)という内容でした。
『仏教3・4級』『密教3級』合格までの勉強時間
まず「正確な勉強時間を割り出すことは困難」です(自分の記録の仕方が悪かった影響もありますが……)。
その上で、週ごとの勉強時間は、以下のようになりました(Studyplusで計測。週毎の表示になります)。
『仏教4級』に合格した5月6日時点では、11時間53分となりました。
また、『仏教3級』『密教3級』を受験した6月2日までを含む勉強時間は、以下のようになります(Studyplusで計測。週毎の表示になります)。
『仏教3級』『密教3級』を受験した6月2日までの勉強時間は32時間18分になりました。
ただし、この時間については、以下の問題があります。
- 塩沼さんの動画やラジオで仏教の知識を学んだ時間は含めていない(この知識で解けた問題もある)
- 教材ごとの勉強時間を明確に分けていなかった(当時は『調べもの(仏教)』)に他の資格やネットの調査をまとめていた
- その他の「歴史・文化」の勉強で偶然拾った知識もある(中学歴史の知識は『仏教4級』には有効)
その為、仏教初心者の人が私と同じ32時間18分の勉強をしても、合格できるとは限らないかと思います。
とくに『仏教3級』と『密教3級』は、「知らなければ解けない」問題が多く、「1問に対して10種類前後の単語を記述する必要がある」という問題もあるため、注意が必要です。
『仏教3・4級』で実際に利用した教材
仏教検定協会の仏教検定2~5級教材
こちらは他の団体が主催している「仏教検定」の教材です。2021年4月から6月にかけて、3~5級のテキストについては全て一読しました。
ちなみに、3~5級の試験自体は「テキストを一読すれば合格できるレベル」なので、一読しか実施していません。
一方、2級については、内容が濃いため、受験までに一読は完了しませんでした。
ちなみに、各級のテキストの内容は、おおむね以下のようになっています。
明解 仏教入門
「一般人は知らない、仏教の基本用語・基本概念」について、とても分かりやすくまとめている書籍です。ちなみに、仏教協会でも仏教入門の参考書の一例として挙げられています。実際、仏教3級には有効なテキストでした(4級には向きません)。
他の試験などでも仏教の基本用語・概念の学習はできましたが、正直この書籍で学んだ知識が無ければ、仏教3級の合格は難しかったと思います。
ただ、ボリュームが多く、完全な初心者が用語全体を暗記するのは現実的ではありません。可能であれば、他の参考書・試験などで学習した上で「前にも見たことがある」という知識を確実に覚えつつ、その周辺知識を徐々に深める形で取り組む事をオススメします。
WEB版新纂浄土宗大辞典
不明な仏教用語があった時に毎回のように利用していました。
不明な用語の解説に、また不明な用語が出てきたりしますが、かなり細かくリンクが張られているため、どんどん辿りながら勉強できます。
Wikipediaも利用しましたが、Wikipediaよりも端的にまとめられているため、基礎学習の段階では効率がいいと思います。
日本仏教協会の日本仏教検定3級
一応学習した教材に含めておきますが、ほとんど活用できなかったのが日本仏教協会の仏教3級です。
役に立たなかった理由は「日本仏教協会の日本仏教検定3級を勉強したのが、仏教協会の仏教4級の後だったから」。日本仏教協会の日本仏教検定3級の知識では、正直、仏教協会の仏教3級には歯が立ちません。
ただ、日本仏教協会の日本仏教検定3級は、仏教協会の仏教4級にはけっこう有効な内容です。学習順を逆にしておけば、けっこう有意義に利用できたと思います。
『密教3級』で実際に利用した教材
図説 密教入門
密教の基本用語・概念を学習する際に利用しました。入門となっていますが、初心者にはかなりボリュームが多めです。
また、私の場合「基礎知識を吸収する」ことに集中したため「密教の修行」や「密教の儀式とご真言」については読み流す程度にし、「根本経典と曼荼羅」と「歴史と教え」を中心に暗記するようにしていました。この方針がかなり試験と相性がよく、結果的に短時間での合格に結びついたと思います。
『仏教3・4級』『密教3級』の勉強方法
【4月以前】塩沼さんの動画やラジオで学習
勉強時間に含まれていませんが、2021年に入ってから、YouTubeの塩沼さんの動画やラジオで学習していました(ついでに、気になったところをネットで調査)。
といっても、塩沼さんはあまり仏教の知識を直接は語らず、一般の人にもわかりやすい内容で語りますので、この段階での仏教の知識はそれほど多くは吸収できていませんでした。
この段階で知っていた知識と言えば、だいたい以下のような内容でした。
この時点で知った用語は少ないですが、実はこれらの用語のリンクを辿っていくだけでも、かなりの基礎知識が吸収できます(ちなみに、真言は試験には効果ありませんでした)。
【仏教4級】仏教検定協会の「仏教検定」と、日本史の知識
4月に入ってからは、仏教検定協会の「仏教検定」と日本史を中心とした仏教の再確認を行いました。
仏教協会の仏教4級は『中学、高校程度の既存の仏教知識で合格できると思います』と記載がありますが、所謂「日本史の知識」で対応できる問題だけでは、合格は難しいです。そのあたりは、仏教検定協会の「仏教検定3級」レベルが役立ちました。
これに加えて、「日本の仏教の歴史」や「有名寺院」に関する問題を中心に学習を行いました。日本史の仏教関係で出題されそうな「○○宗の開祖は~」とか「○○宗の総本山は~」といったものです。実際、この手の問題だけで、6割くらいな感じでした。
【仏教3級】類似試験と『明解 仏教入門』で学習
仏教3級については『仏教の一般的、基礎的な知識を問います』との事でしたので、今回は『仏教の歴史(とくに日本の)』よりも『仏教の基本用語・概念』を中心に学習しました。
学習前の段階で知っていた塩沼さんの動画で覚えた「四苦八苦」「懺悔偈」「六波羅蜜」も、仏教の基礎的な用語として試験に役立ったため、自分には有利な試験だったと思います。
ただ、問われる知識のほとんどは学校や私生活では習わないので、仏教の基礎知識の学習は確実に行いましょう。自分の場合、学校の知識や漫画などで覚えた知識だけで解けた問題は、全体の1割程度だったと思います。
ちなみに、「仏教の基礎知識」として、「基本的な密教の知識」も登場します。
【要暗記】複数回答が必要な「数字系の仏教用語」について
4級までは「1問に1用語」という問われ方をしていましたが、3級では「1問に複数用語」の回答が必要な問題が多数登場します。
というのも、仏教の基本的な用語には「三○」「四○」「六○」「十○」といった用語が多く、その詳細を覚えているかが問われるからです。
念のため、基本的な用語についてまとめてみると、以下のようになります。
- 三毒:貪・瞋・癡の三種類。懺悔偈にも出てきます。
- 三界:欲界、色界、無色界の三種類。
- 三悪趣(三悪道):地獄・餓鬼・畜生の3つ。修羅道を悪趣に含めて四悪趣(四悪道、四趣)とする場合もある。
- 三道:「惑・業・苦」を合わせたもの(三悪道の省略形の事もある)。「惑・業・苦」は、苦の発生する構造を現す。
- 三学:戒学、定学、慧学。基本的な修行項目。
- 三密:一般仏教における三業に対応する密教用語。コロナ対策ではない。
- 三業:身業・口業・意業の3つ。業を分類したもの。懺悔偈にも出てきます。
- 三蔵:経蔵・律蔵・論蔵の3つ。三蔵に精通した僧侶を「三蔵法師」と呼ぶ。
- 三宝:仏・法・僧の3つ。聖徳太子の十七条憲法の「篤く三宝を敬え。三宝とは仏と法と僧となり」の三宝です。
- 五蘊:受蘊・想蘊・行蘊・色蘊・識蘊の5つ。般若心経でも出てきます。
- 四諦:苦諦・集諦・滅諦・道諦の4つ。仏教における基本的な4つの心理。
- 四弘誓願:衆生無辺誓願度、煩悩無量誓願断、法門無尽誓願智、仏道無上誓願成の4つ。菩薩が仏道を求めるとき、最初に立てる四つの誓願。
- 六道:天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道の6つ。衆生が輪廻転生する6つの世界。
- 六根:眼・耳・鼻・舌・身・意の6種。主観の側の六種の器官。般若心境でも出てきます。「どっこいしょ」の語源の「六根清浄」の「六根」です。
- 六波羅蜜:布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧の6種。大乗仏教で悟りに至るための6つの修行。
- 八正道:正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定。涅槃に至るための8つの実践徳目。
- 十善戒:不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不綺語、不悪口、不両舌、不慳貪、不瞋恚、不邪見。仏教におけるやってはいけない十種類の項目。三業に対応しています。『不悪口(ふあっく)』は有名ですね。私は高尾山に飾ってあったおかげで覚えました。天台宗系では十重禁戒があります。
- 十波羅蜜:六波羅蜜に方便・願・力・智の四波羅蜜を加えたもの(書籍では六波羅蜜の方がよく見かけます)。
かなり多いですが、3級で確実に合格することを考えると、これを全部記述式で解答できるレベルが欲しいところです。
【密教3級】『図説 密教入門』と『仏教3級』までで覚えた知識を利用
個人的には『仏教3級』よりも難しかったのが『密教3級』です。
公式で『密教の基本用語(仏教用語を含む)と密教の基礎知識を問う試験です』となっており、仏教用語も問われます(サービス問題な感じでしたが)。ちなみに、密教の知識については、後でインターネットで調べても、結局よくわからなかった問題も含まれていました。流石、密教です。
学習は、以下の様に行いました。
- 仏教用語の問題:『仏教3級』までの勉強
- 密教用語の問題:『図説 密教入門』とインターネット
密教用語については、『図説 密教入門』の『第1章 密教の根本経典と曼荼羅』と『第3章 密教の歴史と教え』については、用語を暗記(とくに、各章の最初の方は重要な概念だと思ったので、重点的に対応)。これが結果として奏功し、上手く合格点に繋がりました。
ちなみに、最初から知っていた密教知識は、三密くらいでした。
実際に受験した『仏教3・4級』『密教3級』について
問題を公表することはできませんが、大雑把に試験の方式と出題傾向について、自分が確認したもの(2021年5~6月頃)をまとめます。
『仏教3・4級』『密教3級』の受験費用について
1科目あたり、全て3,000円となります。記事を執筆している時点では、仏教1級や、密教1級、更に上の「密教大法師」も、同じく3,000円です。この価格設定は、日本仏教協会と仏教検定協会の試験に比べて、価格はかなり安いです。
というのも、他の試験に比べて試験が簡易的で、メールのやり取りだけで完結します(一応、合格証書は届きます)。どの試験も、就職活動などでは役に立たない趣味の試験なので、こういった「安いことに特化して、実力試しできる方式」というのもアリかなと感じました。
仏教4級の内容
メールに問題用紙のwordファイルが添付されて送られてくるので、これに解答を記入してメールで返信します。
つまり、極論すると「制限時間なし、カンニングし放題」です。が、そもそも一般社会では価値のない資格です。「反則してまで合格する必要があるか?」といえば、無いです。
試験の概要をまとめると、以下のようになります。
- 出題形式:記述式で問題数20問(ひらがな解答可)
- 合格点:60点以上
- 試験時間:60分
- 内容:主に中学、高校程度の既存の仏教知識
「中学、高校程度の既存の仏教知識」というだけあり、「○○宗の開祖は?」「○○宗の本山は?」といった知識があれば正解できる問題が多めです。
ただ、完全に「中学、高校で習う仏教知識」ではなく、「高校生までには、調べたことがありそうな仏教知識」も結構混ざってますので、所謂「日本史の知識」だけでは、全問正解してもギリギリで合格が難しいと思います。
ただ、「1問で複数の用語が問われる」という問題は私の受験では無く、むしろ実質2択問題も複数あったので、「記述式としては楽」な出題形式です。
仏教3級の内容
こちらも「メールに問題用紙のwordファイルが添付されて送られてくるので、これに解答を記入してメールで返信」する形式。
試験の概要をまとめると、以下のようになります。
- 出題形式:記述式で問題数20問(ひらがな解答可)
- 合格点:60点以上
- 試験時間:60分
- 内容:仏教の基本知識
私が解いた際は「仏教の歴史」というよりも「仏教の基本的な考え方(の用語)」が問われる試験でした。全く日本史の知識が役立たないわけではありませんが、私の受験で役立った日本史の知識は1問のみです。
2択問題は無くなり、むしろ「十○○という用語の、十種類を全て答えなさい」といった、複数回答が必要な問題が多数を占めます。先にまとめておいた「数字系の仏教用語」については、記述できるレベルで暗記しておく必要があります。
密教3級の内容
同じく「メールに問題用紙のwordファイルが添付されて送られてくるので、これに解答を記入してメールで返信」する形式。
試験の概要をまとめると、以下のようになります。
- 出題形式:記述式で問題数20問(ひらがな解答可)
- 合格点:60点以上
- 試験時間:60分
- 内容:密教の基本用語(仏教用語を含む)と密教の基礎知識を問う試験
仏教用語については「仏教検定3級」の対策をしていれば、ほぼOKです。
密教用語については、私が解いた際は「歴史的な事柄」「修行の実践方法」「真言」などは出題されず、傾向としては「密教における重要な仏尊の名前」が主に問われる試験でした。例えば五大明王とその三輪身のように、重要な仏尊の名前は積極的に覚えるようにしました。
また、「三輪身」「五大明王」「五相成身観」「金剛界曼荼羅の九会」のように、やはり「数のつく用語」は、問われる可能性が高い為、度々見かける「数のつく用語」については、できるだけ覚えておくといいでしょう。
ただ、仏教検定3級以上にマイナーな知識が問われるような印象はありました。正直「全く見た覚えのない知識」「調べてもわからないような知識」も出てきたので、丸暗記をしていなければかなり厳しかったと思います。
そもそも「仏教協会の検定試験」とは?
仏教協会に関する検定試験については、以下の記事にまとめてあります。他の仏教に関する検定試験も掲載していますので、興味がある方は参考にしていただければ幸いです。